健康づくりの成果に関する客観的評価法の確立に関する-あいち健康プラザにおける新しい健康度評価-

文献情報

文献番号
200000873A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりの成果に関する客観的評価法の確立に関する-あいち健康プラザにおける新しい健康度評価-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
井形 昭弘(あいち健康の森健康科学総合センタ-)
研究分担者(所属機関)
  • 該当なし
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
愛知県では平成9年10月28日に21世紀の長寿社会における健康づくりの拠点として、あいち健康の森健康科学総合センター(通称 あいち健康プラザ)をオープンし、1次予防時代の具体的な健康づくりの手法として、「健康度評価」と「健康づくり教室」の二つの主要な事業を展開している。このたびの研究では、これら事業のうち、健康度評価簡易コースの受検者および1日型健康づくり教室の受講者を調査研究の対象として、健康度評価および健康づくり教室の方法、内容の妥当性と健康づくりへの有効性を評価することを目的とする。また、健康度評価を中心とした健康づくり事業のマニュアルを刊行する。
研究方法
(1)健康度評価簡易コースの受検者23,982名の健康度評価の結果から、生活習慣病予防の観点から個々の生活習慣を客観的に評価することのできる問診項目、内容を見直し、精選するために、生活習慣と健康状態、検査測定データとの関連性の分析を行なった。
(2)1日型健康づくり教室の受講者3,322名の健康度評価の結果から、肥満、高血圧、高脂血、高血糖等のリスクと健康状態、生活習慣の関連についての分析検討を行なった。また、教室の前後における生活習慣、およびリスクの改善状況についても検討した。
(3)健康度評価Bコースの受検者1,360名の結果から、歯、口腔の状態と生活習慣との関連性を分析検討した。
(4)健康度評価Aコース、Bコースの初回受検者4,219名の自転車エルゴメーターによる推定最大酸素摂取量の測定方法と評価について検討した。また、その他の体力要素の測定方法と評価についても検討を加えた。
(5)あいち健康プラザの健康度評価の受検者、および健康づくり教室の受講者2,259名と比較をするコントロール群394名を対象に「健康づくりの意識、行動に関する調査」を実施し、健康づくりの有効性に関する検討を行なった。
結果と考察
(1)健康状態、生活習慣、検査測定、この3要素に間に見られる関連性を分析することによって、健康状態と関連の深い生活習慣やBMIや体力と関連の深い生活習慣等に関する知見が得られ、問診の項目、内容、設問数は全体のバランスがよいこと、健康状態や体力等との関連性が明らかなこと、生活習慣を客観的に評価できること、問診の結果から健康づくりの処方箋に関するアドバイスに有用なこと等の条件を満たすことが必要と考えられる。
(2)1日型健康づくり教室の受講者の34%に現病歴があり、検査データの異常率も加齢とともに高くなっている。また、有リスク者には動悸、胸部痛、間接痛、咳痰が気になる等の自覚症状が多く見られた。20~30代の女性には、「やせ」の割合が高く、貧血傾向、疲労抵抗力が弱い低体力傾向が、中年以降の女性で脂質代謝異常、男性で糖代謝異常が増加している。また、肥満者には、食習慣、食行動、歯磨き習慣等に望ましくない傾向が見られた。教室受講後の生活習慣の改善、リスクの改善状況については、栄養のバランス、食事の量の腹八分目、定期的な運動、歯磨き等に習慣の改善が見られた。リスクの改善についても、拡張期血圧、中性脂肪、栄養充足率等に改善が認められた。生活習慣との関連では、食事または運動のみの改善より、食事と運動の両面に改善のある場合の方が検査データの改善項目が多かった。
(3)歯、口腔状態と自覚症状、生活習慣との関連では、歯、口腔状態の健康なものの咬合力は平均827.9Nに対し不健康なものの咬合力は平均250.9Nと低くかった。また、歯周病の進行状態を表す「CPIコード」と自覚症状、生活習慣に関連性が認められ、8020運動や歯周病予防も広く生活習慣病の予防という認識にたった取組み、指導の重要性が確認された。
(4)全身持久性は、健康状態に関わる体力要素として重視されている。自転車エルゴメーターの最大下運動負荷テストによる推定最大酸素摂取量の測定は、安全性の高い方法として普及が期待されている。今回の研究では、その推定値が加齢による全身持久性の低下を十分に反映してないことが明らかとなった。原因として、リスクに対する安全性の確保、下肢の疲労等で負荷時の心拍数が推定最高心拍数(220-年齢)の70%にも達しない場合があること、安静心拍数と負荷時の心拍数による1次回帰式から推定値を算出しているが、安静時心拍が高くなったり、負荷時の心拍数が1点しか測定できなかった等があげられる。その他の体力の測定方法、評価については、いくつかの種目の測定方法と評価基準を見直す必要がある。
(5)健康度評価の受検者、および健康づくり教室の受講者は、コントロール群に比べて、健康に関する知識量が多く、健康づくりをよく実行している。また、日ごろの生活習慣においても、運動、栄養、休養の面で健康的な習慣がよく身についている。健康度評価や健康づくり教室が健康づくりの動機づけとしての役割を果たしていることが伺える。医療行動に関しては、健康づくり教室の受講者に高率で有リスク者が含まれていることから単純に比較ができないが、通院日数は明らかに対象群が高い結果となった。薬の購入、ここ3年間の通院日数に変化については差が認められなかった。今後の追跡調査が必要と思われる。
結論
あいち健康の森健康科学総合センターが平成9年11月のオープン以来、21世紀における生活習慣病の1次予防をめざして提案している健康度評価、および健康度評価と実践指導からなる健康づくり教室は、平成13年1月現在、健康度評価の受検者数は5万8千名を超え、健康づくり教室の受講者数はのべ1万1千名に達した。3カ年間、この健康度評価に関する膨大なデータと受検、受講者の状況を分析検討することによって、健康度評価方法の妥当性の評価検証と健康度評価、および健康づくり教室の健康づくりへの有効性の評価を目的に研究をすすめてきた。健康度評価の方法は、2次予防の総合健診の経験がある医学的検査を除いて、生活習慣を評価する問診、体力の評価と運動処方に必要なデータを得るための体力測定の方法、栄養、休養の評価方法と処方に必要なデータの収集方法等、いずれも十分な根拠をもって提案できるものはまだ確立されていない中で、これらに関する貴重な多くの知見が得られ、同時に健康度評価を中心とした健康づくりの有効性に関しても確信が得られた。また、研究成果を刊行物「あいち健康プラザにおける1次予防のための健康度評価と実践指導」として刊行することとなった。昨年度、厚生省が21世紀の健やかな長寿社会の創造をめざして策定した「健康日本21」の推進に少しでも貢献できることを期待している。

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