高齢者の生活保障システムに関する国際比較研究

文献情報

文献番号
200200022A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の生活保障システムに関する国際比較研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
池上 直己(慶應義塾大学医学部(医療政策・管理学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 府川哲夫(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
8,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の生活保障システムには、引退後の所得保障と健康的な生活を送るための医療・介護保障がある。本研究では、わが国の介護保険が国際的に注目されていることに鑑み、介護保険施行の前後比較や制度の浸透に伴う介護サービスの利用の変化、医療費や福祉費に与える影響、所得階層別の動向などを多面的かつ縦断的に検討するとともに、所得保障の役割とその効果について年金改革の国際比較研究と年金を含む公的トランスファーと私的トランスファーとの代替・補完関係についての実証分析を行うことにより、高齢者の生活保障システムの課題と展望を与える実証分析を行う。
研究方法
介護保険については、ブランダイス大学のシュナイダー医療政策研究所のデータベースを参考としながら、わが国のパネル・データを構築し、これを用いた実証分析を行う。年金改革の国際比較研究においては、論点について各国研究者と日本側研究者に伝えて共同研究を行い、各国の共通点と相違点の明確化を図る。公的および私的トランスファーの代替・補完関係については、世界銀行やアジア太平洋経済協力APECのソーシャル・セーフティ・ネットに関連する研究活動で関心を寄せられている諸問題について『国民生活基礎調査』を用いて考察するとともに、途上国の例として、中国社会科学院「居民収入調査プロジェクト」に協力してマイクロ・データを用いた実証分析を行う。
結果と考察
初年度である14年度は、北海道の2町において平成12-13年の介護保険データ、平成11-13年度の国保の医療費データ、平成11年度の福祉サービスデータをマッチングし、データセットを作成した。先進諸国は各国ごとにその置かれた状況の中で年金改革を行っているが、その一方で他国の経験を参考にし他国の改革の方向を自国の改革の選択肢に加えるなど、相互の影響が活発になっていることが明らかとなった。私的および公的トランスファーについて『国民生活基礎調査』を参照して考察すると、子供ありの世帯の方が資産保有は高く、私的トランスファーの要因となる遺産動機が見いだされた。このような貯蓄行動に影響する公的トランスファーとしての年金給付は、等価尺度を用いると勤労世代よりも高齢者の方がより豊かな生計費となる水準となる場合があり、世代間の公平性の重要性を裏付ける結果を得た。
結論
先進国の中で最も深刻な少子高齢社会を迎えると予想されている日本にとって、福祉国家の再構築は最も緊急性の高い政策課題である。日本が他の先進諸国から学ぶものは個別の制度改革もさることながら、その背景にある改革の理念や改革の土台となっているエビデンスであろう。そのためには、高齢者の生活保障システムの各面について国際比較研究を実施・継続していくことが必要である。

公開日・更新日

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