文献情報
文献番号
200201253A
報告書区分
総括
研究課題名
電子カルテの相互運用に向けたHL7メッセージの開発および管理・流通手法に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 憲広(神戸大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 大江和彦(東京大学医学部附属病院)
- 木村通男(浜松医科大学医学部附属病院)
- 山本隆一(東京大学大学院)
- 小塚和人(昭和大学横浜市北部病院)
- 美代賢吾(神戸大学医学部附属病院)
- 増田剛(財団法人先端医療振興財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、多くの医療施設で電子カルテシステムの実運用が開始されようとしている。これらの電子カルテシステムの多くは、独自のデータフォーマットあるいはコード体系を用いており、異なるシステム間での相互運用性はほとんどない。これは、電子カルテ情報を交換するための標準的な記述形式が整備されていないからである。この問題を解決するために、厚生労働省「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」の「電子的情報交換のための用語・コード・様式の標準化」では、情報交換規約として「HL7 ver2.4以降およびver3.0(XML形式)」を用いることを推奨している。HL7は米国ANSIの規格であり、ISOでも採用の方向にあり、かつ日本を含め世界各国で最も広く用いられている医療情報交換規約である。しかしながら、HL7においても、国内の電子カルテシステムの情報交換に必要な全てのデータフォーマット(メッセージ)が定義されているわけではない。
本研究の目的は、標準的な医療情報交換形式をHL7で定義し、それらをデータベース化し、そのレポジトリを公開し、標準HL7メッセージを流通させることによって、異なるベンダーの電子カルテシステムが、医療情報を安全・確実に共有・交換できる相互運用性を担保することにある。
本研究の目的は、標準的な医療情報交換形式をHL7で定義し、それらをデータベース化し、そのレポジトリを公開し、標準HL7メッセージを流通させることによって、異なるベンダーの電子カルテシステムが、医療情報を安全・確実に共有・交換できる相互運用性を担保することにある。
研究方法
上記の研究目的を達成するため、1)すでにHL7で定義されているメッセージの体系化、2)国内の医療施設やシステムベンダーがHL7定義を独自に拡張して利用しているメッセージの収集および体系化、3)電子カルテシステムに必要なメッセージの開発、4)診療報酬請求に必要なメッセージの開発、5)EBMを支援するメッセージの研究開発、6)収集、開発したメッセージの管理・流通システムの開発、を行う。
1)では既に米国HL7で定義されているメッセージのカタログ化および日本語での解説と、国内で使用する場合の問題点の整理とガイドラインの開発を行う。2)では国内でローカルに定義され使用されているメッセージ(“方言")を洗い出し、正式なHL7メッセージとの整合を図る。対応する正式なHL7メッセージが存在しない場合は、国内標準メッセージとして登録、整備する。3)ではこれまでHL7バージョン2.xでの記述が困難であったため、独自の方式で記述されている電子カルテデータについて、HL7バージョン3でのメッセージを定義し、標準メッセージとして開発する。4)では、同様に、HL7バージョン2.xでは記述が困難であった、診療報酬請求に必要な情報を、バージョン3で新たに記述、定義する。5)では、EBMを電子カルテが支援するために必要となる、医学知識、判断やクリニカルガイドラインを記述できるHL7バージョン3メッセージを開発する。6)では、本研究で収集、開発したメッセージを一元的に管理し、様々なシステム開発で有効に利用できるように、インターネットを活用したメッセージの管理・流通システムを開発する。
1)では既に米国HL7で定義されているメッセージのカタログ化および日本語での解説と、国内で使用する場合の問題点の整理とガイドラインの開発を行う。2)では国内でローカルに定義され使用されているメッセージ(“方言")を洗い出し、正式なHL7メッセージとの整合を図る。対応する正式なHL7メッセージが存在しない場合は、国内標準メッセージとして登録、整備する。3)ではこれまでHL7バージョン2.xでの記述が困難であったため、独自の方式で記述されている電子カルテデータについて、HL7バージョン3でのメッセージを定義し、標準メッセージとして開発する。4)では、同様に、HL7バージョン2.xでは記述が困難であった、診療報酬請求に必要な情報を、バージョン3で新たに記述、定義する。5)では、EBMを電子カルテが支援するために必要となる、医学知識、判断やクリニカルガイドラインを記述できるHL7バージョン3メッセージを開発する。6)では、本研究で収集、開発したメッセージを一元的に管理し、様々なシステム開発で有効に利用できるように、インターネットを活用したメッセージの管理・流通システムを開発する。
結果と考察
本年度は6つの研究課題のうち、課題1および課題2について研究を行った。課題1では、先ずは現在国内で利用されているHL7バージョン2.4の日本語化仕様書について詳細に調査を行い、その中で多数の箇所に誤訳があるのを発見し、その修正を行った。さらに、国内の大学病院からHL7メッセージを収集し、その内容について分析し、メッセージの設計、実装に誤りがあることを発見し、その修正を行った。また、HL7で既に定義されているメッセージの体系化の一環として、既存HL7メッセージのより高度な検索について検討を行った。具体的には、電子カルテシステム開発における要求分析結果や、データ交換において交換されるデータの内容に基づき、それらの要求を満たす既存のHL7メッセージを検索し提示するための仕組みとして、CMETと呼ばれる複数のHL7メッセージ中で共有されるメッセージの共通部分に着目し、「電子保存された診療録情報の交換のためのデータ項目セット(J-MIX)」とCMETを対応付けてHL7メッセージを検索するための仕組みを考案しプロトタイプシステムを試作した。しかし、CMETだけでは適切なメッセージを検索するには不十分であり、用語やコードといったさらなる関連情報の利用が必要であると考察した。
課題2では、国内の医療施設やシステムベンダーがHL7定義を独自に拡張して利用しているメッセージの収集を、神戸大学医学部附属病院を対象として行った。
さらに、電子カルテシステムにおいて臨床情報とともに遺伝子情報を扱うことができる、HL7バージョン3メッセージの開発を目指し、糖尿病疾患原因遺伝子解析をユースケースとして遺伝子多型情報を収集するためのメッセージを試作した。本メッセージは、神戸市にある臨床研究情報センターの遺伝子情報登録・解析システムにおいて実際に活用される予定である。
課題2では、国内の医療施設やシステムベンダーがHL7定義を独自に拡張して利用しているメッセージの収集を、神戸大学医学部附属病院を対象として行った。
さらに、電子カルテシステムにおいて臨床情報とともに遺伝子情報を扱うことができる、HL7バージョン3メッセージの開発を目指し、糖尿病疾患原因遺伝子解析をユースケースとして遺伝子多型情報を収集するためのメッセージを試作した。本メッセージは、神戸市にある臨床研究情報センターの遺伝子情報登録・解析システムにおいて実際に活用される予定である。
結論
本年度は研究初年度として主に既存HL7メッセージの収集と体系化について研究を行った。その結果、HL7メッセージは、標準規約と言えども使用するデータタイプの詳細や必須要素といった、使用時に決定しなければならない詳細項目がある。そのため、本研究班が中心となり我が国におけるHL7メッセージの推奨利用方法について早急に議論する必要がある。また、HL7の標準メッセージを普及させるためには、電子カルテの開発者が容易にHL7メッセージを使用できるライブラリやモジュールを一刻も早く開発し無償で提供する必要があるとの結論を得た。
今年度から着手した遺伝子多型情報収集のためのメッセージ開発は、「臨床ゲノム情報交換のためのメッセージ開発」として新たな課題を設け、臨床情報と遺伝子関連情報をシームレスに扱うことのできるHL7メッセージの開発について次年度以降も研究を続ける。
今年度から着手した遺伝子多型情報収集のためのメッセージ開発は、「臨床ゲノム情報交換のためのメッセージ開発」として新たな課題を設け、臨床情報と遺伝子関連情報をシームレスに扱うことのできるHL7メッセージの開発について次年度以降も研究を続ける。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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