文献情報
文献番号
201909020A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養政策等の社会保障費抑制効果の評価に向けた医療経済学的な基礎研究
課題番号
19FA1004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
西 信雄(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 由田克士(大阪市立大学大学院生活科学研究科)
- 松本邦愛(東邦大学医学部社会医学講座)
- 池田奈由(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
- 野村真利香(東邦大学医学部社会医学講座)
- 杉山雄大(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,685,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では戦後の平均寿命の急速な延伸と少子高齢化とともに社会保障費が増大し、その抑制が近年の重要な政策課題となっている。栄養・食生活の改善は、衛生水準の向上や医学の進歩等と並び、世界有数の平均寿命をもたらした背景となった可能性がある。具体的には、学校給食や栄養士・管理栄養士制度、国民健康・栄養調査、食事摂取基準、食生活指針、食事バランスガイド、食品表示等の栄養施策や栄養政策(以下、栄養政策)が、国民の栄養状態の改善および疾病の発症・重症化予防を通じて平均寿命の伸長に貢献したと考えられる。また、健康日本21(第二次)では、健康寿命の延伸等、国民の健康増進の推進に関する基本的方向を掲げ、栄養・食生活に関する目標項目の達成に向けた種々の栄養政策を実施している。しかしながら、栄養政策が国民の健康・栄養状態を改善し、疾病や介護を予防することによりもたらされる社会保障費抑制効果に関する評価方法はまだ確立されていない。そこで本研究は、栄養政策の社会保障費抑制効果の評価に向けた医療経済学的な基礎研究を行うことを目的とした。
研究方法
国内外の文献のレビュー並びにシミュレーションモデルの作成及び検討を行った。
結果と考察
①海外における循環器疾患の医療費の費用対効果分析に関する研究についてレビューを行ったところ、栄養政策による循環代謝疾患の発症予防と社会保障費の抑制効果に関して、海外では将来予測的な経済評価を行った様々な研究が実施されていることが明らかになった。
②我が国の死因別死亡率、高血圧の有病者率、エネルギーや栄養素摂取の年次推移を検討した。栄養素摂取の変化、特に食塩摂取量の低下が、高血圧の有病者レベルの低下や脳血管疾患による死亡者の減少に関連があると考えられた。
③特定保健指導における栄養指導の効果についてレビューを行い、1件の英語文献を採択した。当該文献では、レセプト情報・特定健康診査等情報データベース(NDB)から得られた全国の特定健康診査・特定保健指導の個人レベルの観察データを用いて、食事指導および運動指導がメタボ因子に与える効果を差分の差分法の考え方に基づき検討していた。特定保健指導前後の特定健康診査での測定値に関する線形回帰モデルを作成し、食事指導と運動指導の有無との関連を推定していた。
④栄養・食品摂取に起因する疾病負担の推移と国際比較について検討を行った。1990年以降、日本の循環器疾患による死亡数とDALYsへの寄与が最も大きかった栄養・食品摂取はナトリウムの過剰摂取で、次いで全粒穀物の摂取不足であった。
⑤高齢者における介護予防の医療費・介護費への影響に関してシミュレーションにより検討した。医療費と介護費の合計は死亡率が低下すると増加するが、介護予防によって非自立者の割合が低下すると、その増加が抑制される可能性が示された。
⑥栄養政策の社会保障費抑制効果の評価について、医療費と介護費、公共経済学的な費用対効果を含めた国内外の文献レビューを進めた。生涯にわたる医療費・介護費などと栄養政策に関する文献はなかったため、経済的負担の範囲を見直してその決定要因として栄養政策を検討した。
⑦高血圧と心血管疾患に関するシステム・ダイナミクスによるシミュレーションについてモデルやパラメータ値の入手方法を検討した。
⑧栄養不良の二重負荷の観点から海外の栄養政策の効果と評価手法についてレビューを行った。
⑨アジア諸国を対象に各国の基本的な健康指標、主な栄養政策を比較し、我が国を中心としてアジア諸国の現状と今後の方向性を検討した。
②我が国の死因別死亡率、高血圧の有病者率、エネルギーや栄養素摂取の年次推移を検討した。栄養素摂取の変化、特に食塩摂取量の低下が、高血圧の有病者レベルの低下や脳血管疾患による死亡者の減少に関連があると考えられた。
③特定保健指導における栄養指導の効果についてレビューを行い、1件の英語文献を採択した。当該文献では、レセプト情報・特定健康診査等情報データベース(NDB)から得られた全国の特定健康診査・特定保健指導の個人レベルの観察データを用いて、食事指導および運動指導がメタボ因子に与える効果を差分の差分法の考え方に基づき検討していた。特定保健指導前後の特定健康診査での測定値に関する線形回帰モデルを作成し、食事指導と運動指導の有無との関連を推定していた。
④栄養・食品摂取に起因する疾病負担の推移と国際比較について検討を行った。1990年以降、日本の循環器疾患による死亡数とDALYsへの寄与が最も大きかった栄養・食品摂取はナトリウムの過剰摂取で、次いで全粒穀物の摂取不足であった。
⑤高齢者における介護予防の医療費・介護費への影響に関してシミュレーションにより検討した。医療費と介護費の合計は死亡率が低下すると増加するが、介護予防によって非自立者の割合が低下すると、その増加が抑制される可能性が示された。
⑥栄養政策の社会保障費抑制効果の評価について、医療費と介護費、公共経済学的な費用対効果を含めた国内外の文献レビューを進めた。生涯にわたる医療費・介護費などと栄養政策に関する文献はなかったため、経済的負担の範囲を見直してその決定要因として栄養政策を検討した。
⑦高血圧と心血管疾患に関するシステム・ダイナミクスによるシミュレーションについてモデルやパラメータ値の入手方法を検討した。
⑧栄養不良の二重負荷の観点から海外の栄養政策の効果と評価手法についてレビューを行った。
⑨アジア諸国を対象に各国の基本的な健康指標、主な栄養政策を比較し、我が国を中心としてアジア諸国の現状と今後の方向性を検討した。
結論
我が国の栄養政策の社会保障費抑制効果を評価するためには、海外の先行研究を参考にして公衆衛生学的かつ医療経済学的なシミュレーション研究を実施する必要があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2021-02-09
更新日
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