HIV感染症の医療体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
201819023A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の医療体制の整備に関する研究
課題番号
H29-エイズ-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科、エイズ治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター HIV/AIDS包括医療センター)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構九州医療センター AIDS/HIV総合治療センター)
  • 内藤 俊夫(順天堂大学 医学部)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究院 内科系部門 内科学分野 血液内科学教室)
  • 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 渡邉 珠代(石川県立中央病院 免疫感染症科)
  • 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
  • 藤井 輝久(広島大学 病院輸血部)
  • 宇佐美 雄司(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 歯科口腔外科)
  • 池田 和子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 吉野 宗宏(独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 薬剤部)
  • 本田 美和子(国立病院機構東京医療センター 総合内科)
  • 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
  • 三木 浩司(一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院)
  • 四柳 宏(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
  • 日ノ下 文彦(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
106,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成29年度より継続して、精度の高い疫学情報の継続的収集、被害者を含むHIV陽性者の状況把握と課題抽出を試みる。今後のエイズの医療体制の再構築のため、現時点での拠点病院のHIV陽性者に対する医療提供に関する機能を把握し、拠点病院体制の課題と今後のあり方について検討を行う。
研究方法
拠点病院案内作成時に都道府県から拠点病院へ情報提供依頼を行い、それぞれの拠点病院等において2017年末時点に該当する診療状況を把握した。また、上記調査対象時期のACC、ブロック拠点及び中核拠点病院における抗HIV剤の処方状況を調べた。
全拠点病院に対し、拠点病院診療案内の掲載情報収集時、現在対応可能な医療の内容を調査した。回答を得た拠点病院については、診療機能スコアを算出した。診療現況調査の定期受診者数の情報を加え、現在の高水準の抗HIV療法の治療水準を達成している医療体制の現況の把握を行った。
長期療養、肝臓・透析・歯科、その他非感染性の合併症、精神及び心理のそれぞれの領域について、専門領域の視点から課題抽出と介入、啓発、ネットワーク構築を試みた。
結果と考察
定期通院者数、治療中患者数及び治療成功者数の全て記載があった拠点病院以外の施設を含む計358施設における定期通院者に占める治療継続者の割合は93.8%(22,445人/23,936人)、そのうち治療成功患者の割合は99.4%(22,317人/22,445人)であった。拠点病院で把握できている外国籍定期通院者数は1,549人であった(上記2019年2月末集計時点、現在データ精査中)。ACC、ブロック拠点病院及び中核拠点病院では、適切な治療薬の選択と服薬指導等薬剤師の介入が我が国の高い治療成功率に寄与してした。
我が国のエイズ診療のケアカスケードをより正確に示すことができる成果が得られた。また、抗HIV剤の使用状況からは、我が国においては、最新のガイドラインで推奨されているインテグラーゼ阻害剤を含む抗HIV療法がすでに広く行われ、良好な治療成績に寄与していると考えられた。
ブロック拠点病院が設置されているような定期通院者数100人以上の二次医療圏には複数の拠点病院が設定されており、低いできることスコア平均値から患者集中・機能分担型のエイズ医療が提供されていることが示された。また、東北、甲信越及び九州南部など、定期通院者数100人以上の拠点病院所在地の半径50km圏外の二次医療圏では、高いできることスコア平均値から患者集約・機能集中型のエイズ診療が行われていることが明らかになった。今後は患者の居住地の近隣で、拠点病院またはそれと同等の機能を有する医療機関を中心に、地域の医療・福祉施設と連携した小さな医療圏を形成していくことが必要になると考えられる。これは、被害者の救済医療提供体制整備という観点からも必須である。
拠点病院の看護師及びMSWを中心に長期療養体制整備に関する研修実施した。また、主に肝炎ウイルス重複感染薬害被害者の情報収集体制の構築を行った。HIV感染透析患者医療ガイドを改訂した。歯科診療ネットワークを構築した。我が国のHIV陽性者の慢性非感染性合併症とその加療状況をレセプト情報から比較し論文にまとめた。薬害被害者のインタビュー調査を開始した。今後、他の専門領域においても歯科領域と同様の地域ネットワーク構築を行い、薬害被害者に対しどこでも高い水準の医療が抵抗できるように診療体制を整備していく必要がある。血友病薬害被害者からは精神面に課題を関わる者も多いという指摘を得ている。被害者においては感染判明また薬害エイズ裁判和解から長い年月を経て、また、新たな心的課題を抱えている可能性がある。対象はブロック拠点病院通院中の被害者に限られるが、その記録と解析結果は薬害の記憶・歴史を風化させないためにも重要な資料となる可能性がある。
結論
我が国のHIV診療に関するケアカスケードの解析により正確な情報を提供できるようになった。抗HIV療法については極めて高い水準で均てん化がはかられているが、これは主に拠点病院による患者集約・機能集中型エイズ診療の成果である。今後、被害者への個別対応やHIV陽性者の高齢化等に対応するためにはより小さな医療圏で拠点病院以外の医療施設を含めた機能分担型のエイズ診療が行われることが望ましい。そのためにも、まずは長期療養、歯科及び透析領域でHIV陽性者の受け入れ体制を整備し、他の領域にも拡大して、どの医療・福祉施設でもHIV陽性者に対応できるようにする必要がある。被害者が抱える心身の課題は、医療の進歩、加齢、社会生活環境に応じて大きく変化すると考えられる。多職種多地域の専門家からの知見を集積することで、最終的には被害者個々の状況を理解し、適切な個別救済が適時提供できる医療体制を整える必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819023Z