文献情報
文献番号
200100876A
報告書区分
総括
研究課題名
室内空気中の微生物防止対策に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
財団法人 ビル管理教育センター
研究分担者(所属機関)
- 池田耕一(国立公衆衛生院)
- 紀谷文樹(神奈川大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
①室内環境とダクト汚染の因果関係の解明、室内微生物汚染の指標の選定・量的規制、適切なダクト清掃・評価方法の具体的な確立等を目的として、室内環境中及びダクト内の浮遊微生物に関する研究を行った。②水景施設における継続調査を行い、清掃・殺菌などの維持管理手法について検討するとともに、昨年度の研究データを再解析し、「水景施設におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」を作成することを目的として、水景施設における微生物に関する研究を行った。また、循環式浴槽よりレジオネラ属菌が検出される施設では、浴槽水の消毒の不適切、浴槽水の換水間隔の不適当、ろ過システムの構造不備、施設責任者らの知識不足等により、管理の不徹底さが指摘されている。そこで、消毒・清掃・設置といった観点から基礎調査を実施し明確とした上で、具体的な汚染防止対策を検討するため、循環式浴槽における微生物に関する研究を行った。
研究方法
①室内環境中及びダクト内の浮遊微生物に関する研究では、ダクト清掃作業施工中のオフィスビルにおいて、浮遊粉じんおよび浮遊微生物の実測調査を行い、その測定方法等について検討すると共に、ダクト清掃前後の汚染レベルの把握及び基準値に関しても検討した。併せて、空気調和機の清掃前後における微生物由来の化学物質濃度変化特性について検討した。②循環式浴槽及び水景施設における微生物に関する研究では、水景施設の水質実態を調査するために、レジオネラ属菌を主体とした細菌学試験、レジオネラ属菌等の細菌汚染との関連が予測される理化学試験を実施した。さらに、調査施設で実施された維持管理対策について調査し、その手法の効果を検討した。また、循環式浴槽水の適切な維持管理手法を検討するために、遊離残留塩素を連続注入、あるいは間歇的に添加した浴槽水中のレジオネラ属菌の挙動等を調査し、循環による遊離残留塩素濃度の消長、及び、レジオネラ属菌殺菌効果を調査した。さらに、全国90自治体の浴槽水のレジオネラ属菌実態調査に関するデータを収集し、解析した。
結果と考察
①運転状態による汚染濃度の状況は空調機起動時の方が定常運転時よりも微生物、粉じん共に増加し、また、ダクト清掃後には清掃前と比較して減少する傾向が確認された。しかし、起動時は測定値にばらつきが大きかったこと等から、定常運転時における測定結果より、汚染度の診断手法を検討することが妥当である。定常運転時のダクト内は真菌より細菌が多く、ダクト内より室内の方が浮遊微生物量は多い傾向が見られた。しかし、清掃直後の測定から、一時的に微生物・粉じん共に濃度が高くなる傾向が見られたため、清掃後の時間経過と微生物濃度の減衰量の関係を調査した結果、清掃直後は清掃前の菌数を上回るが、時間経過と共に減少し、約4時間後には安定し、清掃後の清掃評価診断は清掃終了後、空調機運転4時間経過以降に行うことが適切であるといえる。なお、微生物由来の化学物質濃度については、清掃前後による差はなかった。さらに、ダクト内を直接評価でき、かつダクトによる空気汚染を評価できる点を考慮して汚染評価・清掃評価方法の検討を行った結果、付着じんについては拭取法、浮遊総菌数については空中浮遊菌測定装置を用いることとし、清掃時期の判断基準は、付着じん量で3g/m2以上、浮遊総菌数で100CFU/m3以上とした。一方、清掃後の付着粉じん量の基準値は、現状の清掃技術や評価方法を勘案して、当面1g/m2とし、浮遊総菌数では30CFU/m3以下とした。②水景施設の継続調査及び昨年度の調査データを詳細に解析した結果、以下のことが判明した。水系細菌汚染の指標細菌である大腸菌群は51%が検出
されたため、利用状態によっては、清掃や殺菌等の手段を講じて菌数減少を図る必要があると考えられた。さらに、大腸菌群等の細菌がレジオネラ属菌の代替指標となるかを解析した結果、相関は見られず、代替指標にならないことが判明した。また、水温が22℃前後の時、レジオネラ属菌陽性率は約15%であったが、水温が26℃以上になると陽性率が40%以上に上昇した。残留塩素が検出された施設は総てレジオネラ属菌が不検出であったことから、塩素剤による殺菌が有効であることが判明した。清掃頻度とレジオネラ属菌との関係を調査した結果、清掃頻度が2回/年未満の場合、陽性率67%に対し、12回/年以上になると17%まで低下することから、清掃頻度の増加がレジオネラ属菌抑制の一因となることが示唆された。また、循環式浴槽に関する各自治体の調査実態では、28自治体から資料提供を受け、レジオネラ属菌検査を実施している浴槽数は849件であった。レジオネラ属菌が検出された浴槽は259件(30.5%)であり、検出菌数は101~105CFU/100mLであった。レジオネラ属菌検出状況と遊離残留塩素濃度の関係では、遊離残留塩素が不検出の場合は検出率62.3%であったが、遊離残留塩素濃度が0.4mg/mL以上になると検出率が急激に低下し、遊離残留塩素がレジオネラ属菌の抑制に効果があることが改めて確認された。塩素以外のその他の消毒方法では、紫外線、オゾン、銀イオンいずれも、レジオネラ属菌の検出率は高く、塩素剤との有意差が認められた。レジオネラ属菌の検出状況と塩素注入場所(ろ過装置入口側と出口側)を比較したところ、入口側の方が研修率が低く、有意差が認められた。
されたため、利用状態によっては、清掃や殺菌等の手段を講じて菌数減少を図る必要があると考えられた。さらに、大腸菌群等の細菌がレジオネラ属菌の代替指標となるかを解析した結果、相関は見られず、代替指標にならないことが判明した。また、水温が22℃前後の時、レジオネラ属菌陽性率は約15%であったが、水温が26℃以上になると陽性率が40%以上に上昇した。残留塩素が検出された施設は総てレジオネラ属菌が不検出であったことから、塩素剤による殺菌が有効であることが判明した。清掃頻度とレジオネラ属菌との関係を調査した結果、清掃頻度が2回/年未満の場合、陽性率67%に対し、12回/年以上になると17%まで低下することから、清掃頻度の増加がレジオネラ属菌抑制の一因となることが示唆された。また、循環式浴槽に関する各自治体の調査実態では、28自治体から資料提供を受け、レジオネラ属菌検査を実施している浴槽数は849件であった。レジオネラ属菌が検出された浴槽は259件(30.5%)であり、検出菌数は101~105CFU/100mLであった。レジオネラ属菌検出状況と遊離残留塩素濃度の関係では、遊離残留塩素が不検出の場合は検出率62.3%であったが、遊離残留塩素濃度が0.4mg/mL以上になると検出率が急激に低下し、遊離残留塩素がレジオネラ属菌の抑制に効果があることが改めて確認された。塩素以外のその他の消毒方法では、紫外線、オゾン、銀イオンいずれも、レジオネラ属菌の検出率は高く、塩素剤との有意差が認められた。レジオネラ属菌の検出状況と塩素注入場所(ろ過装置入口側と出口側)を比較したところ、入口側の方が研修率が低く、有意差が認められた。
結論
①ダクト清掃により、ダクト内の付着塵等が除去されることが明らかとなった。清掃時期の評価基準として、「年に1回空調用ダクト内堆積粉塵量とダクト内空中浮遊菌量を測定すること。」、「堆積粉塵量3g/m2以上もしくは、総菌量100CFU/m3以上の場合はダクト清掃を行う。」こととした。「ダクト清掃後の評価基準として、ダクト内堆積粉塵量とダクト内空中浮遊菌量を測定すること。」、「堆積粉塵量1g/m2以下であり、総菌量30CFU/m3以下であること。」、「空中浮遊菌測定はダクト清掃後空調機を4時間運転後に行うこと。」、「堆積粉塵量測定は拭取法を用いる。」、「空中浮遊菌測定は空中浮遊菌測定器を用いる。培養はSCD寒天培地で、30℃,72時間とする。」こととした。②水景施設におけるレジオネラ属菌の汚染防止策として、「清掃頻度の増加」、「ろ過装置の殺菌及び配管洗浄の実施」、「利用形態等に応じた塩素等の殺菌装置の設置」、「定期的なレジオネラ属菌検査の実施」などが挙げられた。また、施設管理者等より、レジオネラ対策に限らず、水景施設の衛生上の全般的な問題点への対策が望まれているため、レジオネラ汚染状況の推移、清掃・消毒手法の効果等を含め、実態に則した維持管理マニュアルを作成した。また、循環式浴槽における調査結果より、日常清掃と換水だけではレジオネラ属菌の増殖を抑制できず、殺菌の重要性、特に塩素剤の有効性が認められた。なお、循環システム全体にレジオネラ属菌が生息・繁殖している実態から、この対応として、過酸化水素による化学洗浄が、循環系のバイオフィルム除去に有効であり、洗浄直後はレジオネラ属菌が不検出となることが確認された。これより、適切な維持管理としては、ろ過装置内でのバイオフィルム及びレジオネラ属菌の増殖の抑制並びにろ過装置直前の塩素剤の連続自動注入の励行が特に重要である。
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