未成年者の喫煙・飲酒を取り巻く環境に関する研究

文献情報

文献番号
199800747A
報告書区分
総括
研究課題名
未成年者の喫煙・飲酒を取り巻く環境に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根智史(国立公衆衛生院)
  • 谷畑健生(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1998年4月からたばこ業界の自主規制によりテレビのたばこCMが姿を消した。その分が他の広告媒体に流れていないかを明らかにするために、いくつかの広告媒体に的を絞って定点調査を実施した。広告媒体は雑誌、新聞、交通広告および屋外広告であった。次いで、これらのの月別の推移、雑誌、新聞、路線、地域ごとの特徴、外国たばこの広告の割合、懸賞広告の動向も明らかにし、それらをもとに未成年への影響を推察する資料とした。
研究方法
1) 雑誌・新聞調査
雑誌は、雑誌総カタログにあるわが国の売り上げ部数上位雑誌の中からはじめからたばこ広告が業界の自主規制により掲載されていない女性誌や少年向けマンガ誌を除いたもの、および毎日新聞に掲載されるの毎日新聞学校読書調査により小学生、中学生、高校生によく読まれている雑誌の上位のものから合計47誌(月刊誌および週刊誌)を選び雑誌にあるたばこ広告の数、銘柄名、国産外国産の別、および広告の大きさを調査した。調査した雑誌の発行時期は1997年1月~1998年8月までであった。データは、月別にみた広告件数、ページ数に換算された広告面積、外国たばこ広告の割合、懸賞広告の割合であった。集計は1998年4月からのテレビ広告自主規制前後の比較をするために前後5ヶ月ごとの集計をした。従って集計期間は1997年11月~1998年8月であった。
新聞広告は首都圏の主要4誌(産経、朝日、読売、毎日)に絞り1997年11月~1998年10月までを調査した。全ての新聞のページを観察し、たばこの広告をみつけその銘柄名、外国産かどうか、紙面に占める大きさ判定し、月ごとにまとめた。
2) 交通広告調査
首都圏を走るJR線、大手私鉄線、地下鉄線のうち、12路線を任意に抽出し(京浜東北線、山手線、埼京線、中央線、京成線、京王線、小田急線、西武池袋線、東武東上線、東横線、都営三田線、営団丸の内線)、毎月1回1車両を選び、車両内のたばこ広告を全て調査した。たばこ広告からは広告数、銘柄名、国産外国産の別、懸賞広告の有無といった情報を抽出した。
3)屋外広告調査
東京の山手線周辺地域で、若者が集まることが多い6地域(池袋、新宿、原宿・表参道、渋谷、六本木、銀座)の繁華街の数ブロックを固定地域として定点観測を実施した。調査対象は屋外にあるあらゆる大きさのたばこの看板広告である。広告数、銘柄名、国産外国産の別を調査した。毎月1回各定点地域を調べみつかったすべての広告を写真にとって記録した。調査期間は1998年3月から1999年3月までである。
結果と考察
研究1) 雑誌広告・新聞広告
調査した47雑誌のうち16誌にはこの10ヶ月間たばこ広告が全く認められなかった。月別広告件数をみると1998年1月から1998年3月まではだんだん増加し、1998年の4月から再び減少した。しかし6,7,8,月と増加した。5ヶ月毎の合計をみると前半より後半の広告件数の方が多かった。外国たばこの広告の割合は28%であった。前半が26%、後半が30%であった。懸賞広告は28%あり、前半が26%であったのが後半30%となった。懸賞広告の割合は外国たばこの方で高かった。 新聞広告は1997年3月に多かった。しかし、5ヶ月毎の比較を行うと後半の方が多かった。新聞広告が多いのは読売、朝日で少ないのは産経、毎日であった。外国たばこの広告の割合は21%で、前半19%、後半23%であった。読売と朝日の外国たばこ広告割合が高く、毎日と産経には外国たばこの広告はほとんど掲載されていなかった。
未成年者がよく読む雑誌にかなりたばこ広告が掲載されていることが明らかになった。しかも、テレビCM規制以後に広告料が増加したことが疑われた。よく掲載されている銘柄はマーケットシェアの上位銘柄とはやや異なった。外国たばこの広告の割合は実際のマーケットシェアよりやや高かった。懸賞広告の割合も高く、特に外国たばこで多かった。これらはいずれも青少年の喫煙行動に影響を与える可能性があると考えられる。
新聞広告も後半広告件数がやや増加した。新聞広告は掲載件数が多く、外国たばこの広告も掲載している新聞と広告件数が少なく外国たばこの広告がほとんど掲載されていない新聞に分かれるのが特徴であった。外国たばこの広告の占める割合はマーケットシェア相当であった。広告の多い銘柄は雑誌と似ていた。
2)交通広告
調査した12路線の調査回別の広告数の動向をみると1998年の4月前後で変化は認められなかった。一方、7,8月で広告数が増加することが明らかになった。その後減少し、1,2,3月と増加した。1999年の3月の広告数は前年の3月(テレビCM中止前)よりも増加していた。路線別でみると路線による格差はかなり認められた。
外国たばこの広告の割合は合計の3割を超したが、9月、7月、6月に割合が高く、10月、11月で低かった。1998年の3月に比べればそれ以降あるいは1999年の3月の方が外国たばこの広告の割合が高かった。路線別にみると割合が高い路線は、小田急であり低い路線は東武東上線であった。懸賞広告は、6月~8月と1,2月のみ認められた。全体の広告数に占める割合は年間で1割であった。懸賞広告はほとんど外国たばこによるものであった。年間通じてかなりの数の車内広告があることが明らかになり、これだけで未成年への影響の可能性は否定できない事実といえる。しかも問題なのはテレビCM自主規制後増加している恐れがあること、若者のターゲットを絞っていると考えられる懸賞広告があることである。また外国たばこの広告がマーケット・シェアよりも高率で認められ、特に懸賞広告のほとんどが外国たばこであることは若者にターゲットを絞ったマーケット戦略であることが推察される。これは若者は大人より外国たばこを好んで吸っているという報告からも支持される。
路線別に広告の量や質に差が認められたのは、路線毎に客層を調べた上で広告戦略を変えている可能性があるため今後さらなる詳細な分析が望まれる。
3)屋外広告
月別の広告数をみると総数は毎月ほとんど変動は認められなかった。地域別にみると渋谷がやや増加し、六本木がやや減少した。外国たばこの広告数も毎月ほとんど変動はなかった。
外国たばこの割合は8割近くと高く、月別に変動は小さかった。交通広告に比べると屋外広告の数は変化が少なかった。これは一定の工事が必要ではれる場所が決まっているからであろう。にもかかわらず、地域により広告数に変動が認められたのは興味深い。また、外国たばこの広告の割合がマーケット・シェアに比して極めて高かったの屋外広告の特徴であった。テレビCMの自主規制の前後では屋外広告の大きな変化は認められなかった。
屋外広告の地域別の特徴は、その地域に集まる人々の特性をふまえたマーケット戦略によるとも考えられるため広告内容(男女どちらをターゲットにしているか、ターゲットの年齢層など)もさらに分析していく必要があると考えられる。
結論
今回の調査により、かなりの量の雑誌広告、新聞広告、車内広告、屋外広告があることがわかった。しかもこれらの多くが1998年4月以降わずかに増加している可能性があることが認められた。外国たばこの広告の割合、懸賞広告の割合も高く青少年への影響が心配される。新聞別、電車の路線別、地域別の広告に特徴がありそれぞれの読者や利用者の特性を分析した詳細なマーケット戦略に沿った広告の使い方をしていることが示唆された。
これらの情報をモニタリング情報としてとり続けることが未成年の喫煙対策には重要なデータを提供するといえる。

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