難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201911031A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-038
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
滝川 一(帝京大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋爪 誠(九州大学先端医療イノベーションセンター)
  • 田妻 進(広島県厚生農業協同組合連合会尾道総合病院)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院医学系研究科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学医学部消化器外科学)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系)
  • 持田 智(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学消化器内科学講座)
  • 田中 篤(帝京大学医学部内科学講座)
  • 原田 憲一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 長谷川 潔(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
12,185,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 田妻進 広島大学病院(平成31年4月1日~令和元年9月30日)→広島県厚生農業協同組合連合会尾道総合病院(令和元年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
肝・胆道系の自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、門脈血行異常症、肝内結石、劇症肝炎について以下の研究を行う。(1)各疾患の全国調査を行うことにより国内の最新の実態を把握する。(2)これらの研究成果を既に作成済みの診療ガイドライン改訂に反映させる。(3)研究結果を広く医師・一般に周知し難治性の肝・胆道疾患の理解や予後の改善に寄与する。
研究方法
(1)AIH:成人および小児AIH全国実態調査、急性肝炎期AIHの臨床・病理所見の評価、重症度判定基準の見直し、重症AIHの治療の現状評価、AIHのQOL調査。(2)PBC:PBC全国調査結果を用いた肝発癌の背景因子に関する検討、原発性胆汁性胆管炎における食道・胃静脈瘤の発生リスク因子の検討、原発性胆汁性胆管炎における症候化予測因子の検討、原発性胆汁性胆管炎合併骨粗鬆症に対するデノスマブ治療の有効性ならびに安全性の検討、原発性胆汁性胆管炎に対する肝移植後予後因子に関する多施設前向き研究。(3)肝内結石・PSC:PSCレジストリ構築、IgG4-SC診療指針立案、小児PSC実態調査、肝内結石全国疫学調査。(4)門脈血行異常症:門脈血行異常症の定点モニタリング調査のEDC化、大規模疫学調査、検体保存センターにおける登録検体の確保。(5)劇症肝炎分科会:わが国における急性肝不全の実態の検討、診断基準・副腎皮質ステロイドの意義の検討、劇症肝炎の診断,予後予測,肝移植の検討。
結果と考察
(1)AIH:全国調査の解析、急性肝炎期AIHの臨床・病理所見の評価、重症度判定基準の見直し患者QOL調査の解析を行った。こられ研究成果をもとに先に研究班で作成された自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2016年)に追記、修正を行い、自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2016)ver3を作成し公表した。(2)PBC:肝細胞癌発生例の予後は不良であり発癌に寄与する因子は男性・高齢・組織学的進展であった。累積発癌率は男性に高く女性例ではPBC診断時の組織学的病期・臨床病期が発癌に寄与する因子と考えられたが男性例では他の因子が発癌に寄与していることが示唆された。PBC合併骨粗鬆症に対するデノスマブ治療の無作為化比較試験では19例が登録された。これまでに重篤な副作用は報告されていない。PBCに対する肝移植後予後因子に関する多施設前向き研究では現在25症例が登録され肝移植後のサブクラススイッチが脱感作の機序の一つである可能性を見出した。(3)肝内結石・PSC:多施設共同レジストリ研究を整備した。岡崎班とClinical practice guidelines for IgG4-SCを策定した。単一施設の25年間調査に基づく単施設後方視的研究により、本邦の小児期発症PSC患者では自己免疫性肝炎合併が予後悪化因子であることを見出した。肝内結石症第8期全国横断調査により肝内結石症は高齢化と男性例の増加が進み結石遺残・再発率は高く依然難治性であることが明らかとなった。(4)門脈血行異常症分科会:門脈血行異常症定点モニタリングのEDC化を行いEDCデータベースの周知を全国の専門施設に行い症例登録を依頼している。門脈血行異常症の診療ネットワークの構築を行った。(5)劇症肝炎:2018年に発症した急性肝不全およびLOHFの全国調査を実施した。急性肝不全281例(非昏睡型187例,急性型62例,亜急性型32例)とLOHF 5例が登録された。2018年の症例も2010-2017年の症例と同様に2009年までの肝炎症例に比較すると各病型でウイルス性の比率が低下し薬物性,自己免疫性および成因不明の症例が増加していた。しかし同年の特徴としては,ウイルス性の中でA型症例が非昏睡型で多かったことと免疫抑制・化学療法による再活性化例を含むB型キャリア例が大幅に減少したことが挙げられた。合併症の頻度,内科的治療および予後に関しては2017年までの症例と著変がなかった。
以上の研究結果の一般、及び医療従事者への周知・普及を目的として、2016年秋に研究班ホームページを立ち上げた(http://www.hepatobiliary.jp)。一般向けに各疾患の分かりやすい解説や指定難病制度についての説明を記載し、加えて医療従事者向けの専門的な説明、一般向けの講演会の案内も掲載している。立ち上げ以来アクセス数は順調に増加している。また一般および医療従事者からの質問をメールで受け付けている。また各自治体の難病相談支援センターが主催する難病講演会へ研究班から講師を派遣し肝胆道領域の指定難病についての講演を行っている。今年度は5回講師を派遣した。
結論
本邦における難治性肝・胆道疾患の診療水準の向上、疾患の理解や予後の向上、医療経済への貢献を果たすことができた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911031B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-038
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
滝川 一(帝京大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋爪 誠(九州大学先端医療イノベーションセンター)
  • 田妻 進(広島県厚生農業協同組合連合会尾道総合病院)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院医学系研究科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学医学部消化器外科学)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系)
  • 持田 智(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学消化器内科学講座)
  • 田中 篤(帝京大学医学部内科学講座)
  • 原田 憲一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 長谷川 潔(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は肝・胆道領域における指定難病、すなわち自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis; AIH)、原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis; PBC)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)、バッド・キアリ症候群、特発性門脈圧亢進症、およびその他の難治性疾患(劇症肝炎、肝内結石症、肝外門脈閉塞症)、以上8疾患を研究対象とし、長年研究を継続している。これらの疾患について適宜全国調査を行い、本邦における実態を把握して現状における問題点を抽出するとともに、研究成果の医療従事者や一般市民に対する周知を図ってきた。平成29年度~令和元年度においては、以下の3点を目的とした。
(1)指定難病であるAIH、PBC、PSC、バッド・キアリ症候群、特発性門脈圧亢進症の5疾患についてはすでに診断基準・重症度分類・診療ガイドラインを作成している。これらの疾患についての臨床上の問題を解決するためさまざまなクリニカルエビデンスを蓄積し、今後の重症度分類・診療ガイドライン改訂に資すること。
(2)小児期発症の希少難治性肝・胆道疾患について、「小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患における包括的な診断・治療ガイドライン作成に関する研究」班(研究代表者:仁尾正記)と連携し、シームレスな移行期医療の推進を図ること。
(3)これらの研究結果をひろく医師・一般に周知し、難治性の肝・胆道疾患の理解や予後の改善に寄与すること。
研究方法
研究方法は後ろ向き観察研究が主体である。各疾患につき全国調査を行い、日本における現状を把握するとともに、その結果を解析してクリニカルエビデンスとする。
結果と考察
(1)AIH:全国調査の解析、急性肝炎期AIHの臨床・病理所見の評価、重症度判定基準の見直し、患者QOL調査の解析を行った。こられ研究成果をもとに、先に研究班で作成された自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2016年)に追記、修正を行い、自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2016)ver3を作成し公表した。(2)PBC:肝細胞癌発生例の予後は不良であり発癌に寄与する因子は男性・高齢・組織学的進展であった。累積発癌率は男性に高く、女性例ではPBC診断時の組織学的病期・臨床病期が発癌に寄与する因子と考えられたが、男性例では他の因子が発癌に寄与していることが示唆された。PBC合併骨粗鬆症に対するデノスマブ治療の無作為化比較試験では19例が登録された。これまでに重篤な副作用は報告されていない。原発性胆汁性胆管炎に対する肝移植後予後因子に関する多施設前向き研究では現在25症例が登録され、肝移植後のサブクラススイッチが脱感作の機序の一つである可能性を見出した。(3)肝内結石・PSC:多施設共同レジストリ研究を整備した。岡崎班と協働によりClinical practice guidelines for IgG4-SCを策定した。単一施設の25年間調査に基づく単施設後方視的研究により、本邦の小児期発症PSC患者では自己免疫性肝炎合併が予後悪化因子であることを見出した。肝内結石症第8期全国横断調査により肝内結石症は高齢化と男性例の増加が進み、結石遺残・再発率は高く、依然難治性であることが明らかとなった。(4)門脈血行異常症分科会:門脈血行異常症定点モニタリングのEDC化を行い、EDCデータベースの周知を全国の専門施設に行い症例登録を依頼している。門脈血行異常症の診療ネットワークの構築を行った。(5)劇症肝炎:全体研究としては,2018年に発症した急性肝不全およびLOHFの全国調査を実施した。急性肝不全281例(非昏睡型187例,急性型62例,亜急性型32例)とLOHF 5例が登録された。2018年の症例も2010-2017年の症例と同様に,2009年までの肝炎症例に比較すると,各病型でウイルス性の比率が低下し,薬物性,自己免疫性および成因不明の症例が増加していた。しかし,同年の特徴としては,ウイルス性の中でA型症例が非昏睡型で多かったことと,免疫抑制・化学療法による再活性化例を含むB型キャリア例が大幅に減少したことが挙げられた。合併症の頻度,内科的治療および予後に関しては,2017年までの症例と著変がなかった。
結論
これら疾患についての臨床上の問題を解決するためさまざまなクリニカルエビデンスを蓄積し、今後の重症度分類・診療ガイドライン改訂に資すること、小児期発症の希少難治性肝・胆道疾患についてシームレスな移行期医療の推進を図ること、これらの研究結果をひろく医師・一般に周知し、難治性の肝・胆道疾患の理解や予後の改善に寄与することができた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-15

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911031C

収支報告書

文献番号
201911031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,840,000円
(2)補助金確定額
15,840,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,461,879円
人件費・謝金 1,787,113円
旅費 2,219,229円
その他 6,728,700円
間接経費 3,655,000円
合計 15,851,921円

備考

備考
自己資金:11,921円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14