食品用途となるナノマテリアルの暴露による毒性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201823008A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用途となるナノマテリアルの暴露による毒性評価に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • チョウ ヨンマン(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所生 化学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 )
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、食品・食品容器包装用途として用いられ、経口及び経皮から暴露されるナノマテリアルについて、アジュバント作用などの免疫毒性を含む安全性評価に資する評価方法の整備とデータの蓄積と、食品関連分野を中心としたナノマテリアルの暴露状況やリスク評価に関する国際動向の把握も目的とする。
研究方法
Adachi ら (Allergy. 2012;67 (1392-1399)) の方法に準じて卵白アルブミン (OVA)の経皮感作後、OVAの腹腔内投与惹起による免疫毒性に関して、コレラトキシンBサブユニット (CTB)のアジュバント陽性対照としての効果を検討するため、OVAを前年度より高濃度のCTBと混合して処置する群を設定し、感作及び惹起に関する比較を行った。経口投与によるアレルギー反応惹起について検討するため、OVA 経皮投与後、強制経口投与による追加免疫を7回行う群を設けて、感作及び惹起に関する比較を行った。また、ポリビニルピロリドン (Polyvinylpyrrolidone, PVP)で表面修飾したナノ銀(AgNP)の単回腹腔内投与による急性毒性について検討した。
酸化亜鉛については、酸化亜鉛C(径80 nm)を用いて抗原経皮感作時の増強効果を検討するとともに酸化亜鉛A(径25 nm)、酸化亜鉛B(径35 nm)、酸化亜鉛C(径80 nm)について、単回腹腔内投与を行い、急性毒性を検討した。経口惹起実験系検討のため、抗原(OVAまたはOM)を腹腔内投与し、7日後に再投与して感作した。その後、Day 14, 16, 18, 21に抗原を経口投与し追加免疫を行った。経過中、血清中抗原特異的抗体を測定し、Day 28に抗原を経口投与し、アレルギー反応惹起を検討した。
国際動向については、EFSAが主催している「食品および飼料分野におけるナノテクノロジーのリスクアセスメントに関する科学ネットワーク及び「食品添加物および食品に添加する栄養源に関する科学パネル」より、ナノ成分を含有する既存物質:①二酸化ケイ素の再評価、②ケイ酸カルシウム・ケイ酸マグネシウム・三ケイ酸マグネシウム及びタルクの再評価、③銀ヒドロゾルの安全性および生物学的利用能に係る科学的意見書について調査を実施した。
結果と考察
経皮暴露免疫毒性モデルにおいて、1μg以上のCTBの複合暴露はOVAによる感作及びアレルギー反応惹起に対してアジュバント効果を示すこと、及び、OVAを用いた経皮経口複合暴露免疫毒性モデルにおいて、経皮暴露後の経口暴露を複数回実施することにより、経口暴露でもアレルギー反応の惹起が誘発されることを明らかにした。
直径10,60,100 nm のPVP表面修飾AgNPは顕著な毒性は示さないものの、直径 5 nm のPVP表面修飾AgNPは体温低下に加えて肝臓等の肉眼及び病理組織学的検査で著しい変化が認められ、急性毒性を示すことを明らかにした。
酸化亜鉛(径80 nm)では抗原経皮感作時の増強効果は見られなかった。また、酸化亜鉛に関しては、酸化チタンと異なり急性毒性が見られ、肝臓、腎臓、及び胸腺やリンパ節に影響を与える可能性が示された。
経口追加免疫により感作性亢進した。追加免疫1、2回目では体温低下、下痢症状ともほとんど見られなかったが、追加免疫3、4回目、及び経口惹起時には、OVA投与群で体温が低下し、また、OVA投与群、OM投与群の両方で下痢症状が見られた。
EFSAのリスクアセスメントに関する改定ガイドラインについてはEU各国により、特に、物理化学的特性評価に関するガイダンスの修正は有用となる可能性があるものと判断されていた。また、既存物質の再評価では、既存の評価は有効ではないことが確認された。
結論
AgNPの経皮経口複合暴露によるアジュバント効果について検討可能な試験系がほぼ確立したと考えられ、次年度は、本経皮経口複合暴露免疫毒性モデルを用いたAgNPのアジュバント作用について検討する。
AgNPの毒性はサイズのみならず、表面修飾によって異なることが示された。
先行研究における結果と考え合わせ、ナノ酸化亜鉛の経皮感作増強効果は粒子径により異なり、粒子径が小さいナノ酸化亜鉛の方が経皮感作増強効果が大きいことが示唆された。
経口惹起実験系については、抗原の腹腔内投与感作後に経口投与追加免疫を行うことにより、最終的に経口暴露によりアレルギー反応を惹起することが可能であることが示された。今後は経皮感作-経口惹起の動物モデル実験系を確立し、ナノマテリアルの経皮/経口暴露が免疫応答に与える影響について検討を進める。
ナノ材料の物理化学的な特性評価や、毒性学的評価などの科学的知見についての情報は未だ不足していることが示され、今後もさらなる情報収集が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-03-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,894,421円
人件費・謝金 1,952,552円
旅費 1,065,362円
その他 1,088,799円
間接経費 0円
合計 11,001,134円

備考

備考
必要な消耗品の購入において、端数が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
-