文献情報
文献番号
201908012A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の就労継続及び職場復帰に資する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-012
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 源樹(順天堂大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 齊藤 光江(順天堂大学 大学院医学研究科)
- 小橋 元(獨協医科大学 医学部 )
- 竹田 省(順天堂大学 大学院医学研究科)
- 寺尾 泰久(順天堂大学 医学部)
- 林 和彦(東京女子医科大学 医学部)
- 西村 勝治(東京女子医科大学 医学部 )
- 溝上 哲也(国立国際医療研究センター 臨床研究センター 疫学・予防研究部 )
- 森口 次郎(一般財団法人京都工場保健会)
- 桑原 恵介(帝京大学 大学院公衆衛生学研究科)
- 武藤 剛(北里大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,782,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、がん患者の就労継続と復職支援に関するエビデンスの集積と効果的な連携ツールを作成し、社会に発信することである。研究は3年計画とする。平成31年度:平成30年度の研究を継続して実施し、得られたデータ等をベースに、「がんと就労のエビデンスブック」「がん患者就労支援ガイダンス」等を完成させ、がん患者の病休制度・復職後時短制度等、厚生労働行政への活用に有益な成果を公表する。
本研究の特色と独創性は、日本で唯一のがん患者の職域データベースを有し、関係学会との協力体制(齊藤:日本がんサポーティブケア学会理事、小橋:日本疫学会理事等)を有し、多くの専門家等との連携・情報共有等の下、がん対策基本法改正・ガイドライン等を踏まえた、「がん患者就労支援ガイダンス」等を完成し、社会に発信をすることである。
本研究の特色と独創性は、日本で唯一のがん患者の職域データベースを有し、関係学会との協力体制(齊藤:日本がんサポーティブケア学会理事、小橋:日本疫学会理事等)を有し、多くの専門家等との連携・情報共有等の下、がん対策基本法改正・ガイドライン等を踏まえた、「がん患者就労支援ガイダンス」等を完成し、社会に発信をすることである。
研究方法
遠藤班では、7つの研究事業を主に実施している。研究事業1:職域ベースでのがん患者大規模コホート研究をJ-ECHO Study(約8万人の検診・病休等のデータベース)で実施し、がん罹患社員のがん種別の復職率、退職率、がん罹患前後の検診結果等を分析するなど、がん患者の就労実態に関するエビデンスを順調に収集した。がんによる長期病休後の禁煙状況に関する研究も行った。研究事業2:中小企業の経営者と総務人事労務担当者対象のインタビュー調査を、関西、関東の企業を対象に実施した。研究事業3:がん治療・がん関連症状と就労等に関する実態調査を、平成29年11月、平成30年11月に患者パネルによるコホート研究を実施した。がん患者1648名(男性868名、女性780名)が回答し、がん患者の治療内容、身体症状、不安・抑うつなどの精神症状、疲労と就労のアウトカムについての詳細な調査が行われた。研究事業4:がん患者の認知機能評価票Cognitive Symptoms Checklist Work 21-item (CSC-W21)日本版作成のための信頼性・妥当性研究を実施している。研究事業5:がん患者の就労継続及び職場復帰に資するナラティブ・データの質的分析として、DIPEx-JAPANの質的研究も順調に実施した。研究事業6:大学病院外来化学療法室におけるがん治療と就労の両立に関する調査研究を実施した。研究事業7:がん患者の治療と職業生活の両立支援・がんとの共生をめざして医療機関・職域で活用するツールや合理的配慮の在り方に関する研究を実施し、海外(米国・欧州、特にオランダ)の「がんと就労」の知見を収集した。
結果と考察
研究事業1:J-ECHO Studyで実施し、がん患者のがん種別の復職率、退職率、がん罹患前後の検診結果等を分析し、がん患者の就労実態に関するエビデンスを論文化した。また、循環器疾患と比べ、がんで禁煙率は低い傾向にあったが、いずれの疾患による病休後も禁煙率は6割を超えていたことが分かった。研究事業2:疾病により業務に影響が生じたと回答があったのは34例中26例であり、車輛運転の困難さが最多であった。業務遂行に影響した体調の変化では、体力低下、痛み、動作への影響、思考力の低下、メンタルヘルス不調などが上位であった。研究事業3:退職・転職のリスクファクターとして、「ステージⅡ,Ⅲ,Ⅳ」「正社員でない」「職場の人にがんであることを伝えていない」「立ち作業がベースの職場環境」「管理職でない」に有意な結果が認められた。研究事業4:CSC-W21日本版の上位尺度を「executive function」「memory」「task completion」とし、現在、論文化を進めている。研究事業5:がん種によって年齢構成や雇用形態、治療内容に違いがあり、それが就労継続の可否に影響を及ぼしていることが分かった。研究事業6:事業場の規模と就労形態が離職に影響を与え、両立に関する相談相手は、上司、主治医、院内相談室の順であり、産業医の役割に関する周知は課題であった。研究事業7:「がんと就労のエビデンスブック」「がん患者就労支援ガイダンス」「就労意見書作成支援ソフト(がん共通版)(旧:がん健カード作成支援カードの別名)」等を開発した。
結論
本研究班で開発された「がんと就労のエビデンスブック」「がん患者就労支援ガイダンス」「就労意見書作成支援ソフト(がん共通版)」を、全国のがん診療連携拠点病院の外来・がん相談支援センタ―等での活用促進が大いに期待される。
公開日・更新日
公開日
2020-11-04
更新日
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