大規模データを用いた、地域の医療従事者確保対策に関する研究

文献情報

文献番号
201922055A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模データを用いた、地域の医療従事者確保対策に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 靖志(愛知医科大学 医学部地域医療教育学寄附講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科医療システム学分野)
  • 山下 暁士(名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター)
  • 林田 賢史(産業医科大学病院医療情報部)
  • 村上 玄樹(産業医科大学病院医療情報部)
  • 石川 ベンジャミン光一(国際医療福祉大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模な診療データから医療需要や供給状況を分析し、医療従事者確保に対しての評価指標を提案し、また、医学教育や卒後研修等におけるへき地等に関わる経験等とその後のキャリアの関係を検討することにより、医療従事者確保の具体策を考える際の基礎データや好事例の提供、それに基づいた医療従事者確保に向けた有効な策を提案することを目的としている。
研究方法
病床機能報告データを利用した、医師数と救急医療体制の関係の分析では、人口区分ごとの救急告示病院における、100床あたり常勤換算医師数の差について、2群間での平均比較と相関関係を検討した。
福岡県では各医療機関、医学生へのアンケート調査を行い、また福岡県及び福岡県医師会から看護師養成機関への調査結果の提供を受け、医療従事者の就業地に関する意向や医学生の就業地に関する意向、看護師養成機関の卒業生の、卒業後の就業先と出身地との関係性や、ライフイベントとの関係・影響について、検討した。
愛知県と沖縄県では、各医療機関アンケート調査を行い、性別・年代別常勤医師数と非常勤医師の常勤換算数を二次医療圏毎に比較した。また、各医療機関における現在の医療従事者確保の状況と将来の確保の予測、現在行っている確保についての取り組み状況について分析し、県間比較も行った。
さらに、愛知県において提供を受けたNDBデータと病床機能報告データの医師数を用い、疾患群ごとに医師1人当たりの入院日数や外来受診回数、医師100人あたり手術件数を算出し二次医療圏間での比較を行った。
結果と考察
病床機能報告データの解析では、人口が1万人以上の5区分においては、市区町村内での救急告示病院における平均受入件数より多いグループと少ないグループ間で、100床あたり常勤換算医師数に有意差が認められた。さらに、人口が3万人以上の4区分においては、救急告示病院における救急車受入件数と100床あたり常勤換算医師数に正の相関がみられた。これにより、人口規模が小さい市区町村では、医療機関の役割として機能分化ではなく1つの医療機関ですべてを診るという状況になっていることもあり得るため、たとえ医師数を多くしたとしても、医療需要や機能が大きく変わらない可能性が考えられた。
福岡県での調査では、医療機関に就業している女性医師や看護師において、出産と介護が必要となると就業状況を変更する割合が増えていた。医学生においては、希望する就業地について回答理由は地元へ帰るが最も多かった。また、就業地として重視する要件として、生活の利便性が最も多かった。県内の看護師の育成機関の卒業生の就職先では、県内へ3分の2程度就職しており、中学時代に過ごした地域(出身地)と就職地のクロス集計の結果、出身地と就職地が同じ卒業生が最も多かった。こうした観点から、地域としての対応も必要となることから、医療従事者確保について医療施設に任せるのではなく、地域医療構想などで行政側の代表者と合わせて、教育の充実や家族の世話等の施設の充実も含め実行していくことが求められる。
愛知県と沖縄県での調査では、両県ともに現時点で医師・看護職員の人員確保が困難と回答した施設よりも看護補助職の人員確保が困難であると回答した施設の方が多かった。現時点では沖縄県の方が医師や看護職員の人材確保が困難であると回答した施設が多かった。医療従事者確保の取り組みについての調査の結果では、女性の就労継続に不可欠なものと実施が容易なものが多く実施されており、逆に実施が困難なものか医療機関では効果が薄そうなものの実施率が低いことが分かった。両県の比較では沖縄県では愛知県よりも教育に関する取り組みが多く実施されていることが明らかになった。これは、それだけ沖縄県の医療機関の人材確保がひっ迫していることが1つの要因であると推測した。
NDBデータを用いた分析においては、疾患群や地域により医師1人当たり医療提供量に違いがあることが明らかになった。また、脳梗塞や心筋梗塞の患者は発生場所近くの病院に運ばれることが多いため、その医療圏の人口により件数等も変わってくると思われる。また、大学病院の存在する医療圏から地理的に離れていることで、他の医療圏であれば大学に送るであろう症例も全て自施設で治療しているために、県全体と比較して有意に件数が多くなる医療圏があるかもしれないことも考える必要がある。
結論
本研究において、現状の医療提供体制や医療従事者確保対策の課題点や方向性が示せたと考える。今回の結果は、地域医療支援センターや県医師会にも還元・提供し、県や県医師会による医療従事者確保についての検討に還元する予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201922055B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模データを用いた、地域の医療従事者確保対策に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 靖志(愛知医科大学 医学部地域医療教育学寄附講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科医療システム学分野)
  • 山下 暁士(名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター)
  • 林田 賢史(産業医科大学病院 医療情報部)
  • 村上 玄樹(産業医科大学病院 医療情報部)
  • 石川 ベンジャミン光一(国際医療福祉大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、大規模な診療データから医療需要や供給状況を分析し、医療従事者確保に対しての評価指標を提案し、また、医学教育や卒後研修等におけるへき地等に関わる経験等とその後のキャリアの関係を検討することにより、医療従事者確保の具体策を考える際の基礎データや好事例の提供、それに基づいた医療従事者確保に向けた有効な策を提案することを目的としている。
研究方法
研究期間3年において、対象都道府県として研究分担者、研究協力者の所属機関(当時)がある愛知県、福岡県、沖縄県を中心とし、大きく以下の方法で研究を行った。
1.医学生における地域医療へ興味を感じてもらうための教育と効果の好事例を収集する
2.DPC公開データを用いて、地域の医療提供状況を解析する
3.医療機関向けアンケート調査から、医師(医療提供量)の地域差を分析する
4.医療機関向けアンケート調査から、医療従事者の確保についての状況と確保対策について分析する
5.医療従事者や医学生、看護師育成機関向けアンケート調査を実施し、結果を分析する
6.病床機能報告データを利用して、医師数と救急医療体制の関係を分析する
7.NDBデータを用いて、医療需要と医療提供量との関係の地域差を分析する
結果と考察
地域医療教育の好事例として愛知医科大学の地域医療実習の際にポートフォリオとして明確な目標・目的を明記させて振り返りを行い、経験の共有と協同学修と評価により、地域医療実習での体験を好意的にとらえる学生が多く、教育段階からの介入が地域医療従事者確保に影響することが示唆された。
また、DPC公開データの分析からは、医療圏によっては診療実績のないMDCがみられたが、県内ではすべてのMDCに対する診療実績が確認され、疾患別にみても、がん、急性心筋梗塞、脳梗塞において、しっかりと県内で実績の多い医療施設があり、医療計画的にも対応ができていることが確認された。
医師の地域差について、医療圏ごとの医師年齢分布に差が表れるのが顕著となった。性年齢階級別で見たところ、年代が上がるほど男性の割合が有意に高くなっていた。これには大学病院の存在が関係していることが示唆された。
医療従事者確保についての状況と確保対策については、医師や看護師に比べ看護補助者の確保が困難と考える医療機関が多かった。取り組みとしては、女性の就労継続に不可欠なものと実施が容易なものが多く実施されており、逆に実施が困難なものか医療機関では効果が薄そうなものの実施率が低いことが分かった。愛知県と沖縄県での比較では沖縄県では愛知県よりも教育に関する取り組みが多く実施されていることが明らかになった。これは、それだけ沖縄県の医療機関の人材確保がひっ迫していることが1つの要因であると推測した。
医療従事者や医学生、看護師育成機関向けアンケート調査の結果からは、就業地として重視する要件として、生活の利便性が最も多かった。県内の看護師の育成機関の卒業生の就職先では、出身地と就職地が同じ卒業生が最も多かった。こうした観点から、地域としての対応も必要となることから、医療従事者確保について医療施設に任せるのではなく、地域医療構想などで行政側の代表者と合わせて、教育の充実や家族の世話等の施設の充実も含め実行していくことが求められる。
病床機能報告データの解析では、人口が1万人以上の5区分においては、市区町村内での救急告示病院における平均受入件数より多いグループと少ないグループ間で、100床あたり常勤換算医師数に有意差が認められた。さらに、人口が3万人以上の4区分においては、救急告示病院における救急車受入件数と100床あたり常勤換算医師数に正の相関がみられた。これにより、人口規模が小さい市区町村では、医療機関の役割として機能分化ではなく1つの医療機関ですべてを診るという状況になっていることもあり得るため、たとえ医師数を多くしたとしても、医療需要や機能が大きく変わらない可能性が考えられた。
NDBデータを用いた分析においては、疾患群や地域により医師1人当たり医療提供量に違いがあることが明らかになった。また、脳梗塞や心筋梗塞の患者は発生場所近くの病院に運ばれることが多いため、その医療圏の人口により件数等も変わってくると思われる。また、大学病院の存在する医療圏から地理的に離れていることで、他の医療圏であれば大学に送るであろう症例も全て自施設で治療しているため、県全体と比較して有意に件数が多くなる医療圏があるかもしれないことも考える必要がある。
結論
本研究において、現状の医療提供体制や医療従事者確保対策の課題点や方向性が示せたと考える。今回の結果は、地域医療支援センターや県医師会にも還元・提供し、県や県医師会による医療従事者確保についての検討に還元する予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922055C

収支報告書

文献番号
201922055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 591,801円
人件費・謝金 0円
旅費 1,932,898円
その他 575,301円
間接経費 900,000円
合計 4,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-