医療機器技術の基盤的EBMデータベースの構築に関する調査研究(H13-21EBM-022)

文献情報

文献番号
200100519A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器技術の基盤的EBMデータベースの構築に関する調査研究(H13-21EBM-022)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 靖久((財)医療機器センター(東京女子医科大学))
研究分担者(所属機関)
  • 箭内博行((財)医療機器センター)
  • 古幡博(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(EBM研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
27,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
根拠に基づく医療(Evidence-Based-Medicine)は、患者に対する適正な医療を実施する上で、21世紀の基本を形成する状況にある。既に医療技術としてのEBM情報は国内外に少なくないが、医療機器技術に的を絞った専門的Clinical Evidenceデータはなく、これを新たにEBM情報から抽出して医療機器技術専用のEBMデータベースを確立する。従って、承認時点の臨床試験成績や再評価試験成績の公表データも含め、現場で活用される機器技術EBMデータベースを目指す。このようなことから医療機器技術全般を網羅した広範な内容を含むデータベースの構築の基礎情報を調査研究する。本研究の目的は、医療機器自体の臨床的有益性をEBMにおけるevidence情報をもとに把握し得る機器毎のevidenceのデータベースを構築することである。このデータベースを構築し、将来的にはデータマイニング可能なシステムとして、機器データベースを完成することである。本年度は具体的に次の目標を達成することとした。1)医療機器のevidenceを搭載するデータベースの構造を決定すること。2)膨大なEBM情報であるので、分野を循環器系の医療機器に限定したevidence調査を実施する。3)調査データに基づいて、データベースへ格納する内容をまとめる。
研究方法
この調査研究は、臨床家と医療機器技術に関する専門家及びEBM情報の専門家等を含めた研究班を組織して行った。また、文献調査整理は(株)三菱総合研究所へ委託した。膨大なEBM情報にはRCT(Randomized Controlled Trial)によるevidenceから小数例のevidenceもある。医療機器の疾病横断的evidenceを蓄積するために次の方針で行った。1)本年度行う循環器系医療機器について、次の17種を選定した。PTCA(バルーン、レーザ、ステント、ローター)、Electrical Abrasion、ECMO、IABP、PCPSポンプ、高速CT、血栓溶解療法(US)、栓子検出法、生体弁、ペースメーカ、体外循環装置、ICD、MICS (minimum invasive cardiac surgery)、補助循環装置、2)先見的に機器のevidenceとして求められる項目内容を決定し、データ構造を決定した。3)EBM情報の中からRCT情報に限定し調査した。ただし、そのevidence情報を収載しているデータベースには次の5つがあるので、この全てを対象とした。1.PubMed、2.ACP journal Club、3.Cochrane Database of Systematic Reviews、4.Cochrane Database of Systematic Reviews、5.Database of Abstracts of Reviews of Effectiveness、4)医療機器の名称による疾病横断的なevidence検索は初めてであり、その内容、充実度に関する予測ができないので、ペースメーカについて予備調査を実施し、調査作業方針を最終決定した。5)循環器系医療機器のevidenceの内容、そのデータベース化項毎の結論などの妥当性を研究協力者とともに検討した。6)機器毎のevidenceをまとめ、データベースの中に搭載可能な形にまとめた。7)医療機器の承認審査時の治験データも一種のevidence情報であるので、機器の承認当初のevidence内容を調査した。これは機器の場合、有用性を示すデータ治験データ科学的根拠性が、薬剤等による科学的根拠性よりもレベルが高い可能性が高く臨床多数例によるRCT等のevidenceとの差異が少ないものもあると考えたからである。
結果と考察
1)データ構造 機器のevidenceとして求められる内容を検討し、次の項目とした。a.機器の適用した疾病名、b.診断機器の場合は診断能力、c.治療機器の場合は治療能力、d.安全性・信頼性、e.患者QOL、f.コストベネフィット これらの各項目はさらに細分化された。なお、これらの項目
は医療機器の技術評価(Technology Assessment)の評価項目と一致するものとした。2)検索フィルター 大量のRCT情報の中から上記の17種の文献検索結果の中から、各内容項目(a~f)を満足する検索キーワードを検索フィルターとして用いた。3)予備調査結果(植込み型心臓ペースメーカ) 検索された論文数は相当に多いが、データ項目a~fを埋める内容は乏しく、かなりの歯抜け状態となることが明らかとなった。4)循環器系医療機器17種の調査結果 RCTデータとして検索の結果、全体数は838件で、96年以降からまとめると96.1.1以降は503件、97.1.1以降は428件、98.1.1以降は345件、99.1.1以降は264件となった。実際の調査は96年代までとし全数503件について調査した。機種毎に整理した結果、データベースの各項はデータの存在しない箇所が非常に多いものとなった。しかし、適用疾病名及び診断能力或いは治療能力の欄はそれぞれしかるべきevidenceに基づく結果がまとめられた。ただし、信頼性、安全性に関する記述はなかった。しかるべき診断をつけることができ、また治療することができた事実に基づいたEBMデータであるので各論文が対象とした数自体から機器の不具合例を除いた対象数が信頼性、安全性の指標と考えるべきである。5)データベースへの収載整理 データベースに収載する具体的内容を上述の調査結果から結論づけ、入力可能な形に整理した。各a~fの内容は小項目に分けて短い文書説明とした。また、その内容の根拠となった文献を検索できる形で収載することとした。6)治験データの収集整理 新規医療機器として厚生労働省に対する申請をした際に添付した臨床試験データは概ね学術雑誌に掲載されたはずであるが、製造販売権の有する企業側では古いものについては判らなくなっており治験データに達成する確立が低かった。考察すると、医療機器毎のRCTに基づくevidence情報の収集を行った結果、適用疾病名や診断・治療の能力に関するデータがある程度得られた。しかし患者QOL、信頼性、コストベネフィットに関するデータは乏しかった。ただし信頼性、安全性はRCTデータとなった時点である程度担保されていたものと解釈される。またデータ構造、その内容項目の詳細については妥当と考えられ、具体的にインターネットデータベースへ展開しえる状況に到達した。しかし次の様な検討課題のあることも指摘することができ、今後調査を重ねるべき点と考えている。1)医療機器の安全性、信頼性だけを扱ったRCTデータがないことに対し、その機器を用いたRCTデータの中に機器に起因する不具合事例、回収事例の有無を調査し、データ化する必要がある。2)適用疾病名称はリストアップすることができたが、その重篤度については論文を精査する必要がある。3)予想した以上にRCTデータが多く、その処理にはデータマイニングの様な自動化検出ソフトが必要である。4)EBMのデータレベルとしてはRCTから1例報告まで存在する。医療機器としてはRCT以外のevidenceに基づいても留意した検討が必要ではないかと考えられる。その意味で、承認申請時の治験データを充分調査し、RCTデータとの比較検討を行うことも必要である。5)医療機器の疾病横断的評価の活用法に関する具体的事例を提示し、本データベース化の内容の有用性、活用方法についても検討する必要がある。6)本年度は循環器系の医療機器を中心に行ったが、その専門家の中にも意見の違いがあることがあり、本データベース化推進には分野毎の協力者をもう少し拡大し、コンセンサスを得ることも重要であると考えられた。
結論
医療機器毎の適用疾患横断的なevidence調査を行い、そのデータベース化の基礎情報を収集した。EBMデータの中からRCTによるevidenceのみを対象として、まず循環器系医療機器の17種を調査した結果(全503文献)、機器固有の内容に関するevidenceをある程度明瞭にし、蓄積し得た。また、データベース化の構造も決定しデータベース化の具体的見通しを得た。

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