輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性確保と安定供給のための新興・再興感染症の研究

文献情報

文献番号
201925001A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性確保と安定供給のための新興・再興感染症の研究
課題番号
H29-医薬-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所 ウイルス第1部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス第2部)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 比嘉 由紀子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 前野 英毅(一般社団法人日本血液製剤機構 研究開発本部 中央研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,154,000円
研究者交替、所属機関変更
沢辺京子(平成29年4月1日~平成31年3月31日)から比嘉由紀子(平成31年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトや物資の国際的な移動の急速な増加や地球温暖化のためにデングウイルスやチクングニアウイルスなどの蚊媒介ウイルス感染症が東南アジアや中南米諸国で流行し、毎年輸入感染例が報告され、新型コロナウイルス等の新興・再興感染症のアウトブレイクが数年毎に発生している。国内では、E型肝炎ウイルス(HEV)に加えて重症熱性血小板減少症ウイルス(SFTS)やダニ媒介脳炎などダニ媒介のウイルス感染症も広く国内に存在している。これらの病原体は、いずれもウイルス血症を起こすことから血液製剤を介して感染する可能性がある。一方、血液製剤の安全性評価の対象となるC型肝炎ウイルス(HCV)は、未だ特殊な株以外に培養系がなく、不活化法の評価には動物由来のモデルウイルスが使用されている。病原体のスクリーニング法には限界があることから輸血用血液製剤の病原体不活化法の開発も必要である。本研究班では、これらの病原体を検出する検査法の開発と標準化、スクリーニング法の開発、血液製剤の新しい不活化法の開発、さらにHCVやHEVの効率良い培養系の開発を実施し、血液製剤の安全性の向上と安定供給を目指した。
研究方法
蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、デングウイルス、ウエストナイルウイルスを含むフラビウイルス共通プライマーを作成し、デングウイルス検体を用いて評価を行った。SFTSウイルスの検出法確立に関する研究では、SFTSVのデータベースを基に大規模スクリーニング用のプライマーとプローブのセットをデザイン・作製し、スクリーニングした。新型コロナウイルスの血液からの検出に適した核酸増幅検査のプライマーとプローブのセットをデザイン・作成を行った。新興感染症発生時の献血対応に関する研究では、蚊媒介ウイルス感染症への対策のため各ウイルスについて疫学、症状、感染経路、輸血感染、海外措置及び国内の対応についてリスク分析を行った。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」の細胞への影響を解析し、不活化条件を検討した。また、HEVの不活化に関する研究では、リバースジェネティクス法を用いて得られた高濃度HEVを用いて、液状化熱による除去効率を血漿由来のHEVと比較検討した。血液製剤を介するダニ媒介感染症の予防の研究では、渡り鳥の飛来地でのマダニからウイルスの検出を行なった。HCVの不活化の研究では、野生株を用いたin vitro培養系を確立するために宿主蛋白質Sec14L2やmiR122を発現させ、感染成立の有無を解析した。また、実ウイルスを用いたエタノール分画法によるHCVの不活化•除去の評価では、HCV抗体陽性血漿から精製したグロブリンをグロブリン分画に加え、17%エタノール分画でのウイルス除去に与える影響を解析した。
結果と考察
フラビウイルス共通プライマーを用いた核酸増幅検査は、デング1型から4型までの検体中のウイルス遺伝子をそれぞれの血清型特異的核酸増幅検査と同等の感度で検出することができた。また、SFTSの検出法の開発では、大規模スクリーニング用のプライマー350セットからスクリーニングによって増幅効率が最良のプライマー・プローブセットを選定できた。蚊媒介ウイルス感染症発生時の対応ではリスク評価を基に対応手引(案)を作成し、ウスツウイルスの高感度検出法も構築できた。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」が細胞の増殖に影響を与えない範囲の濃度において臨床で使用されている赤血球液の性状に類似た条件下でシンドビスウイルスを 4Log不活化できた。HEVの不活化では、リバースジェネティクスによって得られたHEVの液状加熱による不活化効率は血漿由来のウイルスと同等であった。これにより血漿由来のHEVの代わりとなり得ることを明らかにできた。ダニ媒介感染症の予防の研究では、渡り鳥飛来地で採取したマダニから新規ウイルスを含む多種のウイルスが検出され、鳥に付着したダニによって感染地域が拡大する可能性が示唆された。17%エタノール分画におけるC型肝炎ウイルスの挙動はHCV抗体によって著名な変化は認められなかった。
結論
これら成果は血液製剤の安全性確保と安定供給のために大いに役立つと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-01-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-08-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201925001B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性確保と安定供給のための新興・再興感染症の研究
課題番号
H29-医薬-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所 ウイルス第1部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 比嘉 由紀子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 前野 英毅(一般社団法人日本血液製剤機構 研究開発本部 中央研究所)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトや物資の国際的な移動の急速な増加や地球温暖化のために蚊媒介ウイルス感染症が東南アジアや中南米諸国で流行し、毎年輸入感染例が報告され、新型コロナウイルス等の新興・再興感染症のアウトブレイクも数年毎に発生している。国内では、E型肝炎ウイルス(HEV)に加えて重症熱性血小板減少症(SFTS)やダニ媒介脳炎などダニ媒介のウイルス感染症も広く国内に存在している。これらの病原体は、いずれもウイルス血症を起こすことから血液製剤を介して感染する可能性がある。一方、血液製剤の安全性評価の対象となるC型肝炎ウイルス(HCV)は、未だ特殊な株以外に培養系がなく、不活化法の評価には動物由来のモデルウイルスが使用されている。病原体のスクリーニング法には限界があることから輸血用血液製剤の病原体不活化法の開発も必要である。本研究班では、これらの病原体を検出する検査法の開発と標準化、スクリーニング法の開発、血液製剤の新しい不活化法の開発、さらにHCVやHEVの効率良い培養系の開発を実施し、血液製剤の安全性の向上と安定供給を目指した。
研究方法
蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、フラビウイルス共通プライマーを用いた迅速診断法のデングウイルスやジカウイルスに対する感度や特異性を検討した。SFTSウイルスの検出法確立に関する研究では、SFTSVのデータベースを基に大規模スクリーニング用のプライマーとプローブのセットをデザイン・作製した。また、新型コロナウイルスの血液からの検出に適した核酸増幅検査用のプライマーとプローブをデザイン・作成を行った。新興感染症発生時の献血対応に関する研究では、蚊媒介ウイルス感染症への対策のため各ウイルスについて疫学、症状、感染経路、輸血感染、海外措置及び国内の対応についてリスク分析を行い、手引書を作成した。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、「Pheophorbide a」の細胞への影響を解析し、不活化条件を検討した。また、HEVの不活化に関する研究では、血漿由来の HEVでは高濃度のウイルスを含有する血漿を評価に必要な充分な量を確保することは不可能であることからリバースジェネティクス法を用いた産生系を構築した。得られた高濃度HEVを用いて、ウイルス除去膜による除去効率や液状加熱による不活化効率を血漿由来のHEVと比較検討した。血液製剤を介するダニ媒介感染症の予防の研究では、渡り鳥の飛来地でのマダニからウイルスの検出を行なった。さらにマダニの吸血動物の嗜好性を解析するReverse Line Blot(RLB)法の改良を行った。HCVの不活化の研究では、野生株を用いたin vitro培養系を確立するために宿主蛋白質Sec14L2やmiR122を発現させ、感染成立の有無を解析した。また、実ウイルスを用いたエタノール分画法によるウイルスの不活化と除去の評価では、HCV抗体陽性血漿から精製したグロブリンをグロブリン分画に加え、17%エタノール分画でのウイルス除去に与える影響を解析した。B型肝炎ウイルスも17%エタノール処理による除去効率を検討した。
結果と考察
フラビウイルス共通プライマーを用いた迅速診断法のデング患者検体に対する反応性を検討したところ、デングウイルスの各血清型をデングウイルスに特化した検出法とほぼ同等に検出することが可能であった。またジカウイルスMR766株も検出することができた。SFTSの検出法の開発では、大規模スクリーニング用のプライマー350セットからスクリーニングによって増幅効率が最良のプライマー・プローブセットを選定でき、感度や特異性も評価できた。蚊媒介ウイルス感染症発生時の対応ではリスク評価を基に対応手引(案)を作成した。ウスツウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスの高感度検出法も構築できた。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では細胞の増殖に影響を与えない濃度において1/2の厚さに調整した赤血球液中のシンドビスウイルスを不活化できた。E型肝炎ウイルスの不活化では、構築した培養系で得られた HEVは血漿由来のものとウイルス除去膜や液状加熱による不活化・不活化効率に差はなく代用になり得ることを明らかにできた。ダニ媒介感染症の予防の研究では、渡り鳥飛来地で採取したマダニから新規ウイルスを含む多種のウイルスが検出され、鳥に付着したダニによって感染地域が拡大する可能性が示唆された。17%エタノール分画におけるHCVの挙動はHCV抗体によって著名な変化は認められなかった。また、HBVも除去できた。以上から17%エタノール分画はウイルス除去に効果的であり、グロブリン製剤によるウイルス感染を未然に防止していたことが明らかにできた。
結論
これら成果は血液製剤の安全性確保と安定供給のために貢献できると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-01-04
更新日
-

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2021-01-04
更新日
-

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