文献情報
文献番号
200100944A
報告書区分
総括
研究課題名
高分子素材からなる生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の分析及び動態解析
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 裕之(星薬科大学)
研究分担者(所属機関)
- 米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
- 宮﨑 豊(愛知県衛生研究所)
- 畑山 善行(長野県衛生公害研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成11年度及び12年度厚生科学研究「高分子素材からなる生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の分析及び動態解析」の研究成果を通じて、幼児用玩具や食品用ポリ塩化ビニル製手袋のフタル酸エステル類(PAE)の使用について法的規制がなされた。本年度の研究では、身近な高分子素材を中心にした生活関連製品に由来する内分泌かく乱化学物質について、精度及び感度の高い分析法を構築する。また、高分子素材に由来する化学物質について内分泌かく乱作用という新たな観点からの安全性評価が求められており、これら化学物質や溶出物を中心に様々な視点から生体に及ぼす影響を解析するため、バイオアッセイ系評価法の構築及び本研究への応用を目的とした。さらに、安全性の高い代替可塑剤についてもその分析法及び生体影響を検討する。
1.ポリ塩化ビニル(PVC)製品中のPAE及びその動態解析
①食品用PVC製手袋中のフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)存在状態の解析
高分子素材の解析という観点からPVCの分析を実施し、食品用PVC手袋からのDEHP溶出や移行との関係を明らかにする。
②PVC製玩具中の可塑剤の実態調査-PAE等の溶出
本年度も昨年度に引き続き軟質玩具製品について、実態調査、残留量の分析等に関する検討を行う。
③ヒト唾液中における玩具中フタル酸ジエステル体からモノエステル体への生成
ヒト唾液中の酵素がフタル酸ジエステル体の加水分解反応に及ぼす影響について検討する。
2.食品容器包装材料中の内分泌かく乱化学物質の分析に関する研究
①瓶詰食品におけるキャップシーリング材中の4-ノニルフェノール(NP)の分析
瓶詰食品のキャップシーリング材にはPVC樹脂が使用されているため、様々な添加剤等が使用されている可能性があり、本研究ではNPを分析し、市販製品(1999年)の実態調査を行う。
②アルコール飲料中のビスフェノールA(BPA)及びビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)関連化合物の分析
液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS/MS)により、BPA及びBADGE関連化合物の一斉分析法を開発する。
③ラミネートフィルム包装食品中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
包装材料からのBPA及びBADGE関連化合物のヒトに対する暴露量を把握するために、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出器(LC-FL)及び高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)による分析法を構築し、包装食品への移行量を調査する。
3.生活関連高分子素材及び製品由来の内分泌かく乱化学物質の動態解析
①文具、化粧品、家庭用品等に含まれる内分泌かく乱化学物質の分析
プラスチック可塑剤には日常的に暴露されていると予想されるため、文具、化粧品、家庭用品等中に含まれるPAE及びアジピン酸エステル類を分析し、これら可塑剤の含有実態を調査する。
②実験動物用飼料及び飲水中のBPAの分析
実験動物の飼育環境の違いによる影響を評価する目的で、飼料、ポリカーボネイト製給水瓶中の飲水に残留するBPAを分析し、in vivo assayにおける内分泌かく乱化学物質の生体影響評価の妥当性を検討する。
③PVC製生活関連製品中のBPAの分析及び溶出挙動
様々なPVC製品(ラップフィルム、手袋、ホース、蛇口フィルター、レインコート、テーブルクロス等)に残留するBPAの測定と、その溶出挙動等を解明する。
④歯科材料由来の内分泌かく乱化学物質の分析
ポリカーボネイト(PC)重合の際の未反応BPA、t-ブチルフェノール(t-BP)量及び射出成型に伴う熱分解などによる残留量の分析を実施する。また、唾液浸漬によるPCからの分解BPA、t-BPの挙動を明らかにする。
4.生活環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査と分析精度の向上に関する研究
①尿中の生活関連製品由来内分泌かく乱化学物質の分析法の開発と実態調査
BPAとアルキルフェノール類を個別に分析する方法を構築して実態調査を実施し、日本人の平均的な暴露量を求める。
②環境大気中のプラスチック可塑剤の実態調査
一般環境屋外空気、室内空気、自動車内空気中のプラスチック可塑剤及び揮発性有機化合物の実態調査を実施して現状を把握する。
③LC/大気圧光イオン化(APPI)-MS法の基礎的研究
APPIの基礎研究を行い、N-メチルカルバメート系農薬及びベンゾ(a)ピレンの微量分析法への応用を検討する。
5.生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の作用評価
①酵母 Two-Hybrid 法を用いた内分泌かく乱作用の評価
高分子素材からなる生活関連製品由来化学物質の生体影響を評価する上で、酵母Two-Hybrid 法による有用な基礎的情報を得る。
②精巣ライディッヒ細胞初代培養系の構築とテストステロン産生に及ぼす内分泌かく乱化学物質のリスク評価
テストステロンを産生するライディッヒ細胞の初代培養系を構築し、そのテストステロン産生に及ぼすPAEやアルキルフェノール類の影響を検討する。さらに、ブタ精巣からライディッヒ細胞を単離して初代培養系を構築し、テストステロン産生に及ぼす影響を究明する。
③内分泌かく乱化学物質の造血幹細胞に対する影響
DEHP等の内分泌かく乱化学物質について、臍帯血中の造血幹細胞の分化・増殖に与える影響を、Colony Assay法を用いて検討する。
6. DEHPの代替可塑剤候補となる化学物質の内分泌かく乱作用評価及び検索
食品用器具及び容器・包装や玩具等には安全性の高い製品が要求される。受容体結合試験(エストロゲン(α、β)及びアンドロゲン受容体)、ヒト副腎皮質由来H295R細胞のコルチゾール産生への影響試験、酵母 Two-Hybrid 法(エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺受容体)、E-SCREEN Assay (T-47Dヒト乳がん細胞+S-9mix系評価法、MCF-7ヒト乳がん細胞) のin vitro系評価試験を駆使して代替可塑剤を検討する。
1.ポリ塩化ビニル(PVC)製品中のPAE及びその動態解析
①食品用PVC製手袋中のフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)存在状態の解析
高分子素材の解析という観点からPVCの分析を実施し、食品用PVC手袋からのDEHP溶出や移行との関係を明らかにする。
②PVC製玩具中の可塑剤の実態調査-PAE等の溶出
本年度も昨年度に引き続き軟質玩具製品について、実態調査、残留量の分析等に関する検討を行う。
③ヒト唾液中における玩具中フタル酸ジエステル体からモノエステル体への生成
ヒト唾液中の酵素がフタル酸ジエステル体の加水分解反応に及ぼす影響について検討する。
2.食品容器包装材料中の内分泌かく乱化学物質の分析に関する研究
①瓶詰食品におけるキャップシーリング材中の4-ノニルフェノール(NP)の分析
瓶詰食品のキャップシーリング材にはPVC樹脂が使用されているため、様々な添加剤等が使用されている可能性があり、本研究ではNPを分析し、市販製品(1999年)の実態調査を行う。
②アルコール飲料中のビスフェノールA(BPA)及びビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)関連化合物の分析
液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS/MS)により、BPA及びBADGE関連化合物の一斉分析法を開発する。
③ラミネートフィルム包装食品中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
包装材料からのBPA及びBADGE関連化合物のヒトに対する暴露量を把握するために、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出器(LC-FL)及び高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)による分析法を構築し、包装食品への移行量を調査する。
3.生活関連高分子素材及び製品由来の内分泌かく乱化学物質の動態解析
①文具、化粧品、家庭用品等に含まれる内分泌かく乱化学物質の分析
プラスチック可塑剤には日常的に暴露されていると予想されるため、文具、化粧品、家庭用品等中に含まれるPAE及びアジピン酸エステル類を分析し、これら可塑剤の含有実態を調査する。
②実験動物用飼料及び飲水中のBPAの分析
実験動物の飼育環境の違いによる影響を評価する目的で、飼料、ポリカーボネイト製給水瓶中の飲水に残留するBPAを分析し、in vivo assayにおける内分泌かく乱化学物質の生体影響評価の妥当性を検討する。
③PVC製生活関連製品中のBPAの分析及び溶出挙動
様々なPVC製品(ラップフィルム、手袋、ホース、蛇口フィルター、レインコート、テーブルクロス等)に残留するBPAの測定と、その溶出挙動等を解明する。
④歯科材料由来の内分泌かく乱化学物質の分析
ポリカーボネイト(PC)重合の際の未反応BPA、t-ブチルフェノール(t-BP)量及び射出成型に伴う熱分解などによる残留量の分析を実施する。また、唾液浸漬によるPCからの分解BPA、t-BPの挙動を明らかにする。
4.生活環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査と分析精度の向上に関する研究
①尿中の生活関連製品由来内分泌かく乱化学物質の分析法の開発と実態調査
BPAとアルキルフェノール類を個別に分析する方法を構築して実態調査を実施し、日本人の平均的な暴露量を求める。
②環境大気中のプラスチック可塑剤の実態調査
一般環境屋外空気、室内空気、自動車内空気中のプラスチック可塑剤及び揮発性有機化合物の実態調査を実施して現状を把握する。
③LC/大気圧光イオン化(APPI)-MS法の基礎的研究
APPIの基礎研究を行い、N-メチルカルバメート系農薬及びベンゾ(a)ピレンの微量分析法への応用を検討する。
5.生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の作用評価
①酵母 Two-Hybrid 法を用いた内分泌かく乱作用の評価
高分子素材からなる生活関連製品由来化学物質の生体影響を評価する上で、酵母Two-Hybrid 法による有用な基礎的情報を得る。
②精巣ライディッヒ細胞初代培養系の構築とテストステロン産生に及ぼす内分泌かく乱化学物質のリスク評価
テストステロンを産生するライディッヒ細胞の初代培養系を構築し、そのテストステロン産生に及ぼすPAEやアルキルフェノール類の影響を検討する。さらに、ブタ精巣からライディッヒ細胞を単離して初代培養系を構築し、テストステロン産生に及ぼす影響を究明する。
③内分泌かく乱化学物質の造血幹細胞に対する影響
DEHP等の内分泌かく乱化学物質について、臍帯血中の造血幹細胞の分化・増殖に与える影響を、Colony Assay法を用いて検討する。
6. DEHPの代替可塑剤候補となる化学物質の内分泌かく乱作用評価及び検索
食品用器具及び容器・包装や玩具等には安全性の高い製品が要求される。受容体結合試験(エストロゲン(α、β)及びアンドロゲン受容体)、ヒト副腎皮質由来H295R細胞のコルチゾール産生への影響試験、酵母 Two-Hybrid 法(エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺受容体)、E-SCREEN Assay (T-47Dヒト乳がん細胞+S-9mix系評価法、MCF-7ヒト乳がん細胞) のin vitro系評価試験を駆使して代替可塑剤を検討する。
研究方法
1.PVC製品中のフPAE及びその動態解析
①食品用PVC製手袋中のDEHP存在状態の解析
食品用PVC手袋中のDEHPの存在状態・分布とエチルアルコール消毒時の変化及びDEHPの水への溶出量の評価を透過型電子顕微鏡観察、角度変化ATRによる深さ方向分布シミュレーション、切削法サンプリング-熱脱着ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC-MS)、水溶出試験により実施した。
②PVC製玩具中の可塑剤の実態調査-PAE等の溶出
PVC製と確認された軟質玩具製品49製品56検体について、GC-MSにより材質試験を行い、可塑剤の種類及び含有量の調査を実施した。
③ヒト唾液中における玩具中フタル酸ジエステル体からモノエステル体への生成
フタル酸ジエステル体を含まないことを確認したポリエチレン製試験片を成人被験者15人の口腔内に入れ、15分間チューイングし、口腔内に溜まった唾液をネジ蓋付遠心分離管に採取し、LCまたはGC-MSにより分析した。
2.食品容器包装材料中の内分泌かく乱化学物質の分析に関する研究
①瓶詰食品におけるキャップシーリング材中のNPの分析
GC-MSを用いて、瓶詰食品(輸入品35、国産品15検体)のキャップシーリング材に存在するNPの分析を実施した。
②アルコール飲料中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
市販アルコール飲料(150検体)を試料として、固相抽出法により精製・抽出した試料をLC-MS-MSにより測定した。更に、缶蓋及び缶胴部分等の表面塗膜の赤外吸収スペクトル解析も実施した。
③ラミネートフィルム包装食品中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
市販のレトルト食品やラミネート包装食品を対象として、固相抽出法等により試料を抽出・精製し、LC-FL及びLC-MSによりBPA及びBADGE関連化合物を分析した。
3.生活関連高分子素材及び製品由来の内分泌かく乱化学物質の動態解析
①文具、化粧品、家庭用品等に含まれる内分泌かく乱化学物質の分析
平成13年7~8月に購入した文具49検体、化粧品9検体、家庭用品6検体を用いて含有実態を調査した。試験溶液の調製は、いずれも各種有機溶媒による抽出を行った後、GC-MSにより分析した。
②実験動物用飼料及び飲水中のBPAの分析
BPAのLC-MS分析においては、重水素化安定同位体を用いた内標準法を採用した。実験動物用飼料から、固相抽出法により、BPAを精製・抽出して分析した。吸水瓶中の飲水は直接、分析に供した。
③PVC製生活関連製品中のBPAの分析及び溶出挙動
1998年及び2001年に入手したラップフィルム、手袋、ホース類、ランチョンマット 、蛇口フィルター、フック、テーブルクロス、急須口、レインコートの材質試験をLCで分析した。手袋中のBPAの溶出試験は、試料を25 ㎝2に切り取り、蒸留水100 mLを入れ、25 ℃の水浴で1時間放置後、試料を取り出し、LCで実施した。
④歯科材料由来の内分泌かく乱化学物質の分析
材質試験は食品衛生試験法に準じたが、矯正用ブラケットは小さいためブラケット重量に対しての試薬量として使用した。試料をジクロロメタンに溶解させ、適量をメンブランフィルターでろ過後、LCで分析した。
4.生活環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査と分析精度の向上に関する研究
①生活関連製品に由来する内分泌かく乱化学物質の尿中分析法の開発と実態調査
暴露実験は男性2人にアルキルフェノール類(C4~C9)各100μgをドリンク剤100 mlに添加して摂取し、10時間尿を採取した。尿中のBPAの分析は、尿試料を共栓付フラスコに採り、β-グルクロニダーゼで酵素分解した。TMS化後、GC-MSで定量した。
②環境大気中のプラスチック可塑剤の実態調査
室内空気は、当該研究所3Fの1室、一般居住住宅木造1戸建ての洋室および和室を対象とした。調査対象とした自動車は、すべて4ドアセダンの普通乗用車とした。可塑剤の分析法は、テフロン製濾紙ホルダーに10L/minでポンプ吸引し、24時間(車の場合は日中6時間)空気を採取して分析した。
③LC/大気圧光イオン化(APPI)-MS法の基礎的研究
LC-MSは、Agilent Technologies製LC/MSD 1100 APPIイオン源を用いた。イオン源で使用した紫外線ランプにはSynagen製クリプトンランプ(10eV)を使用した。試料としてN-メチルカルバメート系農薬及びベンゾ(a)ピレンの微量分析を実施した。
5.生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の作用評価
①酵母 Two-Hybrid 法を用いた高分子素材中の内分泌かく乱作用の評価
甲状腺ホルモン様作用の評価は、TR-GAL4DBD及び TIF2-GAL4ADを発現させた酵母に化学物質を作用させ、酵母のOD595を測定した。抗アンドロジェン作用の評価は、AR-GAL4DBD 及び SRC1-GAL4AD を発現させた酵母をOD595 = 0.2 前後に SD培地で希釈し、酵母懸濁液とした。DMSO に溶解した化学物質及び 5-α-ジヒドロテストステロン(DHT; 2.0 x 10-8 M) を添加し、産生されたガラクトシダーゼの活性を測定した。
②精巣ライディッヒ細胞初代培養系の構築とテストステロン産生に及ぼす内分泌かく乱化学物質のリスク評価
96穴プレートにライディッヒ細胞を24時間サブカルチャー後、培養液を交換して、検体を加えて、ステロイド産生に対する影響を検討した。培養後、細胞のステロイド産生を誘導する目的で8Br-cAMを加え、更に一定時間培養後に培養液中に分泌されたテストステロン濃度をラジオイムノアッセイにより測定した。
③内分泌かく乱化学物質の造血幹細胞に対する影響
CD34/I-dU Assayは、96穴平底プレートにDMEM/ Hamで希釈したCD34陽性細胞懸濁液を播種し、被検物質を加え培養する。細胞増殖効果は、Thymidine analogueであるI-dUの取り込みにより評価した。Colony Assayは、35mm Culture DishにIMDMで希釈した細胞懸濁液を播種し、CD34陽性細胞の分化・増殖能への影響を解析した。
6. DEHPの代替可塑剤候補となる化学物質の内分泌かく乱作用評価及び検索
高い安全性が要求される食品用器具・容器包装、医療用具を対象として、使用実績のある、フタル酸ジ-n-デシル(DnDP)、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHA)、トリメット酸トリ(2-エチルヘキシル)(EH-TOTM)、トリメット酸トリ-n-オクチル(n-TOTM)、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、クエン酸ブチリルトリヘキシル(BTHC)、クエン酸アセチルトリヘキシル(ATHC)を代替可塑剤候補として各試験に供した。
酵母 Two-Hybrid 法
①食品用PVC製手袋中のDEHP存在状態の解析
食品用PVC手袋中のDEHPの存在状態・分布とエチルアルコール消毒時の変化及びDEHPの水への溶出量の評価を透過型電子顕微鏡観察、角度変化ATRによる深さ方向分布シミュレーション、切削法サンプリング-熱脱着ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC-MS)、水溶出試験により実施した。
②PVC製玩具中の可塑剤の実態調査-PAE等の溶出
PVC製と確認された軟質玩具製品49製品56検体について、GC-MSにより材質試験を行い、可塑剤の種類及び含有量の調査を実施した。
③ヒト唾液中における玩具中フタル酸ジエステル体からモノエステル体への生成
フタル酸ジエステル体を含まないことを確認したポリエチレン製試験片を成人被験者15人の口腔内に入れ、15分間チューイングし、口腔内に溜まった唾液をネジ蓋付遠心分離管に採取し、LCまたはGC-MSにより分析した。
2.食品容器包装材料中の内分泌かく乱化学物質の分析に関する研究
①瓶詰食品におけるキャップシーリング材中のNPの分析
GC-MSを用いて、瓶詰食品(輸入品35、国産品15検体)のキャップシーリング材に存在するNPの分析を実施した。
②アルコール飲料中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
市販アルコール飲料(150検体)を試料として、固相抽出法により精製・抽出した試料をLC-MS-MSにより測定した。更に、缶蓋及び缶胴部分等の表面塗膜の赤外吸収スペクトル解析も実施した。
③ラミネートフィルム包装食品中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
市販のレトルト食品やラミネート包装食品を対象として、固相抽出法等により試料を抽出・精製し、LC-FL及びLC-MSによりBPA及びBADGE関連化合物を分析した。
3.生活関連高分子素材及び製品由来の内分泌かく乱化学物質の動態解析
①文具、化粧品、家庭用品等に含まれる内分泌かく乱化学物質の分析
平成13年7~8月に購入した文具49検体、化粧品9検体、家庭用品6検体を用いて含有実態を調査した。試験溶液の調製は、いずれも各種有機溶媒による抽出を行った後、GC-MSにより分析した。
②実験動物用飼料及び飲水中のBPAの分析
BPAのLC-MS分析においては、重水素化安定同位体を用いた内標準法を採用した。実験動物用飼料から、固相抽出法により、BPAを精製・抽出して分析した。吸水瓶中の飲水は直接、分析に供した。
③PVC製生活関連製品中のBPAの分析及び溶出挙動
1998年及び2001年に入手したラップフィルム、手袋、ホース類、ランチョンマット 、蛇口フィルター、フック、テーブルクロス、急須口、レインコートの材質試験をLCで分析した。手袋中のBPAの溶出試験は、試料を25 ㎝2に切り取り、蒸留水100 mLを入れ、25 ℃の水浴で1時間放置後、試料を取り出し、LCで実施した。
④歯科材料由来の内分泌かく乱化学物質の分析
材質試験は食品衛生試験法に準じたが、矯正用ブラケットは小さいためブラケット重量に対しての試薬量として使用した。試料をジクロロメタンに溶解させ、適量をメンブランフィルターでろ過後、LCで分析した。
4.生活環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査と分析精度の向上に関する研究
①生活関連製品に由来する内分泌かく乱化学物質の尿中分析法の開発と実態調査
暴露実験は男性2人にアルキルフェノール類(C4~C9)各100μgをドリンク剤100 mlに添加して摂取し、10時間尿を採取した。尿中のBPAの分析は、尿試料を共栓付フラスコに採り、β-グルクロニダーゼで酵素分解した。TMS化後、GC-MSで定量した。
②環境大気中のプラスチック可塑剤の実態調査
室内空気は、当該研究所3Fの1室、一般居住住宅木造1戸建ての洋室および和室を対象とした。調査対象とした自動車は、すべて4ドアセダンの普通乗用車とした。可塑剤の分析法は、テフロン製濾紙ホルダーに10L/minでポンプ吸引し、24時間(車の場合は日中6時間)空気を採取して分析した。
③LC/大気圧光イオン化(APPI)-MS法の基礎的研究
LC-MSは、Agilent Technologies製LC/MSD 1100 APPIイオン源を用いた。イオン源で使用した紫外線ランプにはSynagen製クリプトンランプ(10eV)を使用した。試料としてN-メチルカルバメート系農薬及びベンゾ(a)ピレンの微量分析を実施した。
5.生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の作用評価
①酵母 Two-Hybrid 法を用いた高分子素材中の内分泌かく乱作用の評価
甲状腺ホルモン様作用の評価は、TR-GAL4DBD及び TIF2-GAL4ADを発現させた酵母に化学物質を作用させ、酵母のOD595を測定した。抗アンドロジェン作用の評価は、AR-GAL4DBD 及び SRC1-GAL4AD を発現させた酵母をOD595 = 0.2 前後に SD培地で希釈し、酵母懸濁液とした。DMSO に溶解した化学物質及び 5-α-ジヒドロテストステロン(DHT; 2.0 x 10-8 M) を添加し、産生されたガラクトシダーゼの活性を測定した。
②精巣ライディッヒ細胞初代培養系の構築とテストステロン産生に及ぼす内分泌かく乱化学物質のリスク評価
96穴プレートにライディッヒ細胞を24時間サブカルチャー後、培養液を交換して、検体を加えて、ステロイド産生に対する影響を検討した。培養後、細胞のステロイド産生を誘導する目的で8Br-cAMを加え、更に一定時間培養後に培養液中に分泌されたテストステロン濃度をラジオイムノアッセイにより測定した。
③内分泌かく乱化学物質の造血幹細胞に対する影響
CD34/I-dU Assayは、96穴平底プレートにDMEM/ Hamで希釈したCD34陽性細胞懸濁液を播種し、被検物質を加え培養する。細胞増殖効果は、Thymidine analogueであるI-dUの取り込みにより評価した。Colony Assayは、35mm Culture DishにIMDMで希釈した細胞懸濁液を播種し、CD34陽性細胞の分化・増殖能への影響を解析した。
6. DEHPの代替可塑剤候補となる化学物質の内分泌かく乱作用評価及び検索
高い安全性が要求される食品用器具・容器包装、医療用具を対象として、使用実績のある、フタル酸ジ-n-デシル(DnDP)、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHA)、トリメット酸トリ(2-エチルヘキシル)(EH-TOTM)、トリメット酸トリ-n-オクチル(n-TOTM)、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、クエン酸ブチリルトリヘキシル(BTHC)、クエン酸アセチルトリヘキシル(ATHC)を代替可塑剤候補として各試験に供した。
酵母 Two-Hybrid 法
結果と考察
1.PVC製品中のPAE及びその動態解析
①食品用PVC製手袋中のDEHP存在状態の解析
PVC製手袋表面には高濃度のDEHPが存在し、最表面ではごく薄い皮膜を形成していることが明らかとなった。この表面付近のDEHPはアルコール消毒により一旦溶解し、手袋内部に浸み込むが、最表面では比較的短時間で元の状態に回復することが推定された。溶出試験により水に溶出されるDEHP量は、アルコール処理時に手袋に残存するアルコールの影響を受けることが示唆された。
②PVC製玩具中の可塑剤の実態調査-フタル酸エステル類等の溶出
PVC製と判明した49製品56検体の可塑剤の種類と含有量を調査した結果、フタル酸エステル類3種類、アジピン酸エステル類3種類、その他の可塑剤4種類が検出され、フタル酸エステル類の検出率は68%に減少した。DINP、DEHP、DINA、ATBCを含有する玩具試験片から含有量と溶出量の関係を調べたところ、DINPとDEHPの溶出傾向は、前年度の結果とほぼ同様と推察された。
③ヒト唾液中における玩具中フタル酸ジエステル体からモノエステル体への生成
ヒト唾液中でのフタル酸ジエステル体からのモノエステル生成反応には唾液中の酵素の関与が認められた。唾液酵素は直鎖のアルキル基、特に炭素数4のブチル基に強い基質特異性を示し、側鎖を持つ2-エチルヘキシル基およびベンジル基にはほとんど加水分解活性を示さなかった。また、これらは、モノエステル体の脱エステルによるフタル酸生成反応に対するエステラーゼとしての活性は示さないことが明らかとなった。
2.食品容器包装材料中の内分泌かく乱化学物質の分析に関する研究
①瓶詰食品におけるキャップシーリング材中のNPの分析
1999年に入手した製品の20%からNPが検出されたが、化学物質の内分泌かく乱作用が注目されるようになってから、添加剤の代替えが行われていること分かった。
②アルコール飲料中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
国産ビールでは缶及びビン製品ともBPA及びBADGE類は殆ど検出されなかったが、輸入缶ビールでは一部の製品で微量検出された。国産の缶入りリキュール類や果実酒、焼酎及びウイスキーなどでも一部の製品からBADGE類が微量検出された。これらは主に、缶胴または缶蓋内面塗装として使用された塗料の種類及び品質などの要因によるものと考えられる。
③ラミネートフィルム包装食品中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
ラミネートフィルム包装食品51検体中、23検体からBADGE関連化合物が検出されたが、BPAはすべての検体から検出されなかった。BADGE関連化合物は、特にPET/Al/PP型のラミネートフィルム包装食品から検出された。また、溶出試験の結果から、BADGE関連化合物の食品への移行は、主にAl-PP間に使用されたエポキシ樹脂系接着剤によるものと推察された。
3.生活関連高分子素材及び製品由来の内分泌かく乱化学物質の動態解析
①文具、化粧品、家庭用品等に含まれる内分泌かく乱化学物質の分析
市販の文具、化粧品、家庭用品の計64検体について14種類の可塑剤を分析した結果、30検体からPAE及びアジピン酸エステル類が検出された。そのうち、15検体からは同時に2種類の、3検体からは同時に3種類の可塑剤が検出された。また、消しゴム中には高頻度かつ高濃度に可塑剤が含有されていることが判明した。
②実験動物用飼料及び飲水中のBPAの分析
今回検討した3種類の飼料からは、すべてBPAの残留量は検出限界以下であった。しかし、微量であるがポリカーボネイト製吸水瓶中の飲水からは、BPAが14.3 ng/ml検出された。実験動物飼育環境からのBPA汚染は、非常に少ないと推測された。
③PVC製生活関連製品中のBPAの分析及び溶出挙動
1998年に入手したPVC製品(ラップフィルム、手袋、ホース等)の80%に1.4~500 μg/gの範囲でBPAが検出された。材質中のBPAは樹脂の表面に集まる傾向が見られ、容易に水へ溶出することを確認した。 2001年に入手した製品ではBPAの検出率が減少していることが推察された。
④歯科材料由来の内分泌かく乱化学物質の分析
ポリカーボネイト(PC)重合の際の未反応BPA、t-ブチルフェノール(t-BP)量及び射出成型に伴う熱分解などによる残留BPA、t-BP量および唾液浸漬によるPCからの分解BPA、t-BP量を明らかにした。
4.生活環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査と分析精度の向上に関する研究
①生活関連製品に由来する内分泌かく乱化学物質の尿中分析法の開発と実態調査
BPAとアルキルフェノール類を個別に分析する方法を構築し、実態調査を実施して、平均的な暴露量(BPA: 0.27~5.47 ng/ml、NP: 0.2~2.5 ng/ml)を求めた。
②環境大気中のプラスチック可塑剤の実態調査
屋外大気中のプラスチック可塑剤の年間調査を行った結果、主にフタル酸ジ-n-ブチル(DnBP)とDEHPを検出した。DnBPの濃度は、夏季に高く、冬季には低くなり、気温との相関性がみられた。室内空気の調査では、DnBPは冬季に外気より10倍近く検出した。自動車内空気中の可塑剤の季節毎の調査を行った結果、車内温度が50℃を超える夏季には、DnBP、DEHPはともに1000 ng/m3を超えた。
③LC/大気圧光イオン化(APPI)-MS法の基礎的研究
APPIの基礎研究を行い、環境に存在するN-メチルカルバメート系農薬及びベンゾ(a)ピレンの微量分析を実施した。
5.生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の作用評価
①酵母 Two-Hybrid 法を用いた内分泌かく乱作用の評価
酵母 Two-Hybrid 法を用いてホルモン活性の基礎的情報の取得を試みた。スチレン関連物質、難燃剤等の甲状腺ホルモン様作用を調べた結果、甲状腺ホルモン様作用は認められなかった。また、アルキルフェノール類、パラベン類及びベンゾフェノン誘導体では、抗アンドロジェン作用を有することが判明した。
②精巣ライディッヒ細胞初代培養系の構築とテストステロン産生に及ぼす内分泌かく乱化学物質のリスク評価
テストステロンを産生するライディッヒ細胞の初代培養系を構築し、そのテストステロン産生に及ぼすPAEやアルキルフェノール類の影響を検討した。その結果、副腎H295R細胞のコルチゾール産生を阻害したNP (mix)及び4-t-オクチルフェノール(OP)のみならず4-n-ヘプチルフェノール、4-n-NP及び4-n-OPの曝露によってもライディッヒ細胞のテストステロン産生が抑制されることを明らかにした。さらに、ブタ精巣からライディッヒ細胞を単離して初代培養系を構築し、テストステロン産生に及ぼす影響を検討した。
③内分泌かく乱化学物質の造血幹細胞に対する影響
DEHPが臍帯血中の造血幹細胞の分化・増殖に与える影響について、Colony Assay法を用いて検討した。本試験では、CD34陽性細胞を利用することにより、新たな評価が達成できた。
6. DEHPの代替可塑剤候補となる化学物質の内分泌かく乱作用評価及び検索
受容体結合能試験、細胞増殖試験、酵母Two-Hybrid法、副腎皮質細胞のコルチゾール産生への影響試験の結果、DnDP(工業)、n-TOTM(工業)、EH-TOTM(工業)、ATHC(試薬)は全ての試験で活性が認められず、DEHPより活性の低いことがわかった。
①食品用PVC製手袋中のDEHP存在状態の解析
PVC製手袋表面には高濃度のDEHPが存在し、最表面ではごく薄い皮膜を形成していることが明らかとなった。この表面付近のDEHPはアルコール消毒により一旦溶解し、手袋内部に浸み込むが、最表面では比較的短時間で元の状態に回復することが推定された。溶出試験により水に溶出されるDEHP量は、アルコール処理時に手袋に残存するアルコールの影響を受けることが示唆された。
②PVC製玩具中の可塑剤の実態調査-フタル酸エステル類等の溶出
PVC製と判明した49製品56検体の可塑剤の種類と含有量を調査した結果、フタル酸エステル類3種類、アジピン酸エステル類3種類、その他の可塑剤4種類が検出され、フタル酸エステル類の検出率は68%に減少した。DINP、DEHP、DINA、ATBCを含有する玩具試験片から含有量と溶出量の関係を調べたところ、DINPとDEHPの溶出傾向は、前年度の結果とほぼ同様と推察された。
③ヒト唾液中における玩具中フタル酸ジエステル体からモノエステル体への生成
ヒト唾液中でのフタル酸ジエステル体からのモノエステル生成反応には唾液中の酵素の関与が認められた。唾液酵素は直鎖のアルキル基、特に炭素数4のブチル基に強い基質特異性を示し、側鎖を持つ2-エチルヘキシル基およびベンジル基にはほとんど加水分解活性を示さなかった。また、これらは、モノエステル体の脱エステルによるフタル酸生成反応に対するエステラーゼとしての活性は示さないことが明らかとなった。
2.食品容器包装材料中の内分泌かく乱化学物質の分析に関する研究
①瓶詰食品におけるキャップシーリング材中のNPの分析
1999年に入手した製品の20%からNPが検出されたが、化学物質の内分泌かく乱作用が注目されるようになってから、添加剤の代替えが行われていること分かった。
②アルコール飲料中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
国産ビールでは缶及びビン製品ともBPA及びBADGE類は殆ど検出されなかったが、輸入缶ビールでは一部の製品で微量検出された。国産の缶入りリキュール類や果実酒、焼酎及びウイスキーなどでも一部の製品からBADGE類が微量検出された。これらは主に、缶胴または缶蓋内面塗装として使用された塗料の種類及び品質などの要因によるものと考えられる。
③ラミネートフィルム包装食品中のBPA及びBADGE関連化合物の分析
ラミネートフィルム包装食品51検体中、23検体からBADGE関連化合物が検出されたが、BPAはすべての検体から検出されなかった。BADGE関連化合物は、特にPET/Al/PP型のラミネートフィルム包装食品から検出された。また、溶出試験の結果から、BADGE関連化合物の食品への移行は、主にAl-PP間に使用されたエポキシ樹脂系接着剤によるものと推察された。
3.生活関連高分子素材及び製品由来の内分泌かく乱化学物質の動態解析
①文具、化粧品、家庭用品等に含まれる内分泌かく乱化学物質の分析
市販の文具、化粧品、家庭用品の計64検体について14種類の可塑剤を分析した結果、30検体からPAE及びアジピン酸エステル類が検出された。そのうち、15検体からは同時に2種類の、3検体からは同時に3種類の可塑剤が検出された。また、消しゴム中には高頻度かつ高濃度に可塑剤が含有されていることが判明した。
②実験動物用飼料及び飲水中のBPAの分析
今回検討した3種類の飼料からは、すべてBPAの残留量は検出限界以下であった。しかし、微量であるがポリカーボネイト製吸水瓶中の飲水からは、BPAが14.3 ng/ml検出された。実験動物飼育環境からのBPA汚染は、非常に少ないと推測された。
③PVC製生活関連製品中のBPAの分析及び溶出挙動
1998年に入手したPVC製品(ラップフィルム、手袋、ホース等)の80%に1.4~500 μg/gの範囲でBPAが検出された。材質中のBPAは樹脂の表面に集まる傾向が見られ、容易に水へ溶出することを確認した。 2001年に入手した製品ではBPAの検出率が減少していることが推察された。
④歯科材料由来の内分泌かく乱化学物質の分析
ポリカーボネイト(PC)重合の際の未反応BPA、t-ブチルフェノール(t-BP)量及び射出成型に伴う熱分解などによる残留BPA、t-BP量および唾液浸漬によるPCからの分解BPA、t-BP量を明らかにした。
4.生活環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査と分析精度の向上に関する研究
①生活関連製品に由来する内分泌かく乱化学物質の尿中分析法の開発と実態調査
BPAとアルキルフェノール類を個別に分析する方法を構築し、実態調査を実施して、平均的な暴露量(BPA: 0.27~5.47 ng/ml、NP: 0.2~2.5 ng/ml)を求めた。
②環境大気中のプラスチック可塑剤の実態調査
屋外大気中のプラスチック可塑剤の年間調査を行った結果、主にフタル酸ジ-n-ブチル(DnBP)とDEHPを検出した。DnBPの濃度は、夏季に高く、冬季には低くなり、気温との相関性がみられた。室内空気の調査では、DnBPは冬季に外気より10倍近く検出した。自動車内空気中の可塑剤の季節毎の調査を行った結果、車内温度が50℃を超える夏季には、DnBP、DEHPはともに1000 ng/m3を超えた。
③LC/大気圧光イオン化(APPI)-MS法の基礎的研究
APPIの基礎研究を行い、環境に存在するN-メチルカルバメート系農薬及びベンゾ(a)ピレンの微量分析を実施した。
5.生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の作用評価
①酵母 Two-Hybrid 法を用いた内分泌かく乱作用の評価
酵母 Two-Hybrid 法を用いてホルモン活性の基礎的情報の取得を試みた。スチレン関連物質、難燃剤等の甲状腺ホルモン様作用を調べた結果、甲状腺ホルモン様作用は認められなかった。また、アルキルフェノール類、パラベン類及びベンゾフェノン誘導体では、抗アンドロジェン作用を有することが判明した。
②精巣ライディッヒ細胞初代培養系の構築とテストステロン産生に及ぼす内分泌かく乱化学物質のリスク評価
テストステロンを産生するライディッヒ細胞の初代培養系を構築し、そのテストステロン産生に及ぼすPAEやアルキルフェノール類の影響を検討した。その結果、副腎H295R細胞のコルチゾール産生を阻害したNP (mix)及び4-t-オクチルフェノール(OP)のみならず4-n-ヘプチルフェノール、4-n-NP及び4-n-OPの曝露によってもライディッヒ細胞のテストステロン産生が抑制されることを明らかにした。さらに、ブタ精巣からライディッヒ細胞を単離して初代培養系を構築し、テストステロン産生に及ぼす影響を検討した。
③内分泌かく乱化学物質の造血幹細胞に対する影響
DEHPが臍帯血中の造血幹細胞の分化・増殖に与える影響について、Colony Assay法を用いて検討した。本試験では、CD34陽性細胞を利用することにより、新たな評価が達成できた。
6. DEHPの代替可塑剤候補となる化学物質の内分泌かく乱作用評価及び検索
受容体結合能試験、細胞増殖試験、酵母Two-Hybrid法、副腎皮質細胞のコルチゾール産生への影響試験の結果、DnDP(工業)、n-TOTM(工業)、EH-TOTM(工業)、ATHC(試薬)は全ての試験で活性が認められず、DEHPより活性の低いことがわかった。
結論
本研究では身近な高分子素材を中心にした生活関連製品(玩具、食品用容器包装材料、文具、化粧品等)に由来する内分泌かく乱化学物質(PAE、アジピン酸エステル類、ビスフェノール類、アルキルフェノール等のフェノール性化合物)について、昨年同様に精度及び感度の高い分析法を構築した。この目的のためにはGC-MSやLC-MS等のハイブリッドな最新機器分析装置を駆使した分析法を採用し、高分子製生活関連製品からの材質試験、溶出挙動を究明した。人体暴露が判明した化学物質に関しては優先的に、細胞や実験動物を用い、細胞・分子レベルで生体にどのような影響を与えているかを明らかにした。
本研究を通してこれまでに得られた成果から、ヒト健康影響に対する影響や社会的影響を視野において、フタル酸エステルの代替可塑剤としてアジピン酸系、トリメット酸系、クエン酸系について検討した。その結果、これらの物質の中には内分泌かく乱作用影響が少なく、フタル酸エステルの代替となりえる化学物質が示唆された。
今回構築した分析法やアッセイ系を駆使することによって内分泌かく乱化学物質のリスク評価に関する有用な知見が得られるものと期待される。
本研究を通してこれまでに得られた成果から、ヒト健康影響に対する影響や社会的影響を視野において、フタル酸エステルの代替可塑剤としてアジピン酸系、トリメット酸系、クエン酸系について検討した。その結果、これらの物質の中には内分泌かく乱作用影響が少なく、フタル酸エステルの代替となりえる化学物質が示唆された。
今回構築した分析法やアッセイ系を駆使することによって内分泌かく乱化学物質のリスク評価に関する有用な知見が得られるものと期待される。
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