文献情報
文献番号
200000164A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類を用いた老人病モデルの開発と長寿科学研究基盤高度化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(東京大学大学院)
研究分担者(所属機関)
- 中村紳一朗(日本獣医畜産大)
- 小山高正(日本女子大)
- 村山美穂(岐阜大)
- 吉田高志(国立感染研)
- 鳥居隆三(滋賀医科大)
- 鈴木通弘(予防衛生協会)
- 寺尾恵治(国立感染研)
- 国枝哲夫(岡山大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
44,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
21世紀高齢社会の到来により様々な老人病が増加する、なかでも痴呆症、パーキンソン病、感覚器疾患、糖尿病など行動障害や高次脳機能障害を伴う疾患の増加は高齢者の孤立化をもたらすだけではなく、社会的な負担も著しく増大する。こうした老人病はその病因が複雑で少なくとも加齢に伴う生体機能の減退、晩発性遺伝子発現、環境因子、個体の病歴などが複雑に関連する疾病である。従ってこうした老人病の発症機序を解析したり、早期診断、安全で有効な治療法を確立するためには長寿で、生理・代謝機能、脳・神経系の構造と機能がヒトに類似する霊長類が適している。本研究班は通常用いられる齧歯類モデルでは発現しにくい霊長類に特有な老人病についてサル類を対象として自然例、実験モデルで解析を進めヒト老人病の有効な診断、治療法の開発研究を進めることが目的である。また長寿科学研究の研究資源開発としてエイジングファームの確立とその有効利用の拡大、cDNAライブラリー作成及びカニクイザル遺伝子マッピング等を行い研究基盤を高度化することも目指している。
研究方法
①老人斑形成機序に関する研究:Aβの分子種の解析、胎仔から老齢期までのカニクイザル脳組織のPS1の局在および蛋白発現量の加齢に伴う変化を検索してきた。今年度はAβの分泌に関わるとされているPS2の胎仔から老齢期までの脳組織中の局在および加齢に伴う変化を免疫組織化学的および生化学的に検索した。
②高次記憶学習機能評価:本研究では記憶獲得段階から短時間の遅延を含む遅延場所型非見本合わせ課題を用いて、空間課題の獲得における加齢の影響を検討した。さらに一度獲得した課題の呈示条件を操作し、課題に共通した情報に対する応用性について年齢間で検討した。
③神経伝達物質関連遺伝子多型:ヒトの性格や脳機能障害に関連するとされている脳内神経伝達物質関連遺伝子についてサル類を用いて解析し、これらの遺伝子型とサルの性格や高齢化に伴う行動の変化との関連を明らかにすることを目的としている。本年度18種のサル類でドーパミントランスポーター、セロトニンレセプター、コレシストキニン遺伝子の多型領域をPCR増幅し塩基配列を決定した。
④カニクイザルの肥満研究:ヒトでは糖尿病・高血圧症・動脈硬化症・狭心症等の生活習慣病で最も大きな危険因子として肥満が注目され、血糖値、中性脂肪、コレステロール値等が指標として用いられている。本研究ではこれまで二波長X線密度測定装置による全身測定で、%Fat値が雌カニクイザルの肥満指数として優れていることを報告した。今年度は体重を指標として雌カニクイザルでの肥満の発生状態を調査し、体重と血液学的、血清生化学的測定値との関係について解析した。
⑤実験的粥状動脈硬化症モデル:昨年度に引き続き動脈硬化性病変の発症にエストロゲン及びエイコサペントエン酸がどの様に関与するかを検索し、リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素が動脈硬化症の指標となり得るか否か検討した。
⑥老年性眼疾患モデルの開発:サル類の眼科領域疾患モデル開発のための基礎研究として、慢性腎性網膜症が認められた症例について、病変の発生前から発生後にわたる眼底像の変化、発症後の蛍光眼底造影像、網膜活動電位等の検討を行った。またカニクイザルの眼を用いた緑内障治療薬の作用機序解明に関する研究を進めた。
⑦網膜黄斑変性症の遺伝学的解析:本年度はヒトの特定の染色体に位置づけられているマイクロサテライト遺伝子座と対応するマイクロサテライトDNAを用いてカニクイザルの遺伝学的連鎖地図を構築し,ヒトとカニクイザルの染色体の対応を明らかとすること,これらの用いた連鎖解析により,網膜黄斑変性の原因遺伝子の染色体上の位置を明らかにすることを試みた。
⑧老化と免疫機能の変化:正常カニクイザルで胸腺退縮時に末梢血CD4+/CD8+ T細胞(DP細胞)が増加すること、DP細胞は加齢に伴い出現する胸腺外分化T細胞であることを明らかにしてきた。今年度はDP細胞の由来を明らかにする目的で、末梢血から単離精製したCD4T細胞、CD8 T細胞とDPのT細胞レセプターV?ファミリー遺伝子の塩基配列を比較し、また細胞レベルでの老化を解析する方法としてテロメア長をフローサイトメトリーで解析する技術を確立し、末梢血T細胞のテロメア長の加齢に伴う変化を検索した。
②高次記憶学習機能評価:本研究では記憶獲得段階から短時間の遅延を含む遅延場所型非見本合わせ課題を用いて、空間課題の獲得における加齢の影響を検討した。さらに一度獲得した課題の呈示条件を操作し、課題に共通した情報に対する応用性について年齢間で検討した。
③神経伝達物質関連遺伝子多型:ヒトの性格や脳機能障害に関連するとされている脳内神経伝達物質関連遺伝子についてサル類を用いて解析し、これらの遺伝子型とサルの性格や高齢化に伴う行動の変化との関連を明らかにすることを目的としている。本年度18種のサル類でドーパミントランスポーター、セロトニンレセプター、コレシストキニン遺伝子の多型領域をPCR増幅し塩基配列を決定した。
④カニクイザルの肥満研究:ヒトでは糖尿病・高血圧症・動脈硬化症・狭心症等の生活習慣病で最も大きな危険因子として肥満が注目され、血糖値、中性脂肪、コレステロール値等が指標として用いられている。本研究ではこれまで二波長X線密度測定装置による全身測定で、%Fat値が雌カニクイザルの肥満指数として優れていることを報告した。今年度は体重を指標として雌カニクイザルでの肥満の発生状態を調査し、体重と血液学的、血清生化学的測定値との関係について解析した。
⑤実験的粥状動脈硬化症モデル:昨年度に引き続き動脈硬化性病変の発症にエストロゲン及びエイコサペントエン酸がどの様に関与するかを検索し、リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素が動脈硬化症の指標となり得るか否か検討した。
⑥老年性眼疾患モデルの開発:サル類の眼科領域疾患モデル開発のための基礎研究として、慢性腎性網膜症が認められた症例について、病変の発生前から発生後にわたる眼底像の変化、発症後の蛍光眼底造影像、網膜活動電位等の検討を行った。またカニクイザルの眼を用いた緑内障治療薬の作用機序解明に関する研究を進めた。
⑦網膜黄斑変性症の遺伝学的解析:本年度はヒトの特定の染色体に位置づけられているマイクロサテライト遺伝子座と対応するマイクロサテライトDNAを用いてカニクイザルの遺伝学的連鎖地図を構築し,ヒトとカニクイザルの染色体の対応を明らかとすること,これらの用いた連鎖解析により,網膜黄斑変性の原因遺伝子の染色体上の位置を明らかにすることを試みた。
⑧老化と免疫機能の変化:正常カニクイザルで胸腺退縮時に末梢血CD4+/CD8+ T細胞(DP細胞)が増加すること、DP細胞は加齢に伴い出現する胸腺外分化T細胞であることを明らかにしてきた。今年度はDP細胞の由来を明らかにする目的で、末梢血から単離精製したCD4T細胞、CD8 T細胞とDPのT細胞レセプターV?ファミリー遺伝子の塩基配列を比較し、また細胞レベルでの老化を解析する方法としてテロメア長をフローサイトメトリーで解析する技術を確立し、末梢血T細胞のテロメア長の加齢に伴う変化を検索した。
結果と考察
①老人斑形成機序に関する研究:PS2は主に神経細胞や神経網に存在する点では、PS1とほぼ一致していたが、加齢に伴う発現の増強が見られなかった点でPS1とは著しく異なっていた。また免疫組織学的検索の結果から老人斑形成におけるPS2の関わりはPS1よりも弱いことが推測された。
②高次記憶学習機能評価: カニクイザルで加齢に伴う高次認知機能の低下を評価する系を確立するため、WGTA法と指迷路法を用いて検討した。課題の獲得には年齢間での顕著な差がみられた。老齢ザルでは獲得段階から遅延時間が挿入された「位置再認課題」の学習能力は低下している。しかし、遅延をともなわない位置課題では獲得に差がないことから、記憶の負荷が老齢ザルの課題獲得を困難にした要因であると考えられる。エラーボックス付き4段迷路課題では老若に差はなかったので、遅延時間をともなう指迷路に改良することとした。
③神経伝達物質関連遺伝子多型:サル類におけるDAT1、5-HTR2A、CCK遺伝子のPCR増幅に成功した。DAT1遺伝子の反復回数は種間変異が大きく、類人猿では1-2回反復型が、テナガザルは多型性に富んでおり5-13回型が、カニクイザルでは12回型を持つ遺伝子がほとんどであった。遺伝子の相同性は高く、ヒト-カニクイザル間では81.8%であった。5-HTR2A遺伝子の多型ではヒトではC対立遺伝子は約60%存在するが、カニクイザルではすべてC型であった。CCK遺伝子多型部位では、ヒトでC、T対立遺伝子の頻度はおよそ6:4であり、類人猿、テナガザルの塩基配列の解析では、いずれもC型であった。遺伝子の相同性は5-HTR2Aでヒト-カニクイザル間92.1%、CCKでヒト-ゴリラ間98.9%といずれも高かった。
④カニクイザルの肥満研究:霊長類センターコロニー中で肥満個体の占める割合は23.2%、境界型が12.3%、正常は64.5%であった。肥満個体は6歳齢から7歳齢になるところで一挙に約15%へと増加する。この増加は集団の初産年齢に対応し妊娠・分娩・保育にともなう母体の生理的変化の反映であろうと推測された。成熟・老齢に到るエイジングファームの雌カニクイザルの体重と血液性状、肥満関連ホルモンについて測定し、重回帰分析を行ったところ、肥満と脂質代謝・糖代謝、多血症との関係が実証された。
⑤実験的粥状動脈硬化症モデル:卵巣摘出した雌ニホンザルにコレステロール食と共にエストロゲンを投与した結果、血中コレステロール、apolipo-Bの増加抑制、apolipo-A1、HDLの減少抑制がみられ、6カ月を経過してもアテロームの形成は極めてわずかでり、エストロゲンが抗動脈硬化作用を有することを確認できた。動脈硬化症を作成した後、エイコサペントエン酸を投与した結果、血中の脂質は著明な改善が見られたが、動脈硬化病変の進展を抑制する効果はなかった。一方、血中リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素はエストロゲンを投与し、病変進展に抑制が見られた個体において値の増加が見られたことから、動脈硬化病変の進展抑制マーカーになることが示唆された。
⑥老年性眼疾患モデルの開発:慢性腎性網膜症の眼底撮影では左右眼底全体に綿花様白斑、眼底出血、中心窩の周りに放射状に硬性白斑、網膜動脈の狭細化が観察された。ICG、FAGでは、病変部に一致して蛍光色素の漏出、眼底出血部位に一致して低蛍光が観察された。ERGでは錐体系および杆体系反応ともに正常範囲内であった。本症例はヒト慢性腎性網膜症の診断や治療に対する動物モデルとなり得ることが明かとなった。また、実験的緑内障モデルの治療研究では治療薬のイソプロピルウノプロストンとラタノプロストの眼内薬物動態を検索し、上記プロスタグランデイン誘導体点眼薬の重要な副作用である虹彩などへの色素沈着の機序を解明した。
⑦網膜黄斑変性の遺伝学的解析:本研究の結果、カニクイザルの網膜黄斑変成の原因遺伝子は第1染色体上に存在することが示唆された。ヒトの第1染色体にはカニクザルの疾患と類似した病態を示す遺伝性の網膜黄斑変性の原因遺伝子であるSTGD1遺伝子が存在することが知られているが、今回、原因遺伝子と連鎖が見られた領域はSTGD1遺伝子が存在する領域とは異なってた。しかし、この領域にはヒトの網膜色素変性18型の原因遺伝子であるRP18遺伝子が存在していた。両疾患はともに常染色体優性の遺伝様式をとり、網膜の変成を主な症状とする遺伝性の眼疾患であることから、カニクイザルの網膜黄斑変成とRP18遺伝子との関連が考えられた。
⑧老化と免疫機能の変化に関する研究:SSCP法で検出されるDP細胞のT細胞レセプターVβファミリーに特異的なバンドの塩基配列をCD4sp細胞のそれと比較した結果、両者の塩基配列が完全に一致したことからDP細胞とCD4spとが同一の細胞系列に属するT細胞であると思われた。またFlow FISH法で測定したテロメア長はSouthern blottingで測定した長さと高い相関を示すとともに、加齢に伴って有意に短縮した。両者の回帰式からカニクイザル末梢リンパ球のテロメア長は一年あたり平均63bp短縮することが明らかになった。
②高次記憶学習機能評価: カニクイザルで加齢に伴う高次認知機能の低下を評価する系を確立するため、WGTA法と指迷路法を用いて検討した。課題の獲得には年齢間での顕著な差がみられた。老齢ザルでは獲得段階から遅延時間が挿入された「位置再認課題」の学習能力は低下している。しかし、遅延をともなわない位置課題では獲得に差がないことから、記憶の負荷が老齢ザルの課題獲得を困難にした要因であると考えられる。エラーボックス付き4段迷路課題では老若に差はなかったので、遅延時間をともなう指迷路に改良することとした。
③神経伝達物質関連遺伝子多型:サル類におけるDAT1、5-HTR2A、CCK遺伝子のPCR増幅に成功した。DAT1遺伝子の反復回数は種間変異が大きく、類人猿では1-2回反復型が、テナガザルは多型性に富んでおり5-13回型が、カニクイザルでは12回型を持つ遺伝子がほとんどであった。遺伝子の相同性は高く、ヒト-カニクイザル間では81.8%であった。5-HTR2A遺伝子の多型ではヒトではC対立遺伝子は約60%存在するが、カニクイザルではすべてC型であった。CCK遺伝子多型部位では、ヒトでC、T対立遺伝子の頻度はおよそ6:4であり、類人猿、テナガザルの塩基配列の解析では、いずれもC型であった。遺伝子の相同性は5-HTR2Aでヒト-カニクイザル間92.1%、CCKでヒト-ゴリラ間98.9%といずれも高かった。
④カニクイザルの肥満研究:霊長類センターコロニー中で肥満個体の占める割合は23.2%、境界型が12.3%、正常は64.5%であった。肥満個体は6歳齢から7歳齢になるところで一挙に約15%へと増加する。この増加は集団の初産年齢に対応し妊娠・分娩・保育にともなう母体の生理的変化の反映であろうと推測された。成熟・老齢に到るエイジングファームの雌カニクイザルの体重と血液性状、肥満関連ホルモンについて測定し、重回帰分析を行ったところ、肥満と脂質代謝・糖代謝、多血症との関係が実証された。
⑤実験的粥状動脈硬化症モデル:卵巣摘出した雌ニホンザルにコレステロール食と共にエストロゲンを投与した結果、血中コレステロール、apolipo-Bの増加抑制、apolipo-A1、HDLの減少抑制がみられ、6カ月を経過してもアテロームの形成は極めてわずかでり、エストロゲンが抗動脈硬化作用を有することを確認できた。動脈硬化症を作成した後、エイコサペントエン酸を投与した結果、血中の脂質は著明な改善が見られたが、動脈硬化病変の進展を抑制する効果はなかった。一方、血中リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素はエストロゲンを投与し、病変進展に抑制が見られた個体において値の増加が見られたことから、動脈硬化病変の進展抑制マーカーになることが示唆された。
⑥老年性眼疾患モデルの開発:慢性腎性網膜症の眼底撮影では左右眼底全体に綿花様白斑、眼底出血、中心窩の周りに放射状に硬性白斑、網膜動脈の狭細化が観察された。ICG、FAGでは、病変部に一致して蛍光色素の漏出、眼底出血部位に一致して低蛍光が観察された。ERGでは錐体系および杆体系反応ともに正常範囲内であった。本症例はヒト慢性腎性網膜症の診断や治療に対する動物モデルとなり得ることが明かとなった。また、実験的緑内障モデルの治療研究では治療薬のイソプロピルウノプロストンとラタノプロストの眼内薬物動態を検索し、上記プロスタグランデイン誘導体点眼薬の重要な副作用である虹彩などへの色素沈着の機序を解明した。
⑦網膜黄斑変性の遺伝学的解析:本研究の結果、カニクイザルの網膜黄斑変成の原因遺伝子は第1染色体上に存在することが示唆された。ヒトの第1染色体にはカニクザルの疾患と類似した病態を示す遺伝性の網膜黄斑変性の原因遺伝子であるSTGD1遺伝子が存在することが知られているが、今回、原因遺伝子と連鎖が見られた領域はSTGD1遺伝子が存在する領域とは異なってた。しかし、この領域にはヒトの網膜色素変性18型の原因遺伝子であるRP18遺伝子が存在していた。両疾患はともに常染色体優性の遺伝様式をとり、網膜の変成を主な症状とする遺伝性の眼疾患であることから、カニクイザルの網膜黄斑変成とRP18遺伝子との関連が考えられた。
⑧老化と免疫機能の変化に関する研究:SSCP法で検出されるDP細胞のT細胞レセプターVβファミリーに特異的なバンドの塩基配列をCD4sp細胞のそれと比較した結果、両者の塩基配列が完全に一致したことからDP細胞とCD4spとが同一の細胞系列に属するT細胞であると思われた。またFlow FISH法で測定したテロメア長はSouthern blottingで測定した長さと高い相関を示すとともに、加齢に伴って有意に短縮した。両者の回帰式からカニクイザル末梢リンパ球のテロメア長は一年あたり平均63bp短縮することが明らかになった。
結論
霊長類を用いた自然発症老人病モデル及び実験モデルの開発を行うとともに、モデルを用いた治療研究、遺伝子解析等広範な研究を展開した。老人斑形成機序に関してはPS2の発現様式と加齢の関係を明らかにした。また老齢ザルの高次認知機能の測定に関してはWGTAシステムを用いた評価系で記憶獲得に加齢による機能差が示されたことは興味深い。霊長類の神経伝達物質のレセプター遺伝子の多様性に関しては系統発生と単純には一致せず興味ある結果が得られた。サル類の肥満研究では成長に伴う肥満の出現パターンが明らかにされた。動脈硬化症モデルではエストロジェンの治療効果が明確にされた。また網膜変性、緑内障モデルは着実に研究が展開され、特に基盤研究として取り組んできたカニクイザルゲノムの遺伝子連鎖解析で、わが国で発見されたカニクイザルの家系性網膜黄斑変性症が第1染色体のマーカーと連鎖する可能性が指摘されたのは大きな成果である。免疫系の特性解析ではリンパ球のテロメアー長を測定する方法を新たに開発し、また懸案となっているDP細胞の起源が次第に明らかにされつつある。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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