発達期における統合的な遅発性神経毒性試験法の開発

文献情報

文献番号
201825003A
報告書区分
総括
研究課題名
発達期における統合的な遅発性神経毒性試験法の開発
課題番号
H28-化学-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 大樹(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 吉田 祥子(豊橋技術科学大学)
  • 上野 晋(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 秦 健一郎(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
13,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、自閉症など発達障害が急速に増加し社会問題となっている。その原因の一つとして、発達期における化学物質の曝露の可能性が考えられる。発達期の神経系は成体と比較して感受性が高く、健康被害が長期間あるいは遅発性に生じる可能性が想定され、子どもの健康影響評価法の確立が強く望まれる。
現在、OECDやEPAによって、妊娠ラットを用いる発達神経毒性試験ガイドラインが制定されているが、試験方法が複雑で、試験期間は1年以上、動物数は720にも及び経費も膨大である。さらに、日本ではこのようなガイドラインは未整備である。そこで我々は、発達期における細胞機能異常と神経回路異常の毒性作用メカニズムに基づいて、新たにスループット性の高い発達神経毒性評価スキームを作製し、統合的な発達神経毒性試験法の開発を行っている。

研究方法
本年度は、ヒトiPS細胞(神経発達のモデル細胞)を用いて、化学物質のcase studyとして、ゼブラフィッシュで発生毒性が懸念されている銀ナノ粒子の検証を行った。ラット海馬ニューロンを用いてスループット性の高いスクリーニング系を構築し、HESI NeuToxの検証試験に参加した。動物データとの橋渡しを考えるうえで、ラット小脳および海馬(生後初期における遅発性毒性評価系)を用いてin vitroとin vivoデータの相関を検討するとともに、DoHaDコンセプトに基づいて、バルプロ酸投与症例の胎盤のメチル化情報の揺らぎによる検証を行った。
結果と考察
ヒトiPS細胞を用いて、化学物質のcase studyとして、ゼブラフィッシュで発生毒性が懸念されている銀ナノ粒子の検証を行った結果、その発生毒性を検出することができた。ラット海馬ニューロンを用いてスループット性の高いスクリーニング系を構築し、HESI NeuToxの検証試験に参加し、検証試験データを提出した。現在、参加者によりデータ解析中である。ラット小脳および海馬(生後初期における遅発性毒性評価系)を用いて、in vitroとin vivoデータに相関があり、それぞれの評価系の有用性を明らかにした。また、ヒトデータとして、バルプロ酸投与症例の胎盤のメチル化情報の揺らぎによる検証を行い、メチル化状態に影響が出る可能性が考えられた。
結論
本研究により、胎児期、成熟期において陽性対照となる化学物質を用いて、ヒトiPS細胞から動物、ヒト試料までの評価系の有用性を明らかにして、DNT評価系を構築した。

公開日・更新日

公開日
2019-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201825003B
報告書区分
総合
研究課題名
発達期における統合的な遅発性神経毒性試験法の開発
課題番号
H28-化学-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 大樹(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 吉田 祥子(豊橋技術科学大学)
  • 上野 晋(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 秦 健一郎(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、自閉症など発達障害が急速に増加し社会問題となっている。その原因の一つとして、発達期における化学物質の曝露の可能性が考えられる。発達期の神経系は成体と比較して感受性が高く、健康被害が長期間あるいは遅発性に生じる可能性が想定され、子どもの健康影響評価法の確立が強く望まれる。
現在、OECDやEPAによって、妊娠ラットを用いる発達神経毒性試験ガイドラインが制定されているが、試験方法が複雑で、試験期間は1年以上、動物数は720にも及び経費も膨大である。さらに、日本ではこのようなガイドラインは未整備である。そこで本研究では、発達期における細胞機能異常と神経回路異常の毒性作用メカニズムに基づいて、新たにスループット性の高い発達神経毒性評価スキームを作製し、統合的な発達神経毒性試験法の開発を行うことを目的とする。

研究方法
ヒトiPS細胞など胎児期の神経発生モデル細胞を用いたスクリーニングを行い(細胞評価グループ)、生後の成熟期における遅発性神経毒性の早期予測評価法(神経ネットワーク評価グループ)により動物との橋渡しを行う。また、上記2グループにヒト毒性データ検証グループを加えた3グループの密な連携により、これらの発達神経毒性(DNT)の評価系やヒト試料の有用性を明らかにする。さらに、現在進行中のOECD DNTグループとの国際連携のもと、試験法の確立に向けて科学的根拠を取得する。
結果と考察
本研究においては、ヒトiPS細胞(神経発達のモデル細胞)のミトコンドリア機能などを指標にして、化学物質の評価に一定の予測性があることを明らかにした。動物データとの橋渡しを考えるうえで、ラット小脳および海馬(生後初期における遅発性毒性評価系)を用いてin vitroとin vivoデータの相関を示す明らかにするとともに、ラット海馬ニューロンを用いてスループット性の高いスクリーニング系を構築し、HESI NeuToxの検証試験に参加して実験プロトコルを整備して検証試験に参加して、データを提出した。現在、国際グループによりデータを詳細に解析中である。また、DoHaDコンセプトに基づいて、バルプロ酸投与症例の胎盤のメチル化情報の揺らぎによる検証を行い、メチル化状態に影響が出る可能性が考えられた。
結論
陽性対照となる化学物質を用いて、胎児期、成熟期においてin vitro DNT試験法を構築した。現在、OECDの専門委員として様々な評価系の議論を行っており、新たなDNTガイダンスの作製に取り組む予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201825003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒトiPS細胞、ラット神経細胞を用いた多点電極アレイシステム、脳スライス標本、ヒト胎盤のエピゲノム情報などの評価系を確立し、総合的な発達神経毒性の評価系を構築した。
臨床的観点からの成果
DoHaDコンセプトに基づいて、バルプロ酸投与症例の胎盤を用いてメチル化情報の揺らぎによる検証を行い、その有用性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
2023年4月にDNT in vitro testing battery (DNT-IVB) GDのinitial documentがWNTで承認された。IVBには17種類のin vitro試験法が記載されており、ヒトiPS細胞やラット神経細胞を用いた多点電極アレイシステムが含まれている。引き続き、専門委員として本ガイダンスに貢献する。
その他行政的観点からの成果
DNT-IVB GDにはヒトiPS細胞やラット神経細胞を用いた多点電極アレイシステムも組み込まれて、IVBの主要なアッセイの一つになっているが、多施設間の検証が不十分である。引き続き、評価法の再現性や信頼性、予測性などを検証する必要がある。将来的に、化審法など化学物質の管理に活用されることが期待される。
その他のインパクト
第60回日本神経化学会大会(2017年9月、仙台)、第9回アジア・オセアニア生理学会連合2019年大会(2019年3月、神戸)および薬理部主催公開シンポジウム(毎年2月に東京で開催)などで、本研究に関わるシンポジウムを開催した。また、本評価系に関する論文が、第25回日本毒性学会田邊部賞を受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamada S., Asanagi M., Hirata N. et al.
Tributyltin induces mitochondrial fission through Mfn1 degradation in human induced pluripotent stem cells.
Toxicol In Vitro , 34 , 257-263  (2016)
10.1016/j.tiv.2016.04.013
原著論文2
Asanagi M., Yamada S., Hirata N. et al.
Tributyltin induces G2/M cell cycle arrest via NAD(+)-dependent isocitrate dehydrogenase in human embryonic carcinoma cells
J Toxicol Sci , 41 , 207-215  (2016)
10.2131/jts.41.207
原著論文3
Hirata N., Yamada S., Asanagi M. et al.
Nicotine induces mitochondrial fission through mitofusin degradation in human multipotent embryonic carcinoma cells
Biochem Biophys Res Commun. , 470 , 300-305  (2016)
10.1016/j.bbrc.2016.01.063
原著論文4
Yamada S., Kubo Y., Yamazaki D. et al.
Chlorpyrifos inhibits neural induction via Mfn1-mediated mitochondrial dysfunction in human induced pluripotent stem cells
Sci Rep , 7 , 40925-  (2017)
10.1038/srep40925
原著論文5
Yamada S., Kubo Y., Yamazaki D. et al.
Tributyltin Inhibits Neural Induction of Human Induced Pluripotent Stem Cells
Sci Rep , 8 , 12155-  (2018)
10.1038/s41598-018-30615-2
原著論文6
Yamada S., Yamazaki D., Kanda Y.
Silver nanoparticles inhibit neural induction in human induced pluripotent stem cells
Nanotoxicology , 14 , 1-11  (2018)
10.1080/17435390.2018.1481238
原著論文7
Yamada S., Yamazaki D., Kanda Y.
5-Fluorouracil inhibits neural induction via Mfn1/2 reduction in human induced pluripotent stem cells
J Toxicol Sci. , 43 , 727-734  (2018)
10.2131/jts.43.727
原著論文8
Fueta Y., Sekino Y., Yoshida S. et al.
Prenatal exposure to valproic acid alters the development of excitability in the postnatal rathippocampus
Neurotoxicology , 65 , 1-8  (2018)
10.1016/j.neuro.2018.01.001
原著論文9
Fueta Y., Ishidao T., Ueno S. et al.
Prenatal exposure to 1-bromopropane causes delayed adverse effects on hippocampal neuronal excitability in the CA1 subfield of rat offspring
J Occup Health , 60 , 74-79  (2018)
10.1539/joh.17-0009-BR
原著論文10
Yamazaki D., Kanda Y., Sekino Y.
Field potential recording method using multi-electrode array system-Cellular responses in human iPSC-derived cardiomyocytes and rodent brain-derived neurons
BUNSEKI , 7 , 290-295  (2017)
原著論文11
佐塚文乃,山田茂,山崎大樹,et al.
ヒトiPS細胞を用いた医薬品の副作用予測法の開発と国際標準化
情報技術強会  (2019)
原著論文12
Mabuchi H., Ong HY., Watanabe K.et al.
Visualization of Spatially Distributed Bioactive Molecules Using Enzyme-Linked Photo Assay
IEEJ Trans Fund Materials , 136 , 99-104  (2016)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2023-06-06

収支報告書

文献番号
201825003Z