文献情報
文献番号
201823023A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発に関する研究
課題番号
H28-食品-指定-010
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 渡邉敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
- 堤智昭( 国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
- 井之上浩一(立命館大学 薬学部)
- 岡明(東京大学 医学部)
- 畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品中には、ダイオキシン類(DXNs)、有害元素、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)や副生成物などの有害物質が含まれている。食品中の有害物質の基準値設定の検討を行うためには、汚染量実態・摂取量実態の把握が重要である。国際規格設定には我が国の汚染実態データは必須となっている。またDXNs対策特別措置法においても、食品の基準値設定によるリスク管理でなく、摂取量調査によるリスク管理を行うことが方針となっており、継続した摂取量調査が求められている。本研究ではトータルダイエット試料の分析により濃度を明らかにし、食事を介した有害物質の摂取量を推定することを目的とする。一部の有害物質の摂取量に関しては継続的に推定し、摂取量の経年的推移を明らかにする。また乳児におけるDXNs対策の検証や乳幼児への影響を調べるために、人体汚染の指標として母乳中のDXNs濃度を分析し、その経年的な変化を調査する。
研究方法
暴露マージン(MOE)を指標とした化学物質のリストを更新・発展させながら、摂取量推定すべき有害物質を選定した。全国約10地域で調製するトータルダイエット試料(TD試料)を用いてDXNs、PCBs、有害元素類摂取量を推定した。ヒ素や水銀については、形態別摂取量を推定した。ハロゲン系難燃剤のうち、特に塩素系難燃剤(デクロラン類)について調査し、年次推移を明らかにすること及び全国規模の摂取量推定を検討した。GC-MS/MSを用いた魚中のDXNs分析の基礎検討を行った。出産1か月の母乳提供を求め、母乳中のDXNs濃度の測定と児の発育を評価した。
結果と考察
トータルダイエット(TD)試料を用いて、DXNsの国民平均一日摂取量を推定した。体重(50 kgと仮定)あたりのDXNsの全国平均摂取量は0.51(範囲:0.25~1.13)pg TEQ/kg bw/dayと推定された。PCBsの全国平均摂取量は、250 ng/person/dayと推定された。体重(50 kgと仮定)あたりでは5.0 ng/kg bw/dayと推定され、この値は日本の暫定耐容一日摂取量(TDI)の0.1%であった。DXNs濃度が比較的高い魚試料(7種、14試料)を開発したGC-MS/MS並びに高分解能GC/MSによるDXNs分析を行い、DXNs異性体の実測濃度を比較した。GC-MS/MS分析で定量下限値以上となった殆どのDXNs異性体の実測濃度は、高分解能GC/MS分析の実測濃度の±20%以内に収まり、両者の濃度は良く一致していた。鉛、カドミウム、ヒ素(総ヒ素並びに無機ヒ素)、水銀(総水銀並びにメチル水銀)を含む17種の元素類の全国・全年齢層平均摂取量はカドミウム:19.1μg/man/day、鉛:10.1μg/man/day、スズ:162.6μg/man/day、クロム:62.5 μg/man/day等と推定された。総ヒ素と無機ヒ素の全国平均摂取量は、それぞれ230μg/man/day、16.8μg/man/dayと推定された。総水銀とメチル水銀の全国16.8平均摂取量は、それぞれ6.5μg/man/day、5.8μg/man/dayと推定された。初産婦の出産後1か月の母乳中のダイオキシン濃度を測定した母乳中のダイオキシン濃度(PCDDs+PCDFs+Co-PCBsの合計)は、平均8.10 pg-TEQ/g-fatであった。平均値の経緯をみると平成25年度以降、7.3から9.78 pg-TEQ/g-fatを推移しており、それまで認められた漸減傾向が明らかではなくなってきている。
結論
DXNsの摂取量調査を実施した結果、平均一日摂取量は0.51 pg TEQ/kg bw/dayであった。ダイオキシン摂取量は行政施策の効果などもあり経年的な減少傾向が示唆されている。しかし、依然としてTDIの13%程度を占めており、この値はDDT等の塩素系農薬やPCBsの摂取量がそれらのTDIに占める割合と比較すると非常に高い値である。今後もダイオキシン摂取量調査を継続し、DXNs摂取量の動向を調査する必要があると考えられる。PCBsの摂取量調査を実施した結果、一日摂取量の全国平均値は250 ng/person/dayと推定された。体重あたりでは5.0 ng/kg bw/dayと推定され、この値は日本の暫定TDIの僅か0.1%であった。GC-MS/MSによるDXNsの分析はHRGC/MSと比較すると装置の感度の面では劣るものの、DXNs濃度が比較的高い魚試料についてはHRGC/MSと良く一致した分析値が得られた。平成30年度に提供を受けた初産婦の母乳中のDXNs濃度は、調査開始時からの長期間の漸減傾向の後、平成25年以降は同レベルで推移しており、定常的なレベルに達していることが考えられた。
公開日・更新日
公開日
2019-11-26
更新日
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