文献情報
文献番号
201909006A
報告書区分
総括
研究課題名
飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究
課題番号
H29-循環器等-一般-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 兼板 佳孝(日本大学 医学部 社会医学系 公衆衛生学分野)
- 神田 秀幸(岡山大学 大学院医歯薬総合研究科 公衆衛生学分野 )
- 樋口 進(独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター)
- 井谷 修(日本大学 医学部 社会医学系 公衆衛生学分野)
- 地家 真紀(池田 真紀)(昭和女子大学 生活科学部)
- 大塚 雄一郎(日本大学 医学部 社会医学系 公衆衛生学分野)
- 吉本 尚(筑波大学 医学医療系 地域医療教育学)
- 金城 文(田原 文)(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
- 真栄里 仁(独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター)
- 美濃部 るり子(独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター)
- 桑原 祐樹(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
地家真紀の所属機関変更
日本大学医学部公衆衛生学分野助教から、昭和女子大学生活科学部専任講師へ異動
研究報告書(概要版)
研究目的
1)わが国の中高生の飲酒及び喫煙行動とその関連要因を明らかにし、実態と課題を明らかにすること。
2)地域保健または職域保健で活用可能な生活習慣病のリスクを高める飲酒を減らすための簡易介入方法を開発し、その効果を介入研究の手法を用いて検証する。働き盛りの従業員を対象に、産業保健現場で保健師が介入するスクリーニングにつづく減酒支援介入を実施することで、飲酒習慣が改善するかどうかを検証するために介入研究無作為化比較試験を実施した。
2)地域保健または職域保健で活用可能な生活習慣病のリスクを高める飲酒を減らすための簡易介入方法を開発し、その効果を介入研究の手法を用いて検証する。働き盛りの従業員を対象に、産業保健現場で保健師が介入するスクリーニングにつづく減酒支援介入を実施することで、飲酒習慣が改善するかどうかを検証するために介入研究無作為化比較試験を実施した。
研究方法
1)2017年度に実施した、中高生の喫煙及び飲酒行動の全国調査のデータを用いて、特定の検討課題に対する詳細分析を行い、論文化を実施した。
2)鳥取県及び島根県の事業所、自治体職員等を対象にAUDIT実施後の減酒支援を実施し、その効果の半年後に検証した。5つの事業所に参加を呼び掛け、従業員に行ったAUDITで8点以上のものを対象にした。研究参加承諾者を個人単位で無作為に割り付けした。医療従事者が研究参加者に対して簡易介入を行った。リーフレット提供群(対照群)、約15分の標準介入群、約5分の短縮介入群の3群に割り付けた。各介入は研究参加のリクルートの際に1度だけ行った。研究参加者には、研究班で開発した飲酒日記と自己学習資料を有したスマートフォンのアプリを紹介した。
主要評価項目は介入から半年後の1週間当たりの純アルコール換算した飲酒量(グラム/週)に設定した。自己記入式調査票を用いて、飲酒の頻度、過去30日の機会大量飲酒の有無、普段の飲酒量を聴取し、初回、半年後、1年後でそれぞれ評価した。「機会大量飲酒」は1回あたりに純アルコール換算で60g以上の飲酒をすることと定義した。研究参加者のベースラインデータを集計し、各群の比較を行った。半年後の追跡データを用いて、各群での介入前後の効果量の比較を行い、効果を認めた群では対応のあるt検定を用いて介入前後の有意差を検証した。飲酒頻度や過去30日の機会大量飲酒の割合について、各群間での変化を検証した。
2)鳥取県及び島根県の事業所、自治体職員等を対象にAUDIT実施後の減酒支援を実施し、その効果の半年後に検証した。5つの事業所に参加を呼び掛け、従業員に行ったAUDITで8点以上のものを対象にした。研究参加承諾者を個人単位で無作為に割り付けした。医療従事者が研究参加者に対して簡易介入を行った。リーフレット提供群(対照群)、約15分の標準介入群、約5分の短縮介入群の3群に割り付けた。各介入は研究参加のリクルートの際に1度だけ行った。研究参加者には、研究班で開発した飲酒日記と自己学習資料を有したスマートフォンのアプリを紹介した。
主要評価項目は介入から半年後の1週間当たりの純アルコール換算した飲酒量(グラム/週)に設定した。自己記入式調査票を用いて、飲酒の頻度、過去30日の機会大量飲酒の有無、普段の飲酒量を聴取し、初回、半年後、1年後でそれぞれ評価した。「機会大量飲酒」は1回あたりに純アルコール換算で60g以上の飲酒をすることと定義した。研究参加者のベースラインデータを集計し、各群の比較を行った。半年後の追跡データを用いて、各群での介入前後の効果量の比較を行い、効果を認めた群では対応のあるt検定を用いて介入前後の有意差を検証した。飲酒頻度や過去30日の機会大量飲酒の割合について、各群間での変化を検証した。
結果と考察
1)中高生の喫煙及び飲酒行動に関する全国調査の詳細解析;新型たばこ(電子たばこ、加熱式たばこ)の使用実態と使用パターンについて分析し、論文を出版した。主観的幸福感のスコアと睡眠障害(不眠症、短時間睡眠、悪い睡眠の質)の関連についての論文を出版した。
2)協力の得られた5つの企業、2,276名において、AUDITの結果を見ると約22%(505名)がハイリスク飲酒者疑いと判断された。351名が研究への参加を承諾した。これを通常介入群、短縮介入群、対照群の3群にランダムに割り付け、対照群112名、通常介入群127名、短縮介入群112名となった。ベースラインデータでは、3群で、主要評価指標に差は認められなかった。研究に参加した集団は、40-50歳代であり、ほとんどは男性で、9割以上が週3日以上飲酒し、7割以上が30日以内に機会大量飲酒を経験していた。半年後の結果が得られている、174名(通常介入群60名、短縮介入群58名、対照群56名)の結果をみると、ベースラインと半年後の週飲酒量(純アルコールグラム数)は、通常介入群で、283gから234gへ、短縮介入群で、251gから262gへ、対照群が284gから286gへと変化した。通常介入群が有意に飲酒量が減少し、減少量は週あたり49gであった。 飲酒頻度週3回以上の者の割合に3群間で差はみられず、半年後にも改善はみられなかった。30日以内の機会大量飲酒の割合を見ると、通常介入群で26%、短縮介入群で16%の減少がみられたが、対照群では改善がみられず、むしろやや増加していた。
協力の得られた5つの企業において、飲酒者1,790名のAUDITスクリーニングの結果を見ると約29%がハイリスク飲酒者疑いと判断された。わが国の事業所で働く従業員のかなりの割合が減酒支援の対象者になりうることがわかる。
追跡データが解析できる174例の分析では、通常版介入群で48.8g/週の飲酒量の減少がみられ、この結果はプライマリケア現場での介入研究を分析したレビューの効果量に相当した。飲酒頻度の介入効果は認められなかったが、通常版と短縮版の介入群で機会大量飲酒者の割合の減少が認められた。今後産業保健現場での活用が期待される。
2)協力の得られた5つの企業、2,276名において、AUDITの結果を見ると約22%(505名)がハイリスク飲酒者疑いと判断された。351名が研究への参加を承諾した。これを通常介入群、短縮介入群、対照群の3群にランダムに割り付け、対照群112名、通常介入群127名、短縮介入群112名となった。ベースラインデータでは、3群で、主要評価指標に差は認められなかった。研究に参加した集団は、40-50歳代であり、ほとんどは男性で、9割以上が週3日以上飲酒し、7割以上が30日以内に機会大量飲酒を経験していた。半年後の結果が得られている、174名(通常介入群60名、短縮介入群58名、対照群56名)の結果をみると、ベースラインと半年後の週飲酒量(純アルコールグラム数)は、通常介入群で、283gから234gへ、短縮介入群で、251gから262gへ、対照群が284gから286gへと変化した。通常介入群が有意に飲酒量が減少し、減少量は週あたり49gであった。 飲酒頻度週3回以上の者の割合に3群間で差はみられず、半年後にも改善はみられなかった。30日以内の機会大量飲酒の割合を見ると、通常介入群で26%、短縮介入群で16%の減少がみられたが、対照群では改善がみられず、むしろやや増加していた。
協力の得られた5つの企業において、飲酒者1,790名のAUDITスクリーニングの結果を見ると約29%がハイリスク飲酒者疑いと判断された。わが国の事業所で働く従業員のかなりの割合が減酒支援の対象者になりうることがわかる。
追跡データが解析できる174例の分析では、通常版介入群で48.8g/週の飲酒量の減少がみられ、この結果はプライマリケア現場での介入研究を分析したレビューの効果量に相当した。飲酒頻度の介入効果は認められなかったが、通常版と短縮版の介入群で機会大量飲酒者の割合の減少が認められた。今後産業保健現場での活用が期待される。
結論
わが国で初めて、無作為割付による介入研究のデザインで、1度の減酒支援が半年後の飲酒行動を良い方向に変化させることが検証できた。産業保健現場での減酒支援の実施はプライマリケアの現場よりも若年の集団に対して効果が期待され、今後の重要な戦略の一つとなる可能性がある。今後は、どのように減酒支援の場を広げ、を検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2022-10-07
更新日
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