文献情報
文献番号
200200923A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 山崎壮(国立医薬品食品衛生研究所)
- 神谷研二(広島大学原爆放射能医学研究所)
- 原田昌興(神奈川県立がんセンター臨床研究所)
- 三森国敏(東京農工大学)
- 関田清司(国立医薬品食品衛生研究所)
- 井上達(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存添加物489品目は、平成7年5月の食品衛生法の改正に伴い、従来から使用されていた天然添加物に対する経過措置として使用を認められているものである。法改正時の国会附帯決議で、既存添加物については速やかに安全性の見直しを行い、有害であることが実証された場合には、使用禁止等必要な措置を講じることとされている。既存添加物の基本的安全性を評価するためには、反復投与毒性試験などの実施が必要とされる。一方、既存添加物の多くは天然抽出物であり、それらのほとんどは多成分からなることから、毒性試験結果の評価には成分情報が重要である。このような背景のもと、本研究では、反復投与毒性試験等の動物実験による科学的安全性評価データに欠ける既存添加物のうちから、成分規格(業界自主規格)のない品目を中心に選定し、成分、品質に関する研究とラット90日間反復投与毒性試験を連携して行った。成分、品質に関する知見は、毒性試験結果との関連を検討するとともに、成分規格に反映させることをめざす。
研究方法
1. 成分研究:コメヌカ油抽出物、キダチアロエ抽出物、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ニガヨモギ抽出物、スフィンゴ脂質、ジャマイカカッシア抽出物、サンダラック樹脂、グレープフルーツ種子抽出物、ログウッド色素の主成分あるいは微量成分等を各種クロマトグラフィーを用いて分析、あるいは単離し、NMR、MS等による構造解析を行った。
2. 90日間反復投与毒性試験:上記品目のうちログウッド色素を除く8品目についてラットに数段階の用量の被験物質を90日間反復投与した。試験では、一般状態の観察(毎日)、体重測定(週1回)、摂餌量測定(週1回)を投与期間中に実施し、投与終了後には、血液学的検査、血液生化学的検査、臓器重量測定及び組織学的検査を含む病理学的検査を実施する。
2. 90日間反復投与毒性試験:上記品目のうちログウッド色素を除く8品目についてラットに数段階の用量の被験物質を90日間反復投与した。試験では、一般状態の観察(毎日)、体重測定(週1回)、摂餌量測定(週1回)を投与期間中に実施し、投与終了後には、血液学的検査、血液生化学的検査、臓器重量測定及び組織学的検査を含む病理学的検査を実施する。
結果と考察
1. 成分研究 1)コメヌカ油抽出物:約60%がフェルラ酸であり、その他、炭素40個程度からなる骨格にフェルラ酸が結合した化合物数種が確認された。
2)キダチアロエ抽出物:単離した多糖体(収率9.1%)の構成成分を明らかにし、特有低分子化合物を定量した(aloenin 1.9%、barbaloin 0.7%、isobarbaloin 0.7%)。局方アロエなどとの判別にはTLCおよびLC/MSが有用と考えられた。
3)アグロバクテリウムスクシノグリカン:単離したスクシノグリカン(収率77.6%)の構成糖の組成および糖鎖の結合様式を明らかにした。また、非還元末端位にピルビン酸が結合していることが示唆された。
4)ニガヨモギ抽出物:精油成分としてはchrysanthenol、sabinolの含量が高く、副作用成分とされるα-,β-thujoneの含有量はごく微量であった。
5)スフィンゴ脂質:主成分と思われる脂質の他に極性の大きく異なる同類の脂質が多種含まれていることが推定された。米ぬか由来製品とウシ脳由来製品を判別する確認試験法について文献的検討を行い、両者の判別は原理的に可能と考えられた。
6)ジャマイカカッシア抽出物:主成分を単離同定し、定量した(quassin 21%およびneoquassin 55.5%)。
7)サンダラック樹脂:主成分はジテルペンのカルボン酸誘導体である可能性が示唆された。
8)グレープフルーツ種子抽出物:多数の脂肪酸誘導体の混合物と推定された。過去に合成抗菌剤を検出した報告があったため、今回の試料について分析したが、検出されなかった。
9)ログウッド色素:主色素成分とされるヘマトキシリンは検出されず、サンタリンA、Bが検出され、シタン色素である可能性が示唆されたため、毒性試験は保留とした。
2. 90日間反復投与毒性試験 1)コメヌカ油抽出物:剖検における肉眼的観察では、対照群との間に差を認めなかった。いずれの投与群においても途中死亡例がなく、体重増加抑制も認められず、また組織学的に明らかな毒性所見も認められなかったことから、今回の亜慢性毒性試験で毒性はないものと判断された。(0.06~4%添加固形飼料投与)。
2)キダチアロエ抽出物:4%投与群で軽度の白血球増加と体重減少が認められたが、すべての投与群において途中死亡例がなく、また組織学的に明らかな毒性所見も認められず、その他の異常所見も認められなかったことから毒性は極めて低いものと考えられる。(0.06~4%添加固形飼料投与)。
3)アグロバクテリウムスクシノグリカン:5%投与群でも72日目までは、一般状態、体重、摂餌量、肉眼的病理所見、一般血液検査、血液生化学検査等に有意の異常を認めず、一般毒性は極めて乏しいものと推察される(0.5~5%添加粉末飼料投与)。
4)ニガヨモギ抽出物:いずれの投与群においても死亡動物は認められず、体重増加量、血液学的及び血清生化学的検査、臓器重量測定及び病理組織学的検査においても被験物質投与に起因した変化は何ら認められなかった。本試験におけるニガヨモギ抽出物のラットにおける無毒性量は2%以上であると考えられた(0.125~2%混水投与)。
5)スフィンゴ脂質:いずれの投与群においても死亡動物は認められず、体重増加量、血液学的及び血清生化学的検査及び臓器重量においても被験物質投与に起因した変化は何ら認められなかった(週5日60~1000mg/kg、強制経口投与、病理組織学的検査未了)。
6)ジャマイカカッシア抽出物:0.5%群では、肝臓の絶対重量及び相対重量増加が雌雄で認められ、雌ではγ-GTPや総コレステロールの増加も観察され、被験物質の肝臓への影響を示唆した変化と考えられた。0.005%群からアルカリホスファターゼの減少が認められたが毒性変化としての意義はないと考えられており、現時点ではその意義について考察し得ないが、変化の程度から、少なくとも0.005及び0.05%群の変化は毒性変化とは考えなかった(0.005~0.5%添加粉末飼料投与、病理組織学的検査未了)。
7)サンダラック樹脂:雄1.0及び雌雄5.0%投与群で肝臓の相対重量の有意な増加が認められ、被験物質投与との関連性が示唆された。その他の変化については、毒性学的に意義の無い変化と考察した(0.2~5.0%添加粉末飼料投与、病理組織学的検査未了)。
8)グレープフルーツ種子抽出物:雌の1000mg/kg投与で、脾臓の相対重量増加が認められたが、統計学的に有意差を示すものの、差は極めて小さく、他に変化が全く認められないことなどから、毒性学的意義のない変化と考察した(40~1000mg/kg/日、強制経口投与、病理組織学的検査未了)。
2)キダチアロエ抽出物:単離した多糖体(収率9.1%)の構成成分を明らかにし、特有低分子化合物を定量した(aloenin 1.9%、barbaloin 0.7%、isobarbaloin 0.7%)。局方アロエなどとの判別にはTLCおよびLC/MSが有用と考えられた。
3)アグロバクテリウムスクシノグリカン:単離したスクシノグリカン(収率77.6%)の構成糖の組成および糖鎖の結合様式を明らかにした。また、非還元末端位にピルビン酸が結合していることが示唆された。
4)ニガヨモギ抽出物:精油成分としてはchrysanthenol、sabinolの含量が高く、副作用成分とされるα-,β-thujoneの含有量はごく微量であった。
5)スフィンゴ脂質:主成分と思われる脂質の他に極性の大きく異なる同類の脂質が多種含まれていることが推定された。米ぬか由来製品とウシ脳由来製品を判別する確認試験法について文献的検討を行い、両者の判別は原理的に可能と考えられた。
6)ジャマイカカッシア抽出物:主成分を単離同定し、定量した(quassin 21%およびneoquassin 55.5%)。
7)サンダラック樹脂:主成分はジテルペンのカルボン酸誘導体である可能性が示唆された。
8)グレープフルーツ種子抽出物:多数の脂肪酸誘導体の混合物と推定された。過去に合成抗菌剤を検出した報告があったため、今回の試料について分析したが、検出されなかった。
9)ログウッド色素:主色素成分とされるヘマトキシリンは検出されず、サンタリンA、Bが検出され、シタン色素である可能性が示唆されたため、毒性試験は保留とした。
2. 90日間反復投与毒性試験 1)コメヌカ油抽出物:剖検における肉眼的観察では、対照群との間に差を認めなかった。いずれの投与群においても途中死亡例がなく、体重増加抑制も認められず、また組織学的に明らかな毒性所見も認められなかったことから、今回の亜慢性毒性試験で毒性はないものと判断された。(0.06~4%添加固形飼料投与)。
2)キダチアロエ抽出物:4%投与群で軽度の白血球増加と体重減少が認められたが、すべての投与群において途中死亡例がなく、また組織学的に明らかな毒性所見も認められず、その他の異常所見も認められなかったことから毒性は極めて低いものと考えられる。(0.06~4%添加固形飼料投与)。
3)アグロバクテリウムスクシノグリカン:5%投与群でも72日目までは、一般状態、体重、摂餌量、肉眼的病理所見、一般血液検査、血液生化学検査等に有意の異常を認めず、一般毒性は極めて乏しいものと推察される(0.5~5%添加粉末飼料投与)。
4)ニガヨモギ抽出物:いずれの投与群においても死亡動物は認められず、体重増加量、血液学的及び血清生化学的検査、臓器重量測定及び病理組織学的検査においても被験物質投与に起因した変化は何ら認められなかった。本試験におけるニガヨモギ抽出物のラットにおける無毒性量は2%以上であると考えられた(0.125~2%混水投与)。
5)スフィンゴ脂質:いずれの投与群においても死亡動物は認められず、体重増加量、血液学的及び血清生化学的検査及び臓器重量においても被験物質投与に起因した変化は何ら認められなかった(週5日60~1000mg/kg、強制経口投与、病理組織学的検査未了)。
6)ジャマイカカッシア抽出物:0.5%群では、肝臓の絶対重量及び相対重量増加が雌雄で認められ、雌ではγ-GTPや総コレステロールの増加も観察され、被験物質の肝臓への影響を示唆した変化と考えられた。0.005%群からアルカリホスファターゼの減少が認められたが毒性変化としての意義はないと考えられており、現時点ではその意義について考察し得ないが、変化の程度から、少なくとも0.005及び0.05%群の変化は毒性変化とは考えなかった(0.005~0.5%添加粉末飼料投与、病理組織学的検査未了)。
7)サンダラック樹脂:雄1.0及び雌雄5.0%投与群で肝臓の相対重量の有意な増加が認められ、被験物質投与との関連性が示唆された。その他の変化については、毒性学的に意義の無い変化と考察した(0.2~5.0%添加粉末飼料投与、病理組織学的検査未了)。
8)グレープフルーツ種子抽出物:雌の1000mg/kg投与で、脾臓の相対重量増加が認められたが、統計学的に有意差を示すものの、差は極めて小さく、他に変化が全く認められないことなどから、毒性学的意義のない変化と考察した(40~1000mg/kg/日、強制経口投与、病理組織学的検査未了)。
結論
1.成分研究 主成分、副成分等の同定、定量を行い、それらに関する知見を得ることができた。ログウッド色素試料がシタン色素である可能性が考えられたことから、毒性試験は保留とした。
2.90日間反復投与毒性試験 一部の品目は供給が遅れる等の事情で病理組織学的検索等が未了であり、最終結論が出ないが、ジャマイカカッシア抽出物及びサンダラック樹脂で肝重量の増加が示唆されたことを除いて、毒性は認められなかった。
2.90日間反復投与毒性試験 一部の品目は供給が遅れる等の事情で病理組織学的検索等が未了であり、最終結論が出ないが、ジャマイカカッシア抽出物及びサンダラック樹脂で肝重量の増加が示唆されたことを除いて、毒性は認められなかった。
公開日・更新日
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