看護師と看護補助者の協働の推進に向けた実態調査研究

文献情報

文献番号
201906001A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師と看護補助者の協働の推進に向けた実態調査研究
課題番号
19CA2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 すが(東京医療保健大学)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 美奈子(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 末永 由理(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 小澤 知子(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 駒崎 俊剛(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 本谷 園子(東京医療保健大学 大学院医療保健学研究科)
  • 白瀬 紗苗(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 堀込 由紀(群馬パース大学 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,028,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療現場におけるタスク・シフティングを進めるには看護師の業務の効率化が必要であり、看護師・看護補助者の協働を進める必要がある。本研究は、病院における看護補助者の確保と活用の実態と課題を明らかにし、協働の推進に向けて提言を行うことを目的とした。
研究方法
全国8,331病院の看護管理者および看護補助者を対象としたweb質問紙調査に加え、医療施設6病院、看護補助者17名、および看護師13名を対象とした聞き取り調査を行ない、看護補助者の確保と活用の現状や課題について統計的・質的に分析し、考察した。
結果と考察
看護管理者調査では、全ての都道府県、設置主体、施設種別の病院を含む1,266件(有効回収率15.2%)の回答を得た。看護補助者調査では、全国47都道府県の病院に所属する看護補助者から1,337件(有効回収率16.0%)の回答を得た。
多くの病院が協働の課題として「看護補助者数の確保」「看護補助者の能力・適性」「看護職と看護補助者とのチームワーク」「看護職の看護補助への的確な指示・業務委譲」等をあげていた。看護補助者の病院への期待としては、処遇の向上、研修などキャリア展開の支援、看護チームとしてのあり方の明確化、看護補助者のイメージ向上があることがわかった。
 今後も看護補助者を増員・確保する意向の病院が多数を占めていた。主な採用ルートは、「ハローワーク」、「病院のホームページ」、「知人の紹介」であったが、看護補助者自身は自宅近くで職場を探していたことから、看護補助者の求人に際しては、病院の近隣の住民に対し重点的にPRや募集を行うことが有効と考えられる。
 病院の63.3%は、正規職員と非正規職員等の看護補助者を同時に活用しており、400床以上の病院や特定機能病院・地域医療支援病院は、正規職員より非正規職員の割合が高くなっていた。看護補助者の定着状況は病院格差が大きく、離職率「5%未満」が24.2%を占める一方、離職率「30%以上」も12.0%あり、正規職員より非正規職員の離職率が高い傾向にあった。
「人事考課を行い、給与に反映させている」病院は、「正規職員」の場合でも46.9%であった。優秀な人材の定着を図るには、業務内容や能力に連動した給与体系を工夫することも方策の一つと考えられる。
看護師用の委譲手順(指示書)は、「文書で明確に決まっている」病院が10%~20%、「文書はあるが、詳細は任されている」のが10%~13%に過ぎず、多くの病院においては、文書もなく、委譲は慣用的なルールや各看護師の指導に任せてある状況であった。看護師がアセスメントすべき事項、共有する情報の内容や共有方法など、業務委譲のルールを明確にし、看護補助者・看護師ともに共通認識することが不可欠である。
 病院は看護補助者を育成するために、院内研修を重視し丁寧に実施しており、今後も8割近くの病院が「病院内の教育研修を充実し、育成したい」(77.9%)と答えていた。看護補助者の確保と活用を考える上で、看護補助者として働く人々のキャリアをどのように考えるか検討することも重要な課題と考える。
チーム医療と言われて久しいが、病院全体の中で、まして社会の中で、病院のチームに看護補助者が含まれていることは理解されていない状況があると考えられる。まずは、病院全体の中で、チームの一員としての位置づけを明確にし、その役割についての認識を共有することが必要である。
結論
1.看護補助者の確保
病院は看護補助者の確保が困難な理由として「給与が低い」「職業としての魅力がない」ことを挙げている。看護補助者は「自宅からのアクセスが良い」ことを理由に選び、「知人の紹介」で就職する者が多かった。確保には、業務内容の具体的な提示、職業の魅力の発信とともに、地域ネットワークの活用等が有効と考えられる。
2.看護補助者の活用
看護補助者はやりがいを感じている者が多いが、協働する上での課題もあることから、マネジメントする上で次の5点が重要である。①チームの一員としての位置づけ ②看護補助者の業務内容・業務遂行ルールの明確化 ③看護師の業務委譲ルールの明確化とスキルの向上 ④多様な看護補助者の個々の能力を活かし、やりがいを支える看護マネジメント ⑤看護補助者の育成
3.看護補助者確保・活用の支援
 病院における確保・定着対策の好事例に関する情報提供、および、看護補助者・看護師・看護管理者に対する研修の充実が病院支援として有効である。支援を進めるには、看護師に対する業務委譲に関する教育や看護補助者の処遇・キャリアについての検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2020-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-16
更新日
2020-10-27

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906001C

収支報告書

文献番号
201906001Z