文献情報
文献番号
201909001A
報告書区分
総括
研究課題名
生涯にわたる循環器疾患の個人リスクおよび集団のリスク評価ツールの開発を目的とした大規模コホート統合研究
課題番号
H29-循環器等-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
- 二宮 利治 (九州大学大学院 医学研究院)
- 大久保 孝義(帝京大学 医学部 )
- 磯 博康 (大阪大学大学院 医学系研究)
- 玉腰 暁子(北海道大学大学院 医学研究科 )
- 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部)
- 三浦 克之(滋賀医科大学 医学部 )
- 斎藤 重幸(札幌医科大学 保健医療学部 )
- 辻 一郎(東北大学大学院 医学系研究科 )
- 中川 秀昭(金沢医科大学 総合医学研究所)
- 山田 美智子((公財)放射線影響研究所 臨床研究部 )
- 坂田 清美(岩手医科大学 医学部 )
- 岡山 明((同)生活習慣病予防センター)
- 村上 義孝(東邦大学 医学部 )
- 木山 昌彦((公財)大阪府保健医療財団 大阪がん循環器病予防センター )
- 上島 弘嗣(滋賀医科大学 アジア疫学研究センター )
- 石川 鎮清(自治医科大学 医学部 )
- 八谷 寛(藤田保健衛生大学 医学部 )
- 中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
26,963,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
危険因子への介入は循環器疾患を予防するために有用である。しかし一般の市町村では危険因子と循環器疾患の関連を直接検証することができないため、予防対策の効果をみるのは困難である。また危険因子についても血圧など個々の危険因子の変化などで評価しているが、複数の危険因子の変化と発症の関連を総合的にみないと地域の健康度を把握したことにならない。個人についてはフラミンガムスコアのようなリスク評価ツール(リスクエンジン)で複数の危険因子から発症リスクを評価し、それにより治療方針を決定する仕組みが一部のガイドラインでも取り入れられているが、集団全体の患者数等を予測するリスクエンジンはない。
研究方法
本研究は質の高いコホート研究を長期間実施している多くのコホート研究の参画を得て、循環器疾患から見た集団全体の健康度を評価するリスクエンジンを開発した。同時に個人の循環器疾患リスクを予測するリスクエンジンも作成したが、こちらは若年者を含む幅広い年齢層の危険因子管理に対するモチベーションを高めるために生涯リスクに着目した開発を行った。そのため研究期間内に、1.既存データの個別解析、2.各コホートにおける追跡期間の延長、3. 追跡期間延長データを用いたデータベースの拡充、4.データベースを用いた集団の循環器疾患発症・死亡予測モデルの開発、5. 同じく既存データ、拡充データを用いた生涯リスクを含む個人の循環器疾患予測モデルの開発、6. 開発したモデルの公的な利用可能性の検証、を順次行った。
結果と考察
集団の循環器疾患死亡者数の予測モデルを開発した。各コホートにおける10年以内の実際の死亡率と予測値との関連を性別、疾患別に検証し、開発したモデルの実測値と予測値との関連は良好であり、相関係数も一部を除き0.95を超えていることを確認した。次にこのモデルが実際の某市の循環器疾患の死亡数の予測に有用かどうかを検証し、男性では実データと予測モデルの結果の比が循環器疾患:83.7%, 脳卒中:92.7%,冠動脈疾患:71.4%と良好である一方、女性では循環器疾患:54.7%、脳卒中:54.8%と予測モデルの結果が観察値の半数程度となり、冠動脈疾患では19.8%と過小評価となっていた。また35 歳時点から 85 歳時点までの 10 年毎の年齢において、収縮期血圧、拡張期血圧、糖尿病有、総コレステロール、現在喫煙ありを用いた統合リスクに基づく生涯リスクの開発を行った。さらに個々のコホートで追跡期間の延長を行い、新規コホートの追跡調査の支援も行った。
結論
本研究はアジア人単独としては最大規模の循環器コホートデータベースを用いて実施される。それぞれのコホートで長年にわたって質の高い疫学研究情報が蓄積されており、危険因子と発症・死亡等の関連を精緻に評価することが可能であり、わが国のリアルワールドを反映したリスクエンジンの開発ができた。
公開日・更新日
公開日
2020-10-15
更新日
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