CBRNEテロリズム等の健康危機事態における原因究明や医療対応の向上に資する基盤構築に関する研究

文献情報

文献番号
201826004A
報告書区分
総括
研究課題名
CBRNEテロリズム等の健康危機事態における原因究明や医療対応の向上に資する基盤構築に関する研究
課題番号
H28-健危-一般-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 明石 真言(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 本部放射線緊急時支援センター)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 木下 学(防衛医科大学校 免疫微生物学講座)
  • 齋藤 大蔵(防衛医科大学校 防衛医学研究センター外傷研究部門)
  • 嶋津 岳士(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 竹島 茂人(自衛隊中央病院 救急科総合診療科)
  • 高橋 礼子(愛知医科大学 災害医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,319,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省の健康危機管理・テロリズム対策の強化は喫緊の課題であり、国内外の最新動向等を分析し、本邦対応体制の脆弱性を評価し、その結果を、国の対策強化に資すること
研究方法
本邦の有識者を研究分担者・協力者とし、それぞれCBRNE災害に対する国際的な動向にかかわる研究、CBRNEテロ、災害に対する国内ネットワークにかかわる研究、CBRNEテロ、災害の事例に関する研究、厚生労働省国民保護計画の課題と対応に関する研究に分担し、研究を行った。
結果と考察
CBRNE災害に対する国際的な動向にかかわる研究では、ドイツ連邦軍医大学校の関連研究機関である薬理学・毒物学研究所、微生物学研究所、および放射線生物学研究所を訪問した。ドイツは、卓越した技術力により、毒ガスから細菌兵器に至るまで各種CBRN脅威のもととなるものを製造してきたが、日本と同様に第二次世界大戦での敗戦を経験しており、現在は極めて抑制的、理性的にCBRN Defenseに特化した体制を敷いており、参考となるところが大きいと考えられた。また、米国保健医科大学(USU)、カナダ・ エドモントン市アルバータ大学、さらにカナダ・メディシンハット市の国防開発研究所を訪問し爆弾テロの有識者および研究者と意見交換を行った結果、日本におけるテロリズム等の不測の事態が発生した際のシビリアンのための救急救護・医療爆傷に対する救護体制は、いまだ確立していないと言って過言ではないことから、2020年にオリンピック・パラオリンピック開催を控えて、この問題を議論して、万が一のための救護体制を確立する必要があると考えられた。CEWGのワークショップにおいて、フェンタニル系薬物やノビチョクなど新しい化学剤の開発、さらにOpioidを用いた化学テロの脅威は世界的に増大していることがわかった。本邦は大阪G20 サミットを6月に控え、化学テロ、特にOpioidを用いたテロ(多数傷病者事案)に関する認識を改める必要があり、Opioidに対する的確な対応手順の確立、すなわち、診断手順の共有、防護服や解毒剤(naloxone)の整備、組織間の連携構築と実務的な訓練、を行うとともに、国際的な連携を深めることが重要であると考えられた。
CBRNEテロ、災害に対する国内ネットワークにかかわる研究では、国際的イベントを控えた本邦におけるCBRNEテロの脅威の評価とその対処法等について、医療従事者・研究者のみならず、医療・消防・セキュリティ等の行政担当者や軍事関連の専門家等が、それぞれの立場から討議・意見交換を行い、特にオピオイドやノビチョクなどの新興の化学テロ脅威については、本邦における知見が少ない状況の中ではあるものの、国際的イベントに向け、各種対応手段の検討を進めるべきであると考えられた。CBRNEテロ、災害の事例に関する研究では、放射線分野に関係する国内外の指針、ガイドラン、関連する技術開発の動向等の情報を同定、収集、分析するとともに、平成29年6月6日に茨城県大洗町で起きたプルトニウム等による体内被ばく事故の事例を解析し、対応の課題点を明らかにした。頻度が少ないテロ・災害に対する関係機関の相互理解、共通認識が必要である。このために放射線テロ対策として、事故の分析、薬剤の備蓄、病院前医療体制の整備、研修、訓練のさらなる充実が図られるべきであると考えらえた。厚生労働省国民保護計画の課題と対応に関する研究では、炭疽菌を用いた生物テロが発生したと仮定した図上演習プログラムを作成し実施した。リスク・コミュニケーションの立場から、情報のメディアへの公開については、県で一本化すること、関係機関間での情報の確認と共有を図ることが必要との結論を得た。国民保護計画のうち、生物テロへの対応について、法的な枠組みの検証以前に、平時の取組をどの時点で国民保護計画に切り替えるかという点については、平時から情報が医療機関から衛生部局に流れる仕組みの構築が不可欠であると考えられた。自治体における生物テロへの対応に関する知識、認識については、さらなる向上が必要であるとされた。一方で、演習を行うことで自治体と国の関係性について、どのタイミングで国民保護計画に切り替えるか、根拠を見出すことができた。
結論
国内外の最新動向等を分析し、本邦対応体制の脆弱性を評価し、その結果を、国の対策強化に反映させることができた。

公開日・更新日

公開日
2019-12-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-16
更新日
2019-12-23

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201826004B
報告書区分
総合
研究課題名
CBRNEテロリズム等の健康危機事態における原因究明や医療対応の向上に資する基盤構築に関する研究
課題番号
H28-健危-一般-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 明石 真言(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 本部放射線緊急時)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 木下 学(防衛医科大学校 免疫微生物学講座)
  • 齋藤 大蔵(防衛医科大学校 防衛医学研究センター外傷研究部門)
  • 嶋津 岳士(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 竹島 茂人(自衛隊中央病院 救急科)
  • 高橋 礼子(愛知医科大学 災害医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省の健康危機管理・テロリズム対策の強化は喫緊の課題であり、国内外の最新動向等を分析し、本邦対応体制の脆弱性を評価し、その結果を、国の対策強化に資すること
研究方法
本邦の有識者を研究分担者・協力者とし、それぞれCBRNE災害に対する国際的な動向にかかわる研究、CBRNEテロ、災害に対する国内ネットワークにかかわる研究、CBRNEテロ、災害の事例に関する研究、厚生労働省国民保護計画の課題と対応に関する研究に分担し、研究を行った。
結果と考察
CBRNE災害に対する国際的な動向にかかわる研究では、海外からの情報を多く収集した結果、日本におけるテロリズム等の不測の事態が発生した際のシビリアンのための救急救護・医療爆傷に対する救護体制は、いまだ確立していないと言って過言ではないことから、2020年にオリンピック・パラオリンピック開催を控えて、この問題を議論して、万が一のための救護体制を確立する必要があると考えられた。CEWGのワークショップにおいて、フェンタニル系薬物やノビチョクなど新しい化学剤の開発、さらにOpioidを用いた化学テロの脅威は世界的に増大していることがわかっている。本邦は大阪G20 サミットを6月に控え、化学テロ、特にOpioidを用いたテロ(多数傷病者事案)に関する認識を改める必要があり、Opioidに対する的確な対応手順の確立、すなわち、診断手順の共有、防護服や解毒剤(naloxone)の整備、組織間の連携構築と実務的な訓練を行うとともに、国際的な連携を深めることが重要であると考えられた。CBRNEテロ、災害に対する国内ネットワークにかかわる研究では、国際的イベントを控えた本邦におけるCBRNEテロの脅威の評価とその対処法等について、医療従事者・研究者のみならず、医療・消防・セキュリティ等の行政担当者や軍事関連の専門家等が、それぞれの立場から討議・意見交換を行い、特にオピオイドやノビチョクなどの新興の化学テロ脅威については、本邦における知見が少ない状況の中ではあるものの、国際的イベントに向け、各種対応手段の検討を進めるべきであると考えられた。CBRNEテロ、災害の事例に関する研究では、放射線分野に関係する国内外の指針、ガイドラン、関連する技術開発の動向等の情報を同定、収集、分析し、頻度が少ないテロ・災害に対する関係機関の相互理解、共通認識が必要であると考えられた。このために放射線テロ対策として、事故の分析、薬剤の備蓄、病院前医療体制の整備、研修、訓練のさらなる充実が図られるべきである。厚生労働省国民保護計画の課題と対応に関する研究では、炭疽菌を用いた生物テロが発生したと仮定した図上演習プログラムを作成し実施した。リスク・コミュニケーションの立場から、情報のメディアへの公開については、県で一本化すること、関係機関間での情報の確認と共有を図ることが必要との結論を得た。国民保護計画のうち、生物テロへの対応について、法的な枠組みの検証以前に、平時の取組をどの時点で国民保護計画に切り替えるかという点については、平時から情報が医療機関から衛生部局に流れる仕組みの構築が不可欠であると考えられた。 自治体における生物テロへの対応に関する知識、認識については、さらなる向上が必要であるとされた。一方で、演習を行うことで自治体と国の関係性について、どのタイミングで国民保護計画に切り替えるか、根拠を見出すことができた。
結論
国内外の最新動向等を分析し、本邦対応体制の脆弱性を評価し、その結果を、国の対策強化に反映させることができた。

公開日・更新日

公開日
2019-12-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-16
更新日
2019-12-23

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201826004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在わが国はCBRNEテロ災害の脅威に向けた準備が求められており、厚生労働省の健康危機管理・テロリズム対策の強化は喫緊の課題である。そこで本研究においては、国内外の人的ネットワークを確立し、そのネットワークを通じて最新の健康危機管理・テロリズム対策に関する指針・ガイドライン及びこれらに関連する技術の開発の動向等の知見を集約し、また、国内外の事例を収集、分析することで本邦の対応体制の脆弱性を評価した。その結果を厚生労働省に提示することで健康危機管理・テロリズム対策の強化につながる知見を提供した。
臨床的観点からの成果
該当しない
ガイドライン等の開発
該当しない
その他行政的観点からの成果
一例として、海外から収集した知見の中で、フェンタニル系薬物やノビチョクなど新しい化学剤の開発、さらにOpioidを用いた化学テロの脅威は世界的に増大していること、世界的にその対応方法を検討していることなどがわかった。それを基に、国際的イベントを控えた本邦におけるCBRNEテロの脅威の評価とその対処法等について、特にオピオイドやノビチョクなどの新興の化学テロ脅威については、本邦における知見が少ない状況であり、国際的イベントに向け、各種対応手段の検討を行政として進めるきっかけとなった。
その他のインパクト
該当しない

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-06-18
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201826004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,314,000円
(2)補助金確定額
4,314,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 123,803円
人件費・謝金 1,664,701円
旅費 1,054,311円
その他 476,185円
間接経費 995,000円
合計 4,314,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
-