文献情報
文献番号
201911002A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の医療基盤に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 阿部 康二(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
- 池田 佳生(群馬大学大学院 医学系研究科)
- 石川 欽也(東京医科歯科大学 医学部附属病院 長寿・健康人生推進センター)
- 宇川 義一(福島県立医科大学 医学部)
- 小野寺 理(新潟大学脳研究所)
- 勝野 雅央(名古屋大学大学院 医学系研究科)
- 吉良 潤一(九州大学大学院 医学研究院)
- 桑原 聡(千葉大学大学院 医学研究院)
- 佐々木 秀直(北海道大学大学院 医学研究院)
- 佐々木 征行(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院)
- 高尾 昌樹(埼玉医科大学 医学部)
- 高嶋 博(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
- 瀧山 嘉久(山梨大学大学院 総合研究部医学域)
- 武田 篤(公立病院機構 仙台西多賀病院)
- 田中 章景(横浜市立大学大学院 医学研究科)
- 辻 省次(東京大学医学部附属病院)
- 花島 律子(鳥取大学 医学部医学科)
- 宮井一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
- 吉田 邦広(信州大学 医学部)
- 金谷 泰宏(東海大学 医学部)
- 大西 浩文(札幌医科大学 医学部)
- 高橋 祐二(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
当研究班の対象疾患は脊髄小脳変性症(SCD)、多系統萎縮症(MSA)、痙性対麻痺(HSP)及び脳表ヘモシデリン沈着症(SH)である。共通課題として、診断基準・重症度指標・臨床調査個人票(個票)の検証と見直し・改訂による実態把握・診断精度向上・国際共同研究、ガイドラインの公開・普及と評価による診療の質の標準化、個票のデータ収集・分析による疫学解明、患者レジストリを活用した自然歴研究・診断支援・生体試料収集による診療・研究基盤および病型別自然歴確立と確定診断・病態解明、バイオマーカー開発による定量評価指標確立、治療法・リハビリテーション法の最適化と普及による診療支援を達成し、運動失調症の医療基盤を確立することである。
研究方法
特発性小脳失調症(IDCA)の診断基準案に基づく全国調査を実施する。MSA統一臨床評価尺度(UMSARS)の日本語訳を完成する。MSA分科会を立ち上げて早期診断基準を検討する。アンケート調査によりSHの診療の現状を明らかにする。小脳高次機能分科会を立ち上げて小脳に関連する高次機能障害の評価法を確立する。2018年に完成したSCD・MSA診療ガイドラインの周知・普及を推進する。厚生労働省の難治性疾患データベースを活用した疫学研究を行う。患者登録システムJ-CAT(Japan Consortium of ATaxias)を運営し、臨床・ゲノム情報の蓄積、リソースの収集を推進する。疾患別・地域別・小児期発症例の分子疫学を明らかにする。レジストリを活用した診断支援を行う。二次性小脳失調症の鑑別のため、自己抗体の検査体制の整備を進める。遺伝性SCDを対象とし全エクソーム解析(WES)を行う。赤外線深度センサー・視覚/記憶誘導性サッケード課題・3次元触覚/力覚インターフェイスデバイス・モーションキャプチャー・3軸加速度計を用いて小脳機能の定量的評価を行う。MAO-B選択的PET・末梢血単球表面マーカーのバイオマーカーとしての妥当性を検討する。HSPに対するITB療法の治療効果を多施設共同研究で検証する。ゲノム編集治療の可能性を検討する。リハビリテーション分科会を構成してSCD・MSAに対する短期集中リハの統一メニューの検討を行う。いずれの研究も該当する倫理指針を遵守し各倫理委員会で研究の審査と承認を得て行う。
結果と考察
51名のProbable IDCAの臨床情報が集積された。UMSARSの日本語版標準化に関する論文を準備した。MSA分科会で画像所見・起立性低血圧判定基準の緩和を取り入れた早期診断基準を提唱した。小脳における高次機能の評価スケールCCAS Scaleの日本語版を作成した。SHの臨床的特徴・診療の実態を明らかにした。SCD・MSA診療ガイドラインを刊行し、学会・講演会・総説等で活用を推進した。個票に基づき人工知能を用いた診断検討を行った。J-CATでは1460例の登録・1165検体のリソース収集・809例の一次スクリーニング・363例の病型確定を達成した。SCA31,SCA1,IDCAの前向き自然歴研究分科会の活動を開始した。J-CATで診療に関する相談に対応し、班全体として患者・家族会との連携を強化した。J-CATを活用した自己免疫性小脳失調症の診断支援体制を構築した。JASPAC及びMSAレジストリの臨床試料収集も順調に進捗した。地域別・病型別(SCA34・CANVAS・SCA36)・小児期発症SCDの分子疫学を解明した。WESにより新規原因遺伝子COA7を同定し臨床的特徴を明らかにした。赤外線深度センサー・サッケード課題・3次元触覚/力覚インターフェイスデバイス・モーションキャプチャー・3軸加速度計を用いて小脳機能の定量的評価を行い妥当性・有用性を検証した。MAO-B特異的PET、末梢血単球の分析を行いバイオマーカーの候補を同定した。ITB療法の痙性対麻痺に対する治療効果を検証した。DRPLA Tgマウスでゲノム編集治療の効果を確認した。リハビリテーション分科会において関連学会を通じてアンケート調査を行い、統一メニューを完成しホームページにて公開し普及を推進した。
結論
IDCA診断基準案の検証と全国調査の開始、MSA早期診断基準の提唱、小脳高次機能評価法の導入、SHの診療実態、診療ガイドライン刊行と普及・評価、患者登録システムの運用とそれを活用した診断支援・前向き自然歴研究開始、地域別・病型別・小児期発症例の疫学情報の充実、厚生労働省難治性疾患データベースの活用、生体試料収集、分子マーカー候補発見、運動失調症状の定量的評価法の確立、リハビリテーション法の確立と普及、治療支援の基盤構築を達成した。運動失調症の医療基盤の整備に向けて当初の目標を超える成果が達成された。
公開日・更新日
公開日
2021-06-03
更新日
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