サリドマイド胎芽症患者の健康、生活実態の把握及び支援基盤の構築

文献情報

文献番号
201824016A
報告書区分
総括
研究課題名
サリドマイド胎芽症患者の健康、生活実態の把握及び支援基盤の構築
課題番号
H29-医薬-指定-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
日ノ下 文彦(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
15,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サリドマイド胎芽症(サ症)者の人間ドック健診を継続しつつ、サ症者の苦痛や悩みに沿って直接個人に還元できる医療支援も提供する。前年度実施した健康生活実態調査(以後、実態調査)を総括し、初老期を迎えるサ症者に対する有効な方策や適切な診療の参考にする。第3回サ症研究会を開催して情報の共有化をはかるほか、「サ症診療ガイド2017」の英語版を作成して欧州の専門家らに配布し、さらに研究班員が欧州の専門家を訪れて情報交換、意見交換を行い国際展開を推進する。
研究方法
1.人間ドック健診:従来のドック健診と精神科アンケート調査を継続。
2.第3回サ症研究会:隔年開催の研究会に研究班員や関係者が参集して最近の研究や活動内容を報告して総括するとともに、サリドマイドの薬理に詳しい東京医大半田宏教授やサ症の実臨床に詳しい ドイツのDr. Rudolf Beyer の特別講演を拝聴。
3.独英の専門家訪問:サ症の検討や支援活動を続けている独英の専門家を訪れ、互いの成果を発表して情報を共有するとともに、研究班員が疑問に感じている質問を投げかけて問題点を整理するほか、海外の専門家から得た有用な回答を今後の活動に生かす。
4.第2次実態調査: 2018年初頭に実施した実態調査の結果をまとめ研究会等で報告。
5.その他:①「サ症診療ガイド 2017」の英語版を完成させ欧州の専門家に配布 ②疼痛やADL低下で悩むサ症者に対しリハビリ専門医が個別に面談 ③リクエストに応じてリハビリ以外の領域の問題に対しても各専門家が診療 ④海外のサ症研究者、専門家との交流継続 ⑤サ症研究会HPをアップデート
結果と考察
1.研究班に属する3つの医療施設でサリドマイド胎芽症者20名に日帰りの人間ドック健診を実施した。この健診の意義は、通常 気づかれにくい疾患や異常をチェックすることであり、特に短腕のサ症者では検討し難い高血圧や脂質異常症、耐糖能障害、脂肪肝、慢性腎臓病 (CKD) 、先天的な解剖学的異常などに注意しながら精査した。脂肪肝や体内脂肪の蓄積、脂質異常症、骨密度低下などの生活習慣病や上部消化管の問題を有する受診者が比較的多く、個々の受診者にそれぞれの問題点をフィードバックできた。
2.サ症研究会では、研究班員10名が直近2,3年の成果を発表。半田先生から “Mechanisms of Thalidomide Terato- genicity”、Dr. Beyer から “Pain and Mobility in People with Thalidomide Embryopathy” の特別講演を拝聴。研究班員や演者合わせて計50名が出席。
3.訪欧では、独英のサ症専門家から有益な情報や質問に対する回答を得た。Dr. Becker Rhein-Sieg- Klinik (Nümbrecht) ではProf. Peters が “German-Jpanese Symposium on Thalidomide Embryopathy” を企画し、サ症者やコメディカルも含めた幅広い交流ができた。
4.実態調査では173名のサ症者から回答を得た。同年代の一般人コホートと比べ健康状態や身体機能が生活や活動に大きな影響を与えていたほか、生活習慣病や頻度の高い疾患に対し医療施設やマッサージなどに通う比率が一般人より高かった。
5.その他:① “2017 Guide for the Management of Thalidomide Embryopathy” は欧州の多くのサ症関連施設・専門機関に送られ、わが国のサ症診療の実状を欧州いアピールできた。②希望者5名にベテランのリハビリ専門医が面談したが、各個人に有用な対策を直接フィードバックでき有意義な対策だと考えている。③リハビリ科以外でも国立国際医療研究センターで2, 3名を診療。④ドイツや英国からしばしば新しい成果や情報が提供されるほか、本邦の研究班からも “2017 Guide for the Management of Thalidomide Embryopathy” やサ症に関する英文総説の発表を伝えるなど双方向の情報発信、交流が機能している。⑤HP (http://thalidomide-embryopathy.com) にはサ症研究会や第2回国際サ症シンポジウムの開催通知などをアップ。
結論
本研究班で計画した活動・研究はほぼ完遂できており、充実した成果につながった。今後は、実態調査の結果を踏まえ、これまでの検討で浮き彫りになった問題点と有機的に結び付け、サ症者の健康増進、問題の解決に役立つ方策を追究していきたい。

公開日・更新日

公開日
2019-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-09-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824016Z