医薬品、医療用具等の無菌性保証の方法及びその妥当性に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100980A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品、医療用具等の無菌性保証の方法及びその妥当性に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
棚元 憲一(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木次雄(国立感染症研究所)
  • 那須正夫(大阪大学)
  • 大野悌治(埼玉県)
  • 佐々木学(北里研究所)
  • 阿部寛(大塚製薬株式会社)
  • 曲田純二(日本ミリポア(株))
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
滅菌製造された医療用具及び医薬品の多くが無菌操作法で製造されており、ろ過工程、充填工程、凍結乾燥工程、無菌操作工程等無菌性保証にとっての重要工程については、十分な無菌性バリデーションが求められる。本研究事業においては、無菌操作法において最も重要であるろ過滅菌工程やSIP/CIPの無菌性検証を中心に、付随する微生物管理手法について研究を行う。
研究方法
日本薬局方導入へ向けての新規試験法に関する研究では標準株を用いて製薬企業11社に菌種同定を依頼し、「遺伝子解析による微生物の同定法」ドラフトの評価を行った。「ろ過滅菌法」はISO/TC198/WG9を反映させた新しいモノグラフの素案の作成を目指した。「製薬用水の製造及び品質管理」に関しては研究班を発足させ、国際調和を考慮に入れながらの検討を行った。パラメトリックリリースについては国内外の学会等においての考え方の紹介と導入を図った。 非無菌水試料中における微生物検出法の開発研究では、存在する微生物の現存量はDNAに特異的に結合する蛍光染色剤 DAPIを、また、生菌数は細胞内のエステラーゼの作用により蛍光を発する6CFDA、及び呼吸により蛍光を発するCTCを用い、染色された微生物を蛍光顕微鏡下で直接観察・計数した。医薬品の無菌性保証に関するガイドライン作成では埼玉県内製薬企業の担当者、県衛生研究所及び薬務課担当者からなる検討会を設置し、製薬企業の現状及び日本薬局方等の公定書を参考に、「ガイドライン」の検討を行った。CIP/SIPに関する研究においてはISO/TC198/WG9においてドラフトの作成が進められているCIP/SIPの内容調査を行い、これらの情報収集を基にガイドラインドラフト及び解説書の作成を進めた。
結果と考察
医薬品の無菌的製造法関しては、国際的に厳しい要件が課せられている。本研究では、医薬品の無菌的製造法や管理手法に関して研究・調査を行い、その成果を日本薬局方に反映することにより、国内製薬企業の世界水準化維持を目指している。そのための新規試験法として「遺伝子解析による微生物の同定法」の作成及び検証を行った。細菌種については16SrRNA、カビについてはITS1の塩基配列の解読により菌種を絞り込むことができることを示した。「ろ過滅菌法」はISO/TC198/WG9会議でFDIS (Final Draft for International Standard)に格上げされたことから、日局参考情報へ収載するための素案作成を行った。またPDGで製薬用水を国際調和することになったことを受け、製薬企業の協力のもと、製薬用水の製造及び品質管理に関するアンケートを実施すると共に、日局参考情報収載を目指し「製薬用水の製造及び品質管理」に関する素案を作成した。これらの研究成果は、それぞれ日局への導入に向けて大いなる前進を見たと思われる。非無菌水試料中における微生物検出法の開発に関しては市販のミネラルウォーターについて、通常の培養法ではまったく確認できないにもかかわらず、蛍光染色を用いた新規検出法により1 mLあたり数万~10万個の微生物を確認した。この研究は、ある意味ではこれまでの微生物試験法の革命につながるものである。従来法は煩雑な操作と長期にわたる培養、さらには科学的な不確定さ等、時代に対応できない本質的な欠陥を抱えていて、有害微生物による被害が生じた際に迅速・適確な対応がなされていない。諸分野における科学技術の発展した今日、最新の技術を応用した迅速・適確な検出・同定法を確立し、有害微生物による被害に迅速・適確に対応する必要が
ある。本研究はその意味において画期的な研究であり、将来のより適切な試験法の開発につながるものと確信している。一方、注射剤等は、その製剤特性から厳しい製造管理及び品質管理が要求される。しかし、製薬企業における医薬品の無菌性保証に関する取り組みには差がみられる。そこで、医薬品の無菌性保証に関して製薬企業が達成すべき目標水準となる「ガイドライン」を作成し、それに基づく指導を試みた。さらに、CIP国際規格「ISO/WD13408-4 Part1 Cleaning in place」につき、内容調査を行い、CIPプロセス設計からバリデーション及び日常管理に至るまでの管理方法及びその評価方法を考察し、国内ガイドラインドラフト及び解説書を作成した。このような医薬品の無菌性保証に関するガイドライン作成やCIP/SIPに関する研究も、無菌性保証の確立に不可欠な研究であり、医薬品品質のレベルアップにつながるものである。
結論
無菌医療用具及び医薬品製造における無菌操作法において最も重要である、ろ過滅菌工程やSIP/CIPの無菌性検証を中心に、付随する微生物管理手法について研究を行った。各種無菌関連試験法、およびガイドラインの作成、さらには微生物モニタリング法の開発等に大きな成果を得た。これらの研究成果は、最終的には日本薬局方への反映や医薬品の無菌性保証に関するガイドライン作成等を通じて、わが国製薬企業における高度な品質の無菌医薬品の供給に貢献するものである。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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