中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究

文献情報

文献番号
201927004A
報告書区分
総括
研究課題名
中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鍵 直樹(東京工業大学 環境・社会理工学院)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部)
  • 長谷川 兼一(秋田県立大学 システム科学技術学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、建築物衛生法の特定建築物に含まれない中小規模、特に床面積2000~3000㎡の建築物(以下、中規模建築物)における空気温熱環境、給排水の管理、清掃、ねずみ等の防除など適切な衛生管理方策の検討と提言を目的とする。
研究方法
 本研究では下記の分担研究を実施した。
(1)室内空気環境衛生の実態調査(Phase3)
(2)中小建築物のPC(ペストコントロール)による環境衛生の管理実態
(3)全国規模の冬期及び夏期におけるCO2濃度実態(Phase2)
(4)建築物利用者の職場環境と健康に関する実態調査
(5)貯水槽衛生管理および飲料水水質管理に関する調査
結果と考察
(1)室内空気環境衛生の実態調査(Phase3)
 中規模建築物における空気衛生環境及び給排水の管理に係る実態を把握する目的で現場測定を行った。調査項目は、温度・湿度・CO2濃度、浮遊微生物(カビ、細菌濃度)、パーティクル、PM2.5、化学物質(アルデヒド類、VOCs、2E1H)、エンドトキシン(細菌内毒素)である。
(2)中小建築物のPC(ペストコントロール)による環境衛生の管理実態
中小規模建築物ならびに特定建築物における、ねずみ・昆虫等の生息状況、管理状況などの実態を明らかにするために、ねずみ・昆虫等の防除を業務とする事業者を対象としたアンケート調査データを用いて分析した。対象とする建物用途は、「飲食店」「食品販売店」「物販店」「病院」「ホテル・旅館」「サウナ」「興行場」「事務所」である。
(3)全国規模の冬期及び夏期におけるCO2濃度実態(Phase2)
全国24件のオフィス用建物を対象に夏期及び冬期に2週間の連続測定を行った結果、平均値としては1000ppmを超える建物は2割程度であったが、1回でも1000ppmを超える割合はほぼ7割あった。また、昨年度とは異なり期間中ずっと1000ppmを下回らない、3000ppmを超える高濃度を示すなど、著しく悪い環境にある物件はなかった。
(4)建築物利用者の職場環境と健康に関する実態調査
建築物衛生法が適用されない中規模建築物における衛生環境の維持管理の実態や、建築物利用者の健康状態や職場環境等の実態を把握するために、冬期および夏期に全国規模の横断調査を行った。1年目に500社超の事務所に対してアンケート調査を行い、室内環境の測定に同意していただいた事務所に対して、2017年度から2019年度にかけて、室内の空気環境項目の測定と従業員に対するアンケート調査を冬期および夏期に実施した。本年度までに、冬期では合計92件で805名、夏期では合計89件で816名からアンケート調査と測定結果が得られた。
(5)貯水槽衛生管理および飲料水水質管理に関する調査
中規模建築物における給水(飲料水、雑用水、貯水槽)の管理状況と課題を明らかにすることを目的として、(公社)全国ビルメンテナンス協会会員企業を対象に、中規模建築物の衛生状態に関するアンケート調査を実施した。給水の管理については、飲料水および雑用水ごとに水質検査の項目数と検査頻度、遊離残留塩素の検査頻度、貯水槽の清掃頻度、貯水槽の点検・検査の実施頻度について回答を求めた。413社より全国の中規模建築物886件の管理状況に関する情報を得た。
結論
 環境衛生管理の観点から、特定建築物と中規模建築物の違いとして以下の事項が指摘された。
・室内空気中の真菌濃度・化学物質濃度・CO2濃度について、空調設備の方式の違いから、中規模建築物では特定建築物と比較して基準を超える事例が多い。
・ペストコントロールについて、中規模建築物のほうが衛生環境上問題となっている可能性が高い。
・給水の管理について、遊離残留塩素の検査や貯水槽の清掃・点検・検査が、中規模建築物では比較的不十分な実施状況にあると判断された。

公開日・更新日

公開日
2020-11-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201927004B
報告書区分
総合
研究課題名
中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鍵 直樹(東京工業大学 環境・社会理工学院)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部)
  • 長谷川 兼一(秋田県立大学 システム科学技術学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定建築物(延床面積3,000 ㎡以上の建築物、学校は8,000㎡以上)は建築物衛生法のより、室内環境の維持管理と測定報告に関する法的根拠から管理されている。一方、特定建築物に該当しない中規模建築物の数は特定建築物のおよそ半数に及ぶことが明らかにされたが、建築物衛生法適用対象外であるため監視や報告の義務がないことから衛生管理状況の実態が不明瞭となっている。
本研究は、建築物衛生法の特定建築物に含まれない中小規模、特に床面積2000~3000㎡の建築物における空気温熱環境、給排水の管理、清掃、ねずみ等の防除など適切な衛生管理方策の検討と提言を目的とする。建築物衛生法は環境衛生全体を網羅して管理・監督する法律であり、これまで50年間近く室内環境の悪化防止と改善に貢献してきた我が国固有のものであるが、本研究ではこの建築物衛生法の中規模建築物への適用可能性について検討するものである。
研究方法
 本研究では以下の各研究を実施した。
(1)中小建築物の空気・水・PC(ペストコントロール)等、環境衛生の管理実態を把握
(2)中小建築物の環境衛生に係る健康影響実態の調査(Phase1・Phase2・Phase3)
(3)中小建築物における衛生管理項目と水準の提案
結果と考察
関連財団・社団等の協力を得て設定した調査対象集団500件に対してアンケート形式のPhase1研究を行った。Phase2としてPhase1の500件から2年目に42件、3年目に24件を対象とし、温度・湿度・CO2測定の冷暖房期における2週間の連続測定を行い、規模と用途に係る概況を把握した。なお、在室者の勤務環境と健康状態に関するアンケート調査を併せて行った。
Phase3ではPhase2の50件の中から毎年10件程度を選定し冷暖房期を中心に詳細現場測定を実施した。建築物衛生法に規定された空気環境(6項目:浮遊粉じん、温度、相対湿度、一酸化炭素、二酸化炭素、気流)に加え、化学物質、微生物、PM2.5、給排水、掃除、PCなど現場測定を行い、規模に関する横断的な情報収集を詳細に行った。また、測定と同時に従業員及び管理者を対象に環境衛生に係る健康影響実態のアンケート調査を行っいる。加えて、ビル管理業者を対象としたアンケート再調査により空気環境測定、空気調和設備維持管理、給水・排水管理、清掃、PCの管理状況実態に関する詳細把握を行った。
環境衛生に係る健康影響の実態を把握するため、物理環境測定と連携して建築物室内環境に起因する症状や疾患に関するアンケート調査を実施し、疫学・統計学的な観点から解析を行った。
国土交通省の法人土地・建物基本調査データを解析し、全国における建物の属性及び用途・規模特性などを調べた。また、ペストコントロール協会が所属会員を対象に実施している全国アンケートデータの本研究グループで詳細解析した。ペストコントロールや衛生管理における建物用途及び規模別の特性などを把握し、中小規模建築の衛生管理の提言の資料とした。
結論
温度による有症率で中小規模がやや劣る評価となったが、温度制御性能に大きな問題はなかった。相対湿度は冬期に40%RHを満足することは難しく設備が無い或いは加湿能力が脆弱である。浮遊微生物に関しては空調のフィルタ性能が劣ることから一部で課題が見られる。浮遊粉じん・PM2.5に関しては外気影響が大きく国内の大気質が良好なことから大きな問題にはならず、化学物質に関しては特定建築物よりは濃度が高い場合があるが特段悪い環境にはなっていない。厚生労働省の濃度指針値の強化や新物質の検討などを受け、今後も追跡してゆく必要がある。ペストコントロールとして、ゴキブリやねずみ、蚊の生息状況では、特定建築物と比べて衛生環境上問題となっている可能性が高いことが示された。給水に関する管理は、特に遊離残留塩素の検査や貯水槽の清掃、点検および検査について、多くの建築物では不十分な実施状況にあると判断された。

公開日・更新日

公開日
2020-11-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201927004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
建築物衛生の実施状況について、特定建築物および中規模建築物を対象とした現状把握を行った。
臨床的観点からの成果
非該当。
ガイドライン等の開発
非該当。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省医薬・生活衛生局(生活衛生・食品安全)が実施する「建築物衛生管理に関する検討会(令和3年1月〜)」において、本研究の成果が参考資料として活用されている。また自治体の建築物衛生担当者に対しては、国立保健医療科学院で実施している研修等を通じて詳細情報を提供している。
その他のインパクト
本研究で得られた成果に関連して、2020年7月8月に自治体の建築物衛生担当者担当者を対象とした公開シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国立保健医療科学院が実施する自治体職員向け研修において、建築物衛生についての最新情報を提供している。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201927004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
6,993,000円
差引額 [(1)-(2)]
7,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,636,705円
人件費・謝金 778,089円
旅費 1,712,574円
その他 866,166円
間接経費 0円
合計 6,993,534円

備考

備考
自己資金額534円

公開日・更新日

公開日
2021-05-07
更新日
-