介護保険導入による市区町村の保健福祉サービスの変容に関する行政学的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900834A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険導入による市区町村の保健福祉サービスの変容に関する行政学的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 健文(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年4月からの介護保険の実施により全国の市区町村の保健・福祉サービスがどのように変化していくかをプロスペクティブに調査し、行政学的に分析研究する。平成11年度はその事前調査として市区町村の現行の保健・福祉サービスと介護保険導入への対応を明らかにする。
研究方法
全国の全市区町村(3,238)及び東京都特別区(23)に対して質問票を送付し、その回答を分析する。
結果と考察
1,103市区町村(回答率33.8%)から回答を得た。人口規模が大きい自治体で若干回答率が高い傾向が見られたが、回答結果はほぼ全市区町村を代表していると考えられる。平成7年国勢調査の老年人口比率の平均は全市区町村20.6%、回答した市区町村19.5%で大きな違いはない。
高齢者の中の要介護者(含要支援)は、在宅では高齢者100人当たり7.72人、施設では2.97人である。人口1人当たりの衛生費は4万8千円、民生費は9万6千円である。保健事業費のそれは1万1千円、5歳未満人口1人当たり母子保健事業費は1万7千円、高齢者1人当たり老人保健事業費は1万5千円である。
市区町村の地域保健事業に関わる常勤職員の中で雇用している市区町村の割合が15%を越えるのは、保健婦(士)、看護婦(士)、准看護婦(士)、管理栄養士及び栄養士の5職種であるが、保健婦(士)についてはほとんどの市区町村で雇用されている。27.9%の市区町村には常勤の老人福祉専従保健婦(士)がいる。保健婦(士)の活動時間の割合は、母子保健事業31.2%、老人保健事業43.4%、老人福祉事業11.4%、その他14.0%である。その中でコーディネート業務は母子保健および老人保健ではそれぞれ21.2%、26.5%であるが、老人福祉では48.7%を占めている。
高齢者100人当たりの施設入所者は、特別養護老人ホーム1.6人、老人保健施設1.0人で、特別養護老人ホームの待機者は0.5人である。また高齢者100人当たりの在宅サービスの利用状況は、ホームヘルプサービス利用者3.3人、老人短期入所者2.9人、デイサービス利用者8.3人である。高齢者1人当たりの老人福祉事業費は12万8千円で、在宅要介護者1人当たりの在宅老人福祉事業費は120万8千円となる。老人福祉サービスの実利用者1人当たりの年間事業費はホームヘルプサービス37万8千円、老人短期入所22万7千円、老人デイサービス33万3千円である。
介護保険の準備に専従している常勤職員は市区町村平均5.1人で、その5分の1、1.1人が保健婦(士)である。保健婦(士)の35.8%が介護保険の準備に参画しており、要介護認定のための専従調査員約半数は保健婦(士)である。平成12年4月時点で介護保険業務に必要とされる常勤職員数は市区町村平均が7.4人で、その5分の1、1.7人が保健婦(士)であるとされている。介護保険の準備によりもっとも影響を受けた事業としては老人保健事業(40.6%)と老人福祉事業(37.7%)が上げられている。母子保健、老人保健および老人福祉事業に及ぼした影響としては、いずれにおいても常勤職員1人当たりの担当業務範囲や時間外勤務の増加を上げる市区町村が多い。また、老人福祉事業の量や質の増加を上げた市区町村も多い。
結論
本調査研究により介護保険実施直前の平成11年の全国の市区町村の保健・福祉サービスの現状と介護保険導入への対応を概ね把握することができた。今後は本調査に回答した市区町村に再度アンケートを実施し、介護保険施行後の保健・福祉サービスに対する影響等を把握するとともに、回答のなかった市区町村についても情報の収集に努めたい。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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