出生率回復の条件に関する人口学的研究

文献情報

文献番号
200400121A
報告書区分
総括
研究課題名
出生率回復の条件に関する人口学的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
河野 稠果(麗澤大学大学院国際経済研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 速水 融(麗澤大学大学院国際経済研究科)
  • 黒須 里美(麗澤大学外国語学部)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は二つの視点から出生率の回復の条件を明らかにしようとする。第1は歴史的視点に立って、1930年代の欧米諸国における人口置き換え水準以下の低出生率からの回復の経験を学ぶことであり、第2は人口統計学的分析方法・モデルを用いて出生力変動のメカニズム・要因を明らかにし、出生率回復の条件を探ろうとするものである。
研究方法
A.歴史的研究
欧米諸国の出生動向と要因に関する研究方法は、文献と統計に基づく分析である。今回は、デンマーク、ベルギー、オランダ、ドイツ、スイス、イギリス、アメリカの20世紀中葉の出生変動を社会経済的背景と関連して分析した。
B.現代日本の出生力計量分析
一つは、これまで蓄積した結婚・出生データを整理し、人口構造的要因・行動的要因と出生率との関係を定量化し、再編成するアプローチである。もう一つは出生過程のコーホート効果を明らかにするアプローチである。
結果と考察
1.北・西ヨーロッパにおける1940、50年代の出生率回復は、結婚コーホートの完結出生力が変化したのではなく、経済不況および戦争によって延期された結婚・出産のキャッチアップによるところが大きい。
2.人口家族政策の効果は一般に正の方向に働くが小さい。結婚・出産のタイミングを促進する効果はあっても、完結出生児数を増加させる効果はほとんど認められなかった。
3.ドイツ語圏のドイツ、スイス、オーストリアで特徴的なことは、近年理想子ども数が人口置き換え水準をかなり下回っていることであり、ほかのヨーロッパ諸国がこれに近づくかどうかは今後注目に値する。
4.出生コーホートの規模が彼らの出産行動経験に影響を及ぼすような、コーホート効果は認められなかったが、夫婦の結婚年齢に対しては軽微ながら計測された。
5.1970年代から始まった日本の少子化過程には、ダイナミックな要因の交代がみられる。少子化過程の前半では年齢構造変化の影響が大きく、中盤では結婚の変化による配偶関係別構造変化の要因が圧倒的であった。しかし80年代の終りから、意図的な非婚化、夫婦の出生行動変化が加わってきて、新しい局面に入った。
結論
ヨーロッパの経験を踏まえて、日本の場合調整(コーホート)出生率は期間出生率より幾分高いので、政策によってその分だけ出生率の回復を実現することは、理論的に可能であろう。しかし、現在の人口学的状況では、それ以上の置き換え水準まで回復させることは至難の業である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-09
更新日
-