熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200200969A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
金子 原二郎(長崎県知事)
研究分担者(所属機関)
  • 池邉昇(長崎県生活衛生課長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
13,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和43年に発生したPCB中毒患者(油症)が、今なお完全に治癒していない状況に鑑み、油症被害者の検診並びに追跡調査を行い、油症の有効的な治療法の解明を図ることを目的とする。
研究方法
長崎大学を中心とした油症検診班を組織し、五島(玉之浦1日、奈留1日)、長崎(1日)の両地区において油症被害者約700名を対象に一斉検診、並びにその検診結果に基づき油症被害者個々に健康管理指導を行った。
なお、未確認者に対しては、認定診査も行った。
また、また、今年度は過去10年間における認定患者の症状の推移について検討を行った。
結果と考察
長崎、佐賀、熊本3県の油症被害者を対象として五島(玉之浦1日、奈留1日)長崎(1日)の両地区において油症患者89名、未確認者36名、合計125名について一斉検診を行った。その検診結果に基づき、総合的な健康診査を行い、106名に対し医療面の指導・指示を行った。
また、未確認者については、血液中PCB、PCQ濃度を含めて油症診断を行ったが、今年度新たに認定したものはいなかった。
なお、今回は過去10年間における認定患者の症状の推移について検討を行ったので以下に簡単に述べる。
①過去10年間における認定患者の症状の推移
油症患者の疾病の傾向を知るために、油症統一検診票にある以下の項目・血液検査等105項目について経年的に比較を行った。比較方法は、各年度のそれぞれの項目に対し医師からの所見があった者、並びに血液検査の異常値となっている者の人数を総数で割り、パーセントで比較検討した。
【内科】自覚症状(全身倦怠感、頭痛・頭重、咳嗽、喀痰、腹痛、下痢、便秘、しびれ感、関節痛、月経異常)他覚所見(栄養、心音、呼吸音、肝腫、脾腫、浮腫、リンパ節腫大、四肢けん反射、感覚障害、胸部X線、心電図、肝・胆・脾エコー)
【皮膚科】問診(最近の化膿傾向、最近の粉りゅう再発傾向、かつての座瘡様皮疹、かつての色素沈着)他覚所見{黒色面皰(顔面、耳介、躯幹)座瘡様皮疹(顔面、外陰部、臀部、躯幹)瘢痕化(顔面、躯幹)色素沈着(顔面、指爪、趾爪)爪変形}
【眼科】主訴(眼脂過多)、他覚所見(眼瞼浮腫、眼瞼結膜色素沈着、瞼板腺嚢胞形成、眼板腺チーズ様分泌物圧出)
【歯科】主訴、口腔所見(歯肉炎、辺縁性歯周炎、歯牙萌出異常、歯牙着色、歯牙形成不全、咬合異常)色素沈着(上歯肉、下歯肉、右頬粘膜、左頬粘膜、口蓋粘膜、上口唇粘膜、下口唇粘膜)
【尿検査】蛋白、糖、潜血反応、ウロビリノーゲン
【血液検査】血液学的検査{血沈(1時間値、2時間値)、白血球数、赤血球数、血色素量、ヘマトクリット、MCV、MCH、MCHC、血小板数}生化学的検査(総ビリルビン、直接ビリルビン、GOT、GPT、総蛋白、アルブミン、A/G、クンケル、チモール、アルフォス、LAP、γ-GTP、コリンエステラーゼ、LDH、CPK、コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、β-リポ蛋白、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、Na、K、Ca、無機リン、アミラーゼ、血糖)免疫学的検査(HBs抗原、HBe抗原、HBe抗原カットオフ比、HCV抗体、AFP)
②そのうち、明らかに減少傾向にあるものは、以下の項目であった。
【内科】自覚症状(全身倦怠感、咳嗽、喀痰、腹痛、下痢)他覚所見(肝腫、感覚障害、心電図)
【皮膚科】問診(最近の粉りゅう再発傾向)他覚所見{黒色面皰(躯幹)瘢痕化(顔面)色素沈着(趾爪)}
【眼科】他覚所見(瞼板腺嚢胞形成)
【歯科】色素沈着(上口唇粘膜、下口唇粘膜)
【血液検査】生化学的検査(CPK、HDLコレステロール)
③また、明らかに増加傾向にあるものは、以下の項目であった。
【内科】自覚症状(便秘)他覚所見(四肢けん反射)
【皮膚科】他覚所見{座瘡様皮疹(顔面)}
【眼科】他覚所見(眼瞼浮腫)
【血液検査】生化学的検査(総ビリルビン、A/G、LAP、コリンエステラーゼ、コレステロール、中性脂肪、β-リポ蛋白、クレアチニン、尿酸、K、アミラーゼ)
これらの結果、現在のところ油症とどのような相関があるかは不明であるが、老化に伴う変化もあるように見受けられる。よって、今後も各診療科目の専門的な判断に基づき信憑性のあるデータを採取することが重要であると思われた。
結論
検診を受診した多くの方に医療面の指導を行ったように、患者の健康状態は良くない。原因が高齢からくるものか、体内に蓄積されたPCB、PCQからくるものか不明だが、体内に蓄積したPCB、PCQが身体にどのような影響を与えどのような病気をもたらすか、また、子孫に対する影響等安全が確認されるまでの間は、検診を継続していく必要があると思われる。

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