文献情報
文献番号
201911049A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-055
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 堀米 仁志 (筑波大学 医学医療系小児科 )
- 大野 聖子(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
- 住友 直方(埼玉医科大学 医学部)
- 岩本 眞理(済生会横浜市東部病院 こどもセンター )
- 野村 裕一 (鹿児島市立病院 小児科)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
- 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室 )
- 清水 渉(日本医科大学 大学院医学研究科)
- 堀江 稔(滋賀医科大学 アジア疫学研究センター)
- 野上 昭彦(筑波大学 医学医療系循環器内科)
- 蒔田 直昌(国立循環器病研究センター 研究所)
- 相庭 武司(国立循環器病研究センター 臨床検査部)
- 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター ゲノム医療支援部)
- 牧山 武 (京都大学 大学院医学研究科)
- 森田 宏 (岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 中野 由紀子 (広島大学 大学院医系科学研究科)
- 林 研至(金沢大学 附属病院検査部)
- 岩崎 雄樹(日本医科大学 医学部)
- 村田 広茂(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健常小児と遺伝性不整脈患児の睡眠中ホルタ心電図、脳波同時記録を行い、心電図指標と自律神経機能、睡眠深度の解析から、遺伝性不整脈疾患の睡眠中症状出現予測因子を決定する。遺伝学的検査を含めた患児情報から睡眠中突然死予防のための治療的介入指針を作成する。思春期・成人期の遺伝性不整脈疾患のデータ収集、レジストリ作成を行い、各疾患における心イベント発生予防の指針を作成する。
研究方法
1. 小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究:睡眠中のホルタ心電図、脳波の同時記録を行い、QT間隔に及ぼす心拍数、睡眠深度、自律神経機能の影響を検討した。2.睡眠時に発作を起こしやすいQT延長症候群(LQTS)type 3のT波形態に関する研究:V5誘導波形を2階微分、9点の標識点を選択し検討した。3.カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)における植込み型除細動器植込みの実態調査:対象者の臨床的特徴、遺伝子変異について調査を行った。4.QT延長症候群の就寝、起床前後のQT時間の変動に関する研究:LQTS患児28名のホルタ型心電図から就寝、起床前後のQT時間を解析した。5.カテコラミン誘発多形性心室頻拍に関する質問紙調査:全国の成人/小児循環器専門施設1194施設に遺伝学的検査と診療体制について調査した。6.LQTS 8型におけるT波形状と臨床像に関する研究:17家系、25名の心電図T波形状の特徴、臨床像との関連を後ろ向きに検討した。7.筋ジストロフィーの原因遺伝子デスミンに変異を有する進行性心臓伝導障害に関する研究:心臓Naチャネルとラミンに遺伝子変異が同定されない53人を対象に網羅的遺伝子解析を行った。8.ACMG/AMP分類を用いた先天性LQTS 1型のリスク評価に関する研究:患者927人を対象に臨床的特徴とACMG-AMP分類に基づいた遺伝子の病的分類を比較検討した。9.成人遺伝性不整脈のクリニカルシークエンスに関する研究:LQTS116例、Brugada症候群(BrS)11例、CPVT8例に対しサンガー法にてクリニカルシークエンスを行った。10.CPVT関連心臓リアノジン受容体遺伝子変異に関する3D in silicoモデルを用いた変異部位の解析:93変異のタンパク質内の変異部位の特徴に関して検討した。11.遺伝性不整脈突然死リスク因子に関する研究:電気生理検査を施行した無症候例BrS 125名を対象に心電図指標、心臓電気生理学検査などからリスク評価を行った。12.マイクロRNAを用いたブルガダ症候群予測マーカーの検討:患者64例と年齢・性をマッチさせた対照群でmiRNAが予後マーカーとして有用か検討した。13.遺伝性不整脈の網羅的遺伝子解析およびゼブラフィッシュを用いた不整脈重症度評価に関する研究:早期発症心臓刺激伝導障害(CCSD)の網羅的遺伝子解析を行い稀なバリアントの病原性を評価した。
結果と考察
1. 睡眠中のQTc値高値の出現は高心拍数の出現と関係しており、LQTSタイプ毎に自律神経の関与は異なっていた。2.LQT3のT波と正常なT波の形状を鑑別できることが示唆された。3.CPVT患者に対する内服治療およびICD植込みは慎重に行う必要がある。4.就寝前後、起床前後のQT時間の変化は心拍数に依存したQT時間の変化と考えられた。5. 遺伝学的検査までの枠組みの整備と適切な検査・治療法の啓蒙が必要である。6.LQT8のlate appearance T waveは致死的不整脈の予後予測因子として有用である。7.進行性心臓伝導障害の遺伝子背景は多彩で、網羅的な遺伝子パネル解析が有効である。8.臨床的リスク評価にACMG-AMP分類評価を加えるとリスクをより詳細に判断できる。9.37%の症例にVariantを認め、症例蓄積により病的意義の判定精度が向上すると思われる。10.CPVT関連RYR2変異の機能異常を予測するのに有用である。11.QRS棘波、Tpe間隔延長と電気生理検査を組み合わせると高リスク患者を同定できる。12.miRNAはBrSの予測マーカーとして有用である。13.機能解析は重要性不明に分類されたバリアントの病的意義を明らかにするため有用である。
結論
小児班では睡眠中の症状出現の予測因子は睡眠深度ではなく高心拍の出現であることを決定できた。睡眠深度を同時記録していない過去の多数のホルタ心電図データの解析を加えることにより、タイプ別の睡眠中突然死予防の指針作成が可能と考えられた。成人班ではLQTS、Burgada症候群のデータ解析、レジストリ作成等が順調に進んでいる。今回の研究でCPVTの全容が明らかになりつつあり、CPVTについてもレジストリ作成を進め、心イベント発生予防の指針に反映させることが可能と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
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