文献情報
文献番号
201924023A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究
課題番号
H29-食品-指定-012
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
- 鍋師 裕美(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 曽我 慶介(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部 )
- 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故により放射性物質の食品への移行は食品衛生上の大きな問題となっている。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部で決定したガイドラインに従い、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を実施しており、毎年行われているガイドライン改定の影響評価およびその手法の開発が必要となっている。本研究においては、食品中の放射性物質の検査体制の評価、過去の食品中放射性物質濃度データ解析等を実施し、それらのデータを基に検査ガイドラインの改定とモニタリング検査の実効性の関係を明らかにし、ガイドライン改定の影響評価を行うとともに、今後のガイドライン改定案に資することを目的とする。また、現在の流通食品の規制値超過率が極めて低く抑えられているにもかかわらず、依然として国内外の風評被害が存在し、被災地復興の障害となっていることから、消費者への効果的な食品検査及び食品安全性情報の発信の方法についても検討する。
研究方法
①食品中放射性物質の検査体制の評価手法の検討:検査精度因子の濃度分布の評価手法について、非破壊測定機器を用いた方法について検討する。
②食品中放射性物質濃度データ解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを年度ごとに解析し、検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等有害物質濃度データ調査:新たに検討すべき核種としてのポロニウム210の分析法を検討する。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
⑤緊急時検査法に関する検討:原子力施設事故等により規制対象となる放射性核種及び測定法を検討する。
②食品中放射性物質濃度データ解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを年度ごとに解析し、検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等有害物質濃度データ調査:新たに検討すべき核種としてのポロニウム210の分析法を検討する。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
⑤緊急時検査法に関する検討:原子力施設事故等により規制対象となる放射性核種及び測定法を検討する。
結果と考察
①非破壊式放射能測定装置による測定は、設計上想定した試料の配置や放射性物質の分布のばらつきの範囲内で測定することが重要である。本年度は、同一の実試料を3種の非破壊式装置による測定とGe検出器を用いた公定法による測定結果との比較検討を主に進めた。野生キノコ約170検体を用いて比較した結果、いずれの機種についても両者間で良好な相関が得られたものの、非破壊測定でのばらつきや、Ge検出器による測定結果とのずれについてもこれまでとほぼ同様の傾向が見られた。なお、3機種のいずれもGe検出器の測定結果よりも低めに評価された。さらに100 Bq/kgに対するスクリーニング検査への適用性について回帰直線の予測区間による方法を用いて検討し、予測区間の上限値が100 Bq/kgの場合の予想される試料の放射能濃度を評価した。その結果、スクリーニングレベル下限50 Bq/kgを満足したものの、本結果は暫定的にそれぞれ回帰直線の傾きを考慮して補正の上評価して得たものであり、各装置の放射能濃度への換算係数評価手法の信頼性検証に関して課題を残した。スクリーニング法の準用にあたっては、換算係数の真度に与える影響評価、試料中の放射性セシウム不均一分布が測定に及ぼす影響の評価を、適用する試料種ごとに測定範囲の詳細な決定を行い、科学的根拠に基づく評価を行う必要があると考えられた。
②令和元年度に厚生労働省で公表された、非流通品/牛肉を除く食品中の放射性セシウム濃度データ37,058件を集計した結果、流通品の基準値超過率は0.046%で非常に低く、非流通品では0.61%であった。
③原子力施設事故等の人工放射性核種に比して影響が大きいと考えられる天然放射性核種ポロニウム210について、昨年度までに検討した分析法を用いて魚介類の放射能を測定した。分析したすべての試料でポロニウム210は検出され、筋肉部位に比べて内臓部位で高く、文献調査でも同様の傾向を確認した。
④本課題ではこれまで「食品の基準値」に関する一般的認識を調査し、放射性物質の基準以前に食品の基準値の意味が理解されていないことを明らかにしてきた。今回さらに放射性物質検査の内容についてもほとんど知られていないことを再確認した。食品の安全性確保と風評被害対策のためには広報やリスクコミュニケーションにより多くの資源を配分する必要がある。
⑤測定対象核種として、昨年度抽出した200余核種の特性と測定法を検討した。
②令和元年度に厚生労働省で公表された、非流通品/牛肉を除く食品中の放射性セシウム濃度データ37,058件を集計した結果、流通品の基準値超過率は0.046%で非常に低く、非流通品では0.61%であった。
③原子力施設事故等の人工放射性核種に比して影響が大きいと考えられる天然放射性核種ポロニウム210について、昨年度までに検討した分析法を用いて魚介類の放射能を測定した。分析したすべての試料でポロニウム210は検出され、筋肉部位に比べて内臓部位で高く、文献調査でも同様の傾向を確認した。
④本課題ではこれまで「食品の基準値」に関する一般的認識を調査し、放射性物質の基準以前に食品の基準値の意味が理解されていないことを明らかにしてきた。今回さらに放射性物質検査の内容についてもほとんど知られていないことを再確認した。食品の安全性確保と風評被害対策のためには広報やリスクコミュニケーションにより多くの資源を配分する必要がある。
⑤測定対象核種として、昨年度抽出した200余核種の特性と測定法を検討した。
結論
放射性物質の検査結果解析から、規格不適合食品の排除は適切になされていると考えられた。今後、監視を継続すべき食品群は、きのこ、野生鳥獣肉のような山林にその起源をもつ食品と考えられた。より効率的な検査体制の構築・維持により適切な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2020-12-14
更新日
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