一般用漢方製剤の使用上の注意の整備と安全使用に関する研究

文献情報

文献番号
201824024A
報告書区分
総括
研究課題名
一般用漢方製剤の使用上の注意の整備と安全使用に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-010
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
袴塚 高志(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 政田 さやか(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 能勢 充彦(名城大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,平成23年度に実施された一般用生薬・漢方製剤のリスク区分の見直しに伴う一般用漢方製剤の安全使用に資する環境整備のためのツールの普及・促進と,漢方製剤による副作用の原因成分の体内動態に影響を及ぼす要因の検討と,一般用漢方製剤の添付文書における使用上の注意等の見直しを実施するレギュラトリーサイエンス研究であり,厚生労働行政への貢献を通した国民の健康と安全の確保を目的とする.
研究方法
漢方製剤の安全使用に資するツールに関する研究では,PMDAのホームページにおいて使用上の注意の改訂があった一般用漢方処方を確認した.また,一般用漢方製剤の情報提供サイト「漢方セルフメディケーション」の約1年間のアクセス状況を解析し,さらに,トップページに無償無記名のアンケートフォームを設置して利用者の意見を収集した.
漢方製剤の安全性確保に関する研究では,グリチルリチン酸(GL)あるいは漢方処方エキス(小青竜湯及び小柴胡湯)をマウスに経口投与して一定時間後に採血し, 血中グリチルレチン酸(GA)濃度をHPLCにより定量した.
一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究では,日本漢方生薬製剤協会安全性委員会の協力を得ながら,医師,病院薬剤師,薬局薬剤師,大学教員,国立衛研生薬部員より構成された研究班を開催し,一般用漢方製剤の適用を考慮した使用上の注意の記載事項の見直しについて検討した.
結果と考察
漢方製剤の安全使用に資するツールに関する研究では,一般用漢方製剤における使用上の注意の改訂に対応し,安全に使うための漢方処方の確認票(確認票)の情報を更新した.また,「漢方セルフメディケーション」ホームページについて,公開2年目のアクセス状況を解析したところ,アクセス数は順調に増加しており,スマートフォンやタブレット端末での利用が主流となっていることが明らかになった.アンケート調査の結果では,主に薬剤師や登録販売者のような販売者に多く利用され,高く評価されていた.
漢方製剤の安全性確保に関する研究では,投与時の溶液のpHがGA血中濃度に与える影響をマウスにて検討したところ,GAの動態はpHによって影響を受けるが,小柴胡湯と小青竜湯の血中GA動態の違いを説明できるまでには至らなかった.一方,小柴胡湯に配合されているオウゴンが,小柴胡湯投与時の血中GA濃度に影響を与えることが分かり,処方毎に複数の要因が成分の吸収・代謝・排泄に影響を与えていることが示唆された.
一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究では,妊産婦に対する「相談すること」の注意喚起について,「医療用漢方製剤148処方「使用上の注意」の業界統一と自主改訂」に妊産婦に関する生薬別記載内容基準が定められた生薬を配合しておらず,かつ,妊産婦の服用が想定される効能・効果を有する処方においては,妊産婦に関する注意喚起を削除する方向性が出された.また,高齢者に対する「相談すること」の注意喚起について,カンゾウ及びマオウが配合されていないにも関わらず,高齢者に関する注意喚起が施されている胃風湯においては,高齢者に関する注意喚起を削除する方向性が出された.さらに,麻黄湯において,「してはいけないこと」の「次の人は服用しないこと」に「体力の虚弱な人(体力の衰えている人,体の弱い人)」の記載があることについて,「相談すること」に移すことが可能であるか検討された結果,稀に起こる副作用の重篤度を鑑み,移さない方向で検討することとなった.一方,八味地黄丸及び知柏地黄丸の禁忌項に記載された「胃腸の弱い人,下痢しやすい人」については,副作用に重篤なものがないことから,相談項に移す方向で検討することとなった.今後,対象となった処方の副作用調査等を経て研究班としての提案を出すこととなる.
結論
一般用漢方製剤の使用上の注意の改訂に合わせて,「確認票」の内容を更新した.「漢方セルフメディケーション」ホームページにおけるアンケート調査の結果をもとに,今後,サイトを修正,改善するとともに,広く周知活動を行うこととした.マウスを用いて,GL投与時の溶液のpHが血中GA濃度推移に及ぼす影響を検討したところ,小柴胡湯よりも小青竜湯でCmaxやAUC0-48が高値を示した理由がエキスのpHの低さによるものではないことが分かった.一方,小柴胡湯における血中GA濃度推移は配合生薬のオウゴンの影響を受けることが確認され,カンゾウ配合漢方処方の有効性や安全性を確実に担保していくためには,血中GA濃度推移を処方ごとに検討し,データを整備する必要があるものと考えられた.一般用漢方製剤の使用上の注意の記載事項について,妊産婦及び高齢者に対する「相談すること」の注意喚起,並びに,八味地黄丸及び知柏地黄丸の禁忌項について見直しを行う方向性が示された.

公開日・更新日

公開日
2019-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,226,368円
人件費・謝金 1,345,659円
旅費 219,068円
その他 1,208,905円
間接経費 0円
合計 6,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-01-07
更新日
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