かかりつけ歯科医と地域医療支援病院等の連携推進に関する研究

文献情報

文献番号
199800813A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ歯科医と地域医療支援病院等の連携推進に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
坂井 剛(愛知県歯科医師会)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村長生(愛知三の丸病院歯科)
  • 竹内学(名古屋第二赤十字病院口腔外科)
  • 佐野晴男(東京都立荏原病院歯科)
  • 江面晃(日本歯科大学新潟歯学部歯科保存学I)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
モデル地域における「かかりつけ歯科医」の機能連携ニーズを明らかにし、同時に病院歯科の実態と連携にかかわる課題を把握する。その分析結果に基づき2次医療圏における「かかりつけ歯科医」と「病院歯科」の連携システムを構築するための具体的課題について検討を加える。さらに、地域医療支援病院に歯科を位置づけるにはどのような基盤整備を必要とするかを検討する。
研究方法
1.モデル地域(東京,愛知,新潟)におけるかかりつけ歯科医の支援体制および病診連携に関するアンケート調査を行い、かかりつけ歯科医の意識および連携のためのニーズを明らかにし、連携推進に関する課題について検討する。2.愛知県および新潟県にある病院歯科にアンケート調査を行い、その病院および病院歯科の現状を分析することにより地域医療支援病院における歯科設置の必要性について検討する。3.平成6年度の政府統計医療施設調査を用いて、2次医療圏ごとにおける歯科医師数の地理的分析など医療提供体制の地域格差の問題などについて検討する。
結果と考察
かかりつけ歯科医が2次医療圏で病院歯科に望む機能等については分担研究者:梅村の報告にあるがごとくである。モデル地域での比較でみるかぎり、紹介された患者のみを受け入れる地域医療支援病院が普及・拡大するためには、地域歯科医師会が協力して、かかりつけ歯科医機能の実体を確立していくことが大切な前提となる結果を示した。この前提の必要性は、新潟県と愛知県の病院歯科のアンケートの比較の詳細により分担研究者の報告にあるがごとくである。病診連携はモデル地区での調査結果からシステムとして実施することが重要である。その基盤整備の人員要件としては、病院歯科の常勤歯科医師が2名以上確保される必要がある。都道府県単位でみた、2次医療圏ごとの病院歯科設置状況の地域格差は歴然となっている。このような地域格差を補足しているのが、医科と歯科の診診連携連携であることが推測させるアンケート結果が得られた。地域医療支援病院の承認要件となっている患者の紹介率、機器の共同利用、救急医療の提供、研修の実施については、かかりつけ歯科医および病院歯科のアンケート調査において、十分な基盤整備が確保されていないことが明確になった。かかりつけ歯科医と病院歯科が連携してこれらの機能を有効に活用するには、かかりつけ歯科医が病院歯科の機能を有効に活用しながら第一線の地域医療を担う役割分担を自覚することが大切である。このためには、病院歯科での生涯研修の実施を地域歯科医師会が積極的に行う必要がある。また、かかりつけ歯科医師の連携機関としては医科診療所との連携が重要であることの実体が明らかになった。このことは、地域医療システムの構築にあたっては、医科と歯科の協力関係の確立を連携システムの上でどのように行うかが検討されるべきである。医療提供体制の見直しは、病院の規模別、機能別類型化の分析に基づき、第4次医療法改正に向けて再編の時期に入っている。規模別分析でみる限り、医科は、有床診療所から大規模病院までの機能別連続性が確保されているが、歯科はこの機能別連続性が確保されておらず、歯科診療所と大規模病院の口腔外科を主体とした機能に二極化している。今後日本の病院は、50床以下の小規模病院では外来型機能、50~299床の中規模病院では長期入院の収容型機能が、300床以上の大規模病院では短期入院での高度先端機能を重視した再編が進むと予測される。したがって、病院の歯科は、これらの病院の3つの類型化
の中で、外来型機能を主体とした中規模以下の病院歯科の機能と300床以上の病院歯科は入院機能と専門外来機能を主体とした機能再編を推進する必要がある。病院歯科は機能再編を通して、かかりつけ歯科医への支援機能を明確にしなければならないと考える。そのためには、都道府県ごとの歯科医療供給の数量的分析を行い、その医療圏に存在する病院歯科の機能や、病院歯科の設置されていない医療圏での病院や医科診療所との連携システムを構築する具体策の検討を行う必要がある。また、介護保険の導入は、在宅歯科医療のニーズを促進する方向で推移する可能性が高い。従って、歯科医療施設の機能情報を公開することも、病病・病診・診診連携のシステムネットワークを構築するためには必要であると考えられる。
結論
かかりつけ歯科医および病院歯科へのアンケート分析により、2次医療圏における機能分担の推進は連携システム化の構築を図る上でも、かかりつけ歯科医の機能を支援する上でも重要である。しかし、地域医療支援病院の承認要件である患者紹介率、機器の共同利用・救急医療の提供・研修の実施については、病院機能再編の方向性と2次医療圏での数量分析を行う中で地域医療ネットワーク化の具体化を検討する必要がある。

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