文献情報
文献番号
201927009A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックの施術の安全対策及び衛生管理手法の構築のための研究
課題番号
H30-健危-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
- 舘田 一博(東邦大学医学部・微生物・感染症学講座)
- 古川 福実(和歌山県立医科大学・法医学教室)
- 山本 有紀(和歌山県立医科大学・皮膚科学教室)
- 吉住 あゆみ(東邦大学医学部・微生物・感染症学講座)
- 鷲崎 久美子(東邦大学医学部・皮膚科学講座)
- 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所・衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,484,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
エステティックにおける健康被害の防止と衛生管理の徹底を目的とする。「健康被害の防止」については、機器類、化粧品及び手技についてリスク評価を行い、現場へフィードバックする。また、アレルギーなど脆弱皮膚の消費者に対する注意喚起に加え、営業施設や技術者に対する啓発活動を充実する。「衛生管理の徹底」では、営業施設における衛生管理の実態を把握し、自主基準である「エステティックの衛生基準」の問題点を抽出、現場の意見を取り入れて改訂を行い、普及啓発する。
研究方法
Aエステティックによる健康被害の実態把握及び原因の究明 1国民生活センターの健康被害情報の収集 2皮膚科医師による健康被害患者の原因究明 3危害情報の分類、原因の推測と防止策の立案 4美容ライト脱毛機器(LED)の安全性試験 5施術時に使用する化粧品の安全性の検討 6啓発資料の作成配布 B施設の衛生管理の徹底について 1「エステティック衛生基準」に関する意見聴取 2施設の衛生管理状況の実態把握
結果と考察
危害相談件数は、過去5年間平均533件だったが、2018年度は420件だった。美顔エステが徐々に減少し、痩身、脱毛が増加してきており、熱傷による被害が増加している。このことから、機器類の健康被害の増加がうかがえる。エステティックで健康被害を受けた患者の受傷原因等の報告を依頼しているが、軽微な被害が多いせいか報告は少数である。2017年度国民生活センターの危害情報を分類、原因の推測と防止策の立案を行った。コストの低減などで今後普及する可能性があるLEDを使用した美容ライト脱毛機器の皮膚安全性試験を行った。その結果、今回試験を行った機器では皮膚の安全性において問題はないと考えられた。アンケート調査の結果使用実態が多い化粧品に使用されている原料5種についてパッチテストを行った。その結果被験者20名すべてで陰性だった。防腐剤であるフェノキシエタノールについては、多くの化粧品に使用されるようになっているので、今後の皮膚障害報告を検討していく必要がある。何らかの疾患を持つ消費者が施術を希望するケースもあり、消費者の身体の状況を詳しく聞き取ることを推奨したが、今回の意見聴取では、疾患を抱えている消費者への対応に迷いがあるとの意見があり、今後迷いの生じるケースなどを収集して適切な施術が組み立てられるような指針の作成を検討していく。「エステティックの衛生基準」の改訂は、営業者や養成施設の担当者などのヒアリングやアンケート調査をもとに行った。室内空気の真菌汚染のあった施設の原因は、木質の家具表面となっている可能性が高く、施術室内の換気量は不足状態を維持している又は相対湿度は高値を維持している時間帯がある。換気状態の改善等によって、室内湿度を適切に保つ、又は高値となる時間帯をできるだけ短く維持する必要がある。
結論
エステティックの健康被害は、国民生活センターに年間約600件報告されている。健康被害の原因は、機器の過剰施術と健康被害リスクを持つ消費者へ通常のトリートメントを行ったことによる健康被害が多数を占めていることが考えられた。今までの厚生労働科学研究費の研究において調査を行った機器などにおいては、健常人への通常の施術方法では問題がなかったことから、通常の施術方法を遵守する、また、皮膚状態は、疾患がなかったとしても疲労やストレスなどで刺激に反応しやすくなり通常の施術でも健康被害が発生する可能性がある。施術前に健康状態の確認を行い施術内容や刺激の強さを調整することにより健康被害リスクを低減できると考えている。また、健康被害の具体的事例を広く共有することにより同様の健康被害発生を防止できるようルーティン等の変更を促していきたい。衛生管理では、エステティック営業施設における環境中に浮遊する細菌や真菌の調査において、浮遊量の多い施設では、室内相対湿度の管理が不十分、細菌や真菌が繁殖しやすい木質の備品が使用されていたことが原因と考えられた。また、インバウンドの増加に伴い未知の感染症の流入が懸念されている現状を考えるとエステティックにおける衛生管理の徹底が求められる。これまでの実態調査から得られた具体的改善点などを教育資料として指導をしてきた。但し衛生管理の知識はあるが、実際忙しいことを理由に衛生管理が不十分になることもあるし、勤務者の理解力に差があり全員に衛生管理マニュアルとして浸透していないなど問題点の抽出を行った。その結果をもとに公益財団法人日本エステティック研究財団が策定した「エステティックの衛生基準」の内容を検討した。未知の病原菌対策下でも、サロンでの施術を安全に行えるように、衛生管理の知識について教育が浸透することを目的に「エステティックの衛生基準」の改訂を行った。
公開日・更新日
公開日
2021-06-14
更新日
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