パス法による臨床経過の医療管理手法の有用性の研究

文献情報

文献番号
200001088A
報告書区分
総括
研究課題名
パス法による臨床経過の医療管理手法の有用性の研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 俊子(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山嵜絆(済生会中央病院)
  • 山田ゆかり(慶応大学医学部医療政策)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
3,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
クリティカル・パスという臨床経過に基づく医療管理手法の使用が、臨床経過、特に経過に対して有効であるかという検証。
研究方法
クリニカルパスを活用した変形性股関節症:股関節全置換術における医療・看護ケアにおける患者のアウトカムを検証することを目的にクリニカルインディケーター(臨床評価指標)の抽出を行った。またクリニカルインディケーターに関連する影響要因、施設間でクリニカルインディケーターに基づいてアウトカム比較から、今後の医療・看護ケアの改善策について検討を行った。またパスを用いた患者に対して満足度調査を行った。さらに、パスを日米比較して、医療ケア介入の相違を比較した。
結果と考察
S病院はN46、平均年齢64.36±10.40歳、入院日から手術日までの平均日数は8.61±5.78日、手術日からリハビリ開始までの平均日数は23.26±9.30日、抗生剤使用日数7.26±1.69日、リハビリの平均日数は26.70±10.45日、平均在院日数は65.17±18.84日であった。スペアマンの相関係数を算定で、在院日数と高い相関がみられたのはリハビリ日数0.726(p<.000)、中等度の相関がみられたのは入院日からリハビリまでの開始日数0.591(p<.000)であった。在院日数が長期化するとリハビリ日数も増加して、リハビリの開始が早いほど、退院日数が短縮しているという傾向がある。手術日からリハビリ開始日までの日数と手術時間の相関係数は0.471(p<.001)、手術時間とリハビリ日数との相関係数は0.472(p<.001)であった。手術時間が長期化するとリハビリ開始も遅れ、リハビリ日数も長期化する傾向にある。K病院でも入院から手術日までの日数、手術日からリハビリ開始日までの日数、リハビリ日数、出血量、在院日数の各変数の関連を検討するためにスペアマンの相関係数を算定した。在院日数と相関がみられたのは、手術日からリハビリ開始日までの日数(0.60、P<.01)と手術時間と抗生剤使用日数(0.46、P<.05)であった。S病院とK病院の比較を行ったところ、手術日からリハビリ開始までの日数、リハビリ日数に有意差が認められた(p<.000)。手術日からリハビリ開始までの日数においてはK病院の方が約8日間短く、リハビリ日数においてもK病院の方が約4日間短いことが認められた。これはシステム的な特性が大きく影響するということであった。医療ケアの標準化としては、システムとしての施設特性の部分が大きいことが推察された。患者満足度に関しては、医療スタッフからの説明が多いほど満足度が高くなる傾向にあった。さらに、日米のパスを比較したときに、リハビリ開始は10日間以上の差異があり、階段歩行訓練は4週間の開きがある。これは術式の相違というより、人的資源などのシステムとしての問題が大きくあるようであった。
結論
医療管理手法としてのクリニカルパスは医療ケアの標準化が医療の適正を示すので、パスの導入効果を測定するには、医療ケアの標準化が必要である。医療ケアの標準化にはEBMが必要であるが、現在の病院間のbenchmarkでは、リハビリ開始までの日程、入院から手術まで日数のばらつきは、システムとしての施設特性が大きいので、これは病院として戦略を立てる部分となる。

公開日・更新日

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更新日
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