ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定

文献情報

文献番号
201923003A
報告書区分
総括
研究課題名
ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定
課題番号
H29-労働-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山口 佳宏(国立大学法人 熊本大学 環境安全センター)
研究分担者(所属機関)
  • 林 瑠美子(国立大学法人 名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
  • 喜多 敏博(国立大学法人 熊本大学 教授システム学研究センター)
  • 富田 賢吾(国立大学法人 名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,477,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の危険有害性情報(以下、「リスク情報」とする。)を知ることは、化学物質を安全に使用する上で必須である。しかし、リスク情報の入手には手間がかかり、実際に化学物質による事故が発生している。そのため、化学物質ユーザーが頻繁に見る薬品ラベルに着目して、さらにIT技術を使って、この課題を解決することを本研究の目的としている。
本研究は、(1)メーカーへの薬品ラベルに関する意向調査、(2)伝達すべきリスク情報の検討、(3)二次元コード変換および表示ツールプログラムの開発、(4)リスク情報の教育効果の評価、(5)リスク情報提供の効果測定という5つのサブテーマを設定している。
研究方法
令和元年度は、3)化学物質のリスク情報変換および表示ツールの開発、4)化学物質のリスク情報表示ツールによる教育効果の測定を行った。5)化学物質管理支援システムを利用したリスク情報提供の効果測定については、平成30年度に4)化学物質のリスク情報表示ツールによる教育効果の測定において、開発したアプリケーション(アルファ版)の評価の際に修正を行った方が良いと判断し、計画を変更し化学物質管理支援システムを利用したリスク情報提供の効果測定を行わず、アプリケーションのベータ版の開発を行った。
結果と考察
最終年度で得られた結果として、GHSラベルに表示する必要がある注意喚起語、危険有害性情報および注意書きについて、それぞれ色分け、イラストおよび簡易表現によって化学物質の危険有害性の理解度を高める工夫を組み込んだ。多くの文字情報に、イラストなどの表現法を加えることで、化学物質の危険有害性の理解度を高めるサポートができていると考えている。開発したアプリケーションは、安全管理の専門家、大学生(1年生および4年生)、さらに労働者から評価を受けた。その結果、化学物質に関する法令やGHSについて知識がある場合は、アプリケーションを利用することで、化学物質の危険有害性を理解できる傾向があることがわかった。またアプリケーションを利用した危険有害性情報の理解サポートは、SDSよりは利用したいが、現場ではモバイル機器を持ち込まない可能性が高いので利用しにくいこともわかった。
結論
本研究は、化学物質ユーザーに化学物質の危険有害性情報を、より理解されやすく伝えることを目的としていた。多くの人が所有しているモバイル機器、特にスマートフォンにアプリケーションをインストールして、化学物質の危険有害性情報を理解しやすくした。アプリケーションに化学物質の危険有害性情報を文字情報に加えイラストや動画など表示方法を加えることで、化学物質の危険有害性について理解度を高められることがわかった。ただ、化学物質に関する法令やGHSの知識は、化学物質を取り扱う前には獲得しておく方がよく、本研究のように意識的に情報を獲得するツールの利用は、ツールの現場への持ち込みの可否によって利用しにくい場合がある。そのため、化学物質を取り扱う前の教育の強化、現場でのツール利用の訓練または無意識でも化学物質の危険有害性情報を入手できる仕組み、例えば化学物質にICチップを組み込み、ICリーダーに近づくと自動で情報表示ができるようなツールの開発が効果的であると考えている。さらに化学物質ユーザーが意識的に情報を求める内容、例えば事故事例や他者が気になっている危険有害性情報(検索履歴など)を入手しやすいツールの開発が良いと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201923003B
報告書区分
総合
研究課題名
ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定
課題番号
H29-労働-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山口 佳宏(国立大学法人 熊本大学 環境安全センター)
研究分担者(所属機関)
  • 林 瑠美子(国立大学法人 名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
  • 喜多 敏博(国立大学法人 熊本大学 教授システム学研究センター)
  • 富田 賢吾(国立大学法人 名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質の取扱者(化学物質ユーザー)に対して化学物質の危険有害性情報(以下、「リスク情報」とする。)をより理解されやすく伝えること目的に、IT技術を活用して化学物質の危険有害性を取扱者に分かりやすく伝達する方法のモデルを開発するものである。そこで本研究は3カ年で、化学物質の製品に貼るラベルに二次元コードなどを付けて、モバイル機器にインストールされたアプリケーションを利用することで、化学物質のリスク情報の表示を可視的に工夫し、伝達しやすくするような機能を開発することを目標とした。
研究方法
本研究は、(1)メーカーへの薬品ラベルに関する意向調査、(2)伝達すべきリスク情報の検討、(3)二次元コード変換および表示ツールプログラムの開発、(4)リスク情報の教育効果の評価、(5)リスク情報提供の効果測定という5つのサブテーマを設定してした。しかし(5)リスク情報提供の効果測定において、開発したアプリケーション(アルファ版)の評価の際に修正を行った方が良いと判断し、計画を変更し化学物質管理支援システムを利用したリスク情報提供の効果測定を行わず、アプリケーションのベータ版の開発を行った。
結果と考察
得られた結果として、海外を含む試薬メーカー、原油精製メーカー、中間加工メーカーのラベルに対する見解と、本研究の構想であるラベルへの二次元コードの付加の課題について知ることができた。試薬メーカーの場合、小さな容器から大きな容器まで対応する必要があり、特に小さな容器の場合、ラベルに記載すべき文字情報が多いため、化学物質ユーザーに化学物質の危険有害性をわかりやすく伝達できているか不安を感じていた。逆に原油精製メーカー、中間加工メーカーの場合、バルクレベルの大容量の化学物質を少ない種類を取り扱うため、取り扱い前の教育を徹底していた。ラベルについては、仕様書などに記載されていない限り、基本的にはGHSラベルを表示している。この時に二次元コードを貼り付けることは可能であるが、教育を徹底しているため、本研究の構想については支援くらいしかならないという見解であった。しかし化学物質を取り扱う種類が増えてくると、化学物質の取り扱いに関する教育が難しくなり、本研究のアプリケーションが、支援ツールではあるが、教育内容を補完するためにもツールを使ってみたいという見解であった。本研究では、二次元コード出力システムとモバイル機器用アプリケーションを開発した。二次元コード出力システムについては、市販されている化学物質管理支援システムで利用されている法令情報およびGHS情報に基づき、二次元コードへの圧縮すべき情報とした。本システムは、サーバー上で利用できる。またアプリケーションは、AndroidをOSとした開発版として開発した。このアプリケーションは、二次元コード出力システムから出力された二次元コードを読み取り、解凍することでアプリケーション上に表示されるものである。このアプリケーションは、安全管理の専門家、化学物質ユーザーとなる大学生(1年生および4年生)、大学院生と労働者から形成的評価を受けた。開発したアプリケーションは、化学物質のリスク情報をより理解されやすく伝えるために、法令情報、GHSの分類、色分けされた注意喚起語を表示するようにした。さらにGHSラベルの注意書きに基づいて、取り扱い上で注意すべき簡易表現を作り、アプリケーションの表示上位に大きく表示するようにした。形成的評価の結果、アプリケーションが化学物質のリスク情報をより理解されやすく伝えるツールになり得ることがわかった。ただ、アプリケーションがインストールされているモバイル機器を、化学物質を取り扱う現場に持ち込めるかわからず、化学物質のリスク情報の知識がほとんどない取扱者には理解しにくい部分があることがわかった。
結論
本研究によって、化学物質を取り扱う場合、一定の知識はやはり必要であるが、アプリケーションを利用することで、化学物質のリスク情報をより理解されやすく伝えられることがわかった。このアプリケーションの利用は、意識的に行うものである。化学物質を取り扱う前の教育を行うことで化学物質のリスク情報を理解しやすくなり、アプリケーションの利用を訓練することで伝わりやすくなるだろう。また意識的に化学物質のリスク情報をより理解されやすく伝えるためには、事故情報の提示が有効であると考えている。化学物質のリスク情報を無意識でより理解されやすく伝えるためには、例えばスマートグラスを使って二次元コードを自動で認識して表示する技術や、ICチップを使ってICリーダーに近づいた時に表示する技術が有効であろう。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201923003C

収支報告書

文献番号
201923003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,220,000円
(2)補助金確定額
3,220,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 170,264円
人件費・謝金 49,280円
旅費 667,370円
その他 1,588,695円
間接経費 743,000円
合計 3,218,609円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-