療護施設における電子情報を用いた個別支援のあり方に関する基礎研究

文献情報

文献番号
200100358A
報告書区分
総括
研究課題名
療護施設における電子情報を用いた個別支援のあり方に関する基礎研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
三澤 昭文((福)全国社会福祉協議会・全国身体障害者施設協議会)
研究分担者(所属機関)
  • 小野光男(ときわ台ホーム)
  • 山西辰雄(るりこう園)
  • 原久生(こひつじの苑)
  • 山田美智子(富士ロジテック/東海大学短期大学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、身体障害者療護施設の個別支援体制の再構築を図るため平成12年度に全国社会福祉協議会・全国身体障害者施設協議会が開発した「療護施設個別生活支援計画書」をベースに、個別支援体制をスムーズに障害者施設に導入していくために「電子情報」を用いた個別支援のあり方に関する基礎研究を目的とした。
研究方法
この研究においては、「(1)身体障害者療護施設における電子化の取り組み状況の把握」「(2)電子化に向けたモデルシステムの構築の研究」「(3)アセスメント項目とケアプランの関連性の研究」「(4)実地検証に基づくモデルシステムの修正(システムの構築)」を研究テーマとした。平成13年度の事業の1つとして、「身体障害者療護施設における電子化の取り組み状況の把握」を目的に、電子化の現状と個別支援計画(ケアプラン)の作成状況のアンケート調査を実施した。方法は、全国身体障害者施設協議会が主催した第1回「療護施設個別支援計画策定研修会」に参加した療護施設245施設を対象に実施した。設問は、次のとおり。①個別支援計画(ケアプラン)の作成状況、②アセスメントシートの使用状況、③ケアプラン作成ソフト使用状況、④ソフト情報。
そしてこれをふまえ、「電子化に向けたモデルシステムの構築の研究」を行った。具体的には、打合せ会を通じて、①何のために電子化が必要か、何を電子化すべきか、②どのような帳票類が必要か、③アセスメント項目をどのようにカテゴライズすべきか、などを検討したうえで、モデルシステムの試作を作成した。これを、3施設からそれぞれ2人の利用者を選び(計6名)、実際に試作品を使用して、アセスメントからケアプランの作成までの実施検証を行った。
結果と考察
(1)身体障害者療護施設における電子化の取り組み状況の把握
ケアプランを作成している療護施設が171施設、全体の70%あり、障害保健福祉分野における利用者と事業者との利用契約制度、そして国による支援費制度を前提として具体的かつ総合的な個別生活支援計画が作成し始めていることがわかる。
また、アセスメントシートを使用してケアプランを作成している施設はプラン作成施設の63%、107施設であった。また、ケアプラン作成施設171施設のうちでプラン作成の際にコンピュータソフトを使用している施設が6施設であった。介護保険の手続き過程の一環としての「ケアプラン」、あるいはそれ以前から老人保健福祉の分野で日本でも広く使用されている米国ナーシングホームのMDS式ケアプラン、アセスメントの要領がソフト化されてきているのに対するほどに、障害保健福祉の分野での情報不足、あるいは研究と開発の未熟性を感じざるを得なかった。ケアプランは多くの施設で作成しているが、ソフトはほとんど使用しておらず、使い勝手のよいソフトの開発が急務であることが認識された。
(2)電子化に向けたモデルシステムの構築の研究
実地検証を終えた施設に対し、システムの有効性に関する意見、システム運用体制に関する意見、パソコンに対する慣れに関する意見、システム機能の不足に関する意見、帳票の内容に関する意見を聞いた。
その結果、職員間で利用者情報の整理・共有を行なうことにより、本人の課題やニーズが抽出しやすくなり、また業務の統一も図れサービスの向上に役立つと思われるが、一方、パソコン入力になれていない人の為のユーザーインターフェースや機能追加の検討が必要であったりと、第2次検証に向け、課題が明確になった。
結論
(1)身体障害者療護施設における電子化の取り組み状況の把握に関する研究として、①療護施設におけるケアプラン作成の意欲は大きい、それだけにケアプランの中身や方法を吟味し、それを提示するソフトを提供する必要性が高い。②療護施設においてアセスメントシートを使用してケアプランを作成することの意味や意義を実践的に知っている施設が過半数を超えている。使用しやすい、しかもケアプランに連動するアセスメントシートが求められているし、そのためにソフトが果たす役割は大きい。③高齢者用ソフトを活用する、あるいはそれを障害者用に改善する例は見られるが、障害者専用ソフトは研究され、十分に開発されているとはいえない。当然、社会的自立や社会参加等に焦点を集めたアセスメントの必要性がある。それを含めて、なにをアセスメントするか、どのように特記(書き込み)するかに焦点を定めたソフトが必要であると考えられる。
(2)電子化に向けたモデルシステムの構築の研究の結果、試行調査結果をふまえた電子化にあたってのコンピュータシステムに必要な要件として、特に介護現場における記録管理は入力が簡単であること、マウス、キーボード以外の入力インターフェースも備えていること、アセスメントの履歴管理が行なえること、施設オリジナル項目を容易にアセスメントに追加できること、支援計画の履歴管理が行なえること、介護部門に個々の支援計画に沿った業務実施書の交付が行なえること、個々の支援計画に対する報告書や実績の集計ができること、などが明らかとなった。

公開日・更新日

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更新日
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