美白成分の安全性評価法の策定に関する研究

文献情報

文献番号
201824013A
報告書区分
総括
研究課題名
美白成分の安全性評価法の策定に関する研究
課題番号
H29-医薬-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 荒瀬 規子(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 鈴木 民夫(山形大学大学院 医学系研究科)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ロドデノール(RD)配合薬用化粧品による白斑発症に関しては、症例の多くは改善したが、一部の患者では塗布部以外にも白斑が波及する難治性白斑が見いだされ、病態や発症機序には未だ不明の点が残されている。本研究は、患者由来組織やモデル動物を用いさらなる解明を進める。また白斑誘導性類似化合物に共通するチロシナーゼによる代謝活性化に注目して測定方法を検討し、美白成分の安全性評価法策定への貢献をめざす。
研究方法
原因究明:RD配合薬用化粧品による白斑症例ならびに健常人の検体を解析した。機関研究倫理審査委員会の承認を取得し、試料データは連結可能匿名化し研究を進めた。またRD白斑モデルマウスを用いて病態解明を行った。
安全性評価法の構築:RDおよび類似化合物のチロシナーゼによる代謝とSHとの反応をin vitroおよびヒトチロシナーゼ高発現細胞モデルで解析した。
結果と考察
[I]原因究明:患者および健常人検体の解析を行い、皮膚の免疫組織学的検討では、肥満細胞の脱顆粒率は難治例病変部において有意に上昇することが判明した。尋常性白斑患者で認められる抗甲状腺抗体や抗メラノサイト抗体がRD白斑患者では有意に認めないことが判明し異なる発症機構が示唆された。RD白斑部での色素再生を促進する活性型ビタミンD3の分子機序に関わる候補遺伝子を見出した。
[II]安全性評価法の構築:RDや白斑誘導性類似化合物に共通するチロシナーゼによる代謝活性化について、in vitro あるいは細胞で評価手法を検討した。In vitroでは①23種の4置換フェノールのチロシナーゼ依存的なSHペプチドとの結合を解析し、側鎖構造と反応性との関係を明らかにした。②4-置換フェノール構造を有するレスベラトロール(RES)のチロシナーゼによる代謝、SHとの反応性、代謝産物のプロオキシダント活性を明らかにした。また③グルタチオン・システイン付加体生成のヒトチロシナーゼ高発現細胞を用いた評価手法を構築し、毒性評価に比較して有用であることを示した。
結論
 RD白斑において、RD誘発性脱色素斑の難治化に、肥満細胞の脱顆粒が関わる可能性が示された。RD誘発白斑では患者の自己免疫的背景は尋常性白斑より少なく、白斑発症にも自己免疫の関与がやや薄い可能性が示された。また活性型ビタミンD3による白斑部色素再生に関わる候補遺伝子を見出した。
 美白成分の安全性評価法の確立に向け、in vitroで各種4置換フェノール類の構造とチロシナーゼによる代謝活性化との関係を解析するとともに、同じく4-置換フェノール構造を有するレスベラトロール(RES)の代謝活性化と酸化促進作用を明らかにした。また細胞毒性ではなく、細胞を用いたSH付加体産生の評価が有用であることを示した。さらなる解析を進め、新たな健康被害防止につなげる予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201824013B
報告書区分
総合
研究課題名
美白成分の安全性評価法の策定に関する研究
課題番号
H29-医薬-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 荒瀬 規子(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 鈴木 民夫(山形大学大学院 医学系研究科)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール(RD)配合薬用化粧品による白斑発症に関しては、症例の多くは改善したが、一部の患者では塗布部以外にも白斑が波及する難治性白斑が見いだされ、病態や発症機序には未だ不明の点が残されている。本研究は、患者由来組織やモデル動物を用いさらなる解明を進める。また白斑誘導性類似化合物に共通するチロシナーゼによる代謝活性化に注目して測定方法を検討し、美白成分の安全性評価法策定への貢献をめざす。
研究方法
原因究明:RD配合薬用化粧品による白斑症例ならびに健常人の検体を解析した。機関研究倫理審査委員会の承認を取得し、試料データは連結可能匿名化し研究を進めた。またRD白斑モデルマウスを用いて病態解明を行った。
安全性評価法の構築:RDおよび類似化合物のチロシナーゼによる代謝、SHとの反応、代謝物の酸化促進作用、細胞毒性との関係を解析した。一部は可溶型ヒトチロシナーゼ、ヒトチロシナーゼ高発現細胞モデルを調製し利用した。
結果と考察
[I]原因究明:前期研究班に引き続き、患者および健常人検体の解析を行い、①皮膚の免疫組織学的検討ではメラノサイトのγグルタミルシステイン合成酵素が改善例では高く、Eカドヘリンは改善例・難治例ともに低く、メラノサイトのグルタチオン・遊走性の低下と難治化との関連が推定された。②肥満細胞の脱顆粒率は難治例病変部において有意に上昇することが判明した。③RD白斑病変部皮膚角化細胞において接着に関わるgpNMBの低下が見出され、白斑発症との関連が示唆された。④尋常性白斑患者で認められる抗甲状腺抗体や抗メラノサイト抗体がRD白斑患者では有意に認めないことが判明し異なる発症機構が示唆された。⑤モデルマウスでRD白斑部色素再生への活性型ビタミンD3と紫外線照射の効果を明らかにし、色素再生の機序に関わる候補遺伝子を見出した。
[II]安全性評価法の構築:RDや白斑誘導性類似化合物に共通するチロシナーゼによる代謝活性化について、in vitro あるいは細胞での評価手法を検討した。(1)In vitroでは①23種の4置換フェノールのチロシナーゼ依存的なSHペプチドとの結合を解析し、側鎖構造と反応性との関係を明らかにした。②4-置換フェノール構造を有するレスベラトロール(RES)のチロシナーゼによる代謝、SHとの反応性、代謝産物のプロオキシダント活性、③代謝物RDユーメラニンの酸化促進作用のUVAによる増強を明らかにした。④従来のマッシュルームチロシナーゼに代え、ヒトチロシナーゼの可溶ドメインを調製し、11種の4-置換フェノール類の代謝を測定することに成功した。(2)細胞を用いた評価方法については、①チロシナーゼ代謝による細胞毒性増強をB16BL6メラノーマ細胞のチロシナーゼ発現量・活性の改変により検証したが、ヒトチロシナーゼ高発現293T細胞の場合と同様に、RDを含め白斑誘導能との相関は認められなかった。②グルタチオン・システイン付加体生成のヒトチロシナーゼ高発現細胞を用いた評価手法を構築し、毒性評価に比較して有用であることを示した。
結論
 RD白斑において、脱色素斑の難治化にメラノサイトのグルタミルシステイン合成酵素発現の個体差、肥満細胞の脱顆粒が関わる可能性が示された。白斑病変部表皮角化細胞の接着に関わるgpNMBの低下が白斑に関与する可能性が示唆された。RD誘発白斑では患者の自己免疫的背景は尋常性白斑より少なく、白斑発症にも自己免疫の関与がやや薄い可能性が示された。またモデルマウスで白斑部色素再生へのVitD3と紫外線照射の効果が明らかにされ、活性型ビタミンD3による色素再生に関わる候補遺伝子を見出した。
 美白成分の安全性評価法の確立に向け、各種4置換フェノール類の構造とチロシナーゼによる代謝活性化との関係、RESやRDメラニンの酸化促進作用をin vitroで解明した。またヒトチロシナーゼのin vitroおよび細胞モデルでの利用を可能にした。細胞を用いた代謝活性化の評価には、細胞毒性ではなく、SH付加体産生の評価が有用であることを示した。さらなる解析を進め、新たな健康被害防止につなげる予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-07-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201824013C

収支報告書

文献番号
201824013Z