文献情報
文献番号
201821042A
報告書区分
総括
研究課題名
ドクターヘリの適正利用および安全運航に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-医療-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
猪口 貞樹(東海大学 医学部医学科)
研究分担者(所属機関)
- 高山 隼人(長崎大学病院 地域医療支援センター)
- 荻野 隆光(川崎医科大学 医学部)
- 北村 伸哉(君津中央病院 救命救急センター)
- 早川 達也(聖隷三方原病院 高度救命救急センター)
- 中川 雄公(大阪大学 医学部)
- 土谷 飛鳥(独立行政法人国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター)
- 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 辻 友篤(東海大学 医学部)
- 田中 健一(慶應義塾大学 理工学部)
- 鵜飼 孝盛(防衛大学校 電気情報学群)
- 高嶋 隆太(東京理科大学 理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,110,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究の目的は、ドクターヘリの安全かつ効果的な運用体制を提言することである。併せて、ドクターヘリの安全かつ効果的な運用を継続的に検証するための症例登録システムおよびインシデント・アクシデント収集システムを整備する。本年度は3年計画の1年目である。
研究方法
①現状分析に関する研究:日本航空医療学会が収集した全国ドクターヘリ・データを用いて、急性冠症候群、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に対するドクターヘリの転帰改善効果を後ろ向きに解析した。
②運用システムの研究:1) ドクターヘリの搬送対象・運用方式の研究:日本航空医療学会が収集した全国ドクターヘリ・データを用いて、救急隊現場到着前要請(以下覚知要請)方式による時間短縮効果を検証した。2)要請件数の多い地域の実地調査:要請件数の多い鹿児島県の実地調査を行った。3)オペレーションズ・リサーチによる効果的な運用方法の検証:要請数が重複要請数に与える影響を、確率モデルを用いて検証した。通常運用および覚知要請の確率モデルを作成し、各地域の重複要請発生率を推定のうえ実データと比較検討した。
③症例登録システムに関する研究:全国ドクターヘリ症例登録システムについて検討し、登録項目を作成した。
④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究:全国ドクターヘリのインシデント・アクシデント収集・分析システムについて検討のうえ、システムを構築した。
⑤遠隔地航空搬送の研究:福島県の2か所のヘリ搬送システムについて実地調査を行った。
⑥安全管理基準の改訂:次年度予定している安全管理基準に関する調査・改訂に向けて、全基地病院へ冊子の配布を行い、同基準の周知・遵守状況のプレ調査を追加研究として実施した。
②運用システムの研究:1) ドクターヘリの搬送対象・運用方式の研究:日本航空医療学会が収集した全国ドクターヘリ・データを用いて、救急隊現場到着前要請(以下覚知要請)方式による時間短縮効果を検証した。2)要請件数の多い地域の実地調査:要請件数の多い鹿児島県の実地調査を行った。3)オペレーションズ・リサーチによる効果的な運用方法の検証:要請数が重複要請数に与える影響を、確率モデルを用いて検証した。通常運用および覚知要請の確率モデルを作成し、各地域の重複要請発生率を推定のうえ実データと比較検討した。
③症例登録システムに関する研究:全国ドクターヘリ症例登録システムについて検討し、登録項目を作成した。
④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究:全国ドクターヘリのインシデント・アクシデント収集・分析システムについて検討のうえ、システムを構築した。
⑤遠隔地航空搬送の研究:福島県の2か所のヘリ搬送システムについて実地調査を行った。
⑥安全管理基準の改訂:次年度予定している安全管理基準に関する調査・改訂に向けて、全基地病院へ冊子の配布を行い、同基準の周知・遵守状況のプレ調査を追加研究として実施した。
結果と考察
①現状分析に関する研究:脳梗塞の転帰改善に対する有効性が示唆されたが、急性冠症候群、脳出血、クモ膜下出血に対する転帰改善効果は明らかでなかった。現時点で明確な結論を得るのは困難と考えられたため、次年度さらに詳細な解析を進め、サブグループ、二次的評価目標などについても検討する。
②運用システムの研究:1)ドクターヘリの搬送対象・運用方式の研究:基地病院から現場までの距離15km以上では、覚知要請方式に救急覚知から医師接触までの時間短縮効果(中央値約5分)が認められた。次年度は転帰改善に対する有効性および効率性について検討する。2)要請件数の多い地域の実地調査:鹿児島県では重複要請時に他の医療機関のヘリで補完されていた。このような補完ヘリの在り方について、次年度も継続して検討する。3)オペレーションズ・リサーチによる効果的な運用方法の検証:実際の重複要請発生率はモデルによる推定発生率より少なく、各地域で様々な重複要請への対策が行われていると推察された。次年度は運用方式の全国基地病院へのアンケート調査を行い、さらに研究を進める。
③症例登録システムに関する研究:全国ドクターヘリ症例登録システムについて検討し、登録項目を作成した。次年度はシステムを構築し、その後全国基地病院で稼働開始予定である。
④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究:全国ドクターヘリのインシデント・アクシデント収集・分析システムを構築した。本システムは、mSHELLによる分類を行って再発防止策等に用いることができる。次年度より運用開始する。
⑤遠隔地航空搬送の研究:福島県のうち1か所では救急患者搬送を含めた多目的ヘリ、もう1か所では医師派遣ヘリとして運用されていた。本邦における遠隔地航空搬送の在り方、ドクターヘリとの整合性について、さらに検討する。
⑥安全管理基準の改訂:回答のあった基地病院のうち72%が安全管理基準を知っており、対応が行われていたが、安全管理部会の設置は少なかった。次年度、安全管理基準の遵守状況や課題を詳細に調査し、本研究の他の研究成果も踏まえて3年目に安全管理基準を改定する。
②運用システムの研究:1)ドクターヘリの搬送対象・運用方式の研究:基地病院から現場までの距離15km以上では、覚知要請方式に救急覚知から医師接触までの時間短縮効果(中央値約5分)が認められた。次年度は転帰改善に対する有効性および効率性について検討する。2)要請件数の多い地域の実地調査:鹿児島県では重複要請時に他の医療機関のヘリで補完されていた。このような補完ヘリの在り方について、次年度も継続して検討する。3)オペレーションズ・リサーチによる効果的な運用方法の検証:実際の重複要請発生率はモデルによる推定発生率より少なく、各地域で様々な重複要請への対策が行われていると推察された。次年度は運用方式の全国基地病院へのアンケート調査を行い、さらに研究を進める。
③症例登録システムに関する研究:全国ドクターヘリ症例登録システムについて検討し、登録項目を作成した。次年度はシステムを構築し、その後全国基地病院で稼働開始予定である。
④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究:全国ドクターヘリのインシデント・アクシデント収集・分析システムを構築した。本システムは、mSHELLによる分類を行って再発防止策等に用いることができる。次年度より運用開始する。
⑤遠隔地航空搬送の研究:福島県のうち1か所では救急患者搬送を含めた多目的ヘリ、もう1か所では医師派遣ヘリとして運用されていた。本邦における遠隔地航空搬送の在り方、ドクターヘリとの整合性について、さらに検討する。
⑥安全管理基準の改訂:回答のあった基地病院のうち72%が安全管理基準を知っており、対応が行われていたが、安全管理部会の設置は少なかった。次年度、安全管理基準の遵守状況や課題を詳細に調査し、本研究の他の研究成果も踏まえて3年目に安全管理基準を改定する。
結論
①現状分析に関する研究・②運用システムの研究は、計画に沿って進んでいる。さらに調査・分析をすすめ、ドクターヘリの効果的・効率的な運用方法について検討する。③症例登録システムに関する研究では、項目の整理が完了し、計画通り次年度システム構築を行う。④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究では、同システムの構築を完了し、次年度から運用開始予定である。⑤遠隔地航空搬送の研究では2か所の調査を行った。さらに本邦における遠隔地航空搬送の在り方、ドクターヘリとの整合性を検討する計画である。来年度から実施予定の、⑥ドクターヘリ安全管理基準の改訂に関するプレ調査を実施した。
公開日・更新日
公開日
2019-11-22
更新日
-