精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究

文献情報

文献番号
201817040A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究
課題番号
H28-精神-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 吉田 光爾(東洋大学 ライフデザイン学部)
  • 五十嵐 良雄(医療法人雄仁会メディカルケア虎ノ門)
  • 佐藤 さやか(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 )
  • 川副 泰成(総合病院国保旭中央病院)
  • 萱間 真美(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター )
  • 瀬戸 秀文(長崎県病院企業団長崎県精神医療センター)
  • 松田 ひろし(全国精神医療審査会連絡協議会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
46,414,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年の精神保健福祉法改正に伴い定められた「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」に示されている、精神障害者の社会復帰及び自立並びに社会経済活動への参加を促進するための保健医療福祉サービスを、地域でより効果的に展開するための具体的かつ実現可能な方法を提示することを目的とする。
研究方法
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に関連する、1.自治体による精神障害者支援のあり方、2.地域における精神科リハビリテーション、3.包括的支援マネジメントのあり方、4.地域における危機介入及び措置入院に関する課題、5.権利擁護のあり方に関する課題について、各分担班で課題の検討状況を共有しつつ、以下の分担班により調査研究を実施した。
自治体による効果的な地域精神保健医療福祉体制構築に関する研究(野口正行)
自治体で活用できる精神医療と福祉のデータベース構築に関する研究(吉田光爾)
デイケア等の機能と転帰に関する大規模調査(五十嵐良雄)
医療機関における就労支援に関する研究(佐藤さやか)
多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究(川副泰成)
訪問看護における多職種アウトリーチに関する研究(萱間真美)
措置入院患者の地域包括支援のあり方に関する研究(椎名明大)
措置入院の実態把握に関する研究(瀬戸秀文)
精神障害者の権利擁護に関する研究(松田ひろし)
結果と考察
自治体による精神障害者支援のあり方については、平成12年以降の法改正や政策の動向を踏まえて、関係諸団体の合意により精神保健福祉センター、保健所、市町村の各業務運営要領の改正案を示すことができた。また精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進のため、自治体が参照できるガイド案を作成した。地域の医療福祉資源や入院者の状況の「見える化」を試み、ウェブ上で誰でも参照できるデータベースを公開したことにより、自治体関係者が地域の実情を全国平均や他の地域と比較することが容易になった。地域における精神科リハビリテーションのあり方について、精神科デイケア及び障害福祉サービスの実態を詳細に検討した。精神科デイケアは、就労や復職といった社会復帰のための役割を担うとともに、重症者の地域生活機能維持においても必要不可欠である状況が確認できた。一方で、近年障害福祉サービスによる就労支援や生活支援が充実しつつある中、医療サービスである精神科デイケアの役割を再考する時期にあるとも考えられる。包括的支援マネジメント(ICM)に関しては、全国の訪問看護ステーションへの調査から精神科訪問看護の実施状況を把握し、訪問看護におけるケースマネジメントのあり方について質的分析を行った。今年度から新設された精神科在宅患者支援管理料については、同管理料を算定している医療機関の協力を得てサービス提供状況と転帰を調査した。先駆的にICMを実施している医療機関における調査で、ICMを必要とする患者の特徴を明らかにし、ICMの具体的なサービス提供内容を示しうえで、実行可能性調査を踏まえてICM実践ガイド・ツールを作成した。ICMは中重度の精神障害者を地域で支えるうえで必要な支援であるが、診療報酬上の評価はされていない。精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進のためには、個々の精神障害者のニーズに応じた包括的支援の提供がその核となる。今後診療報酬等で評価され、ICMが普及することにより地域全体の包括的支援が推進されることが望まれる。措置入院に関する診断書調査等を踏まえて、エキスパートコンセンサスにより措置入院の運用ガイドライン、精神障害者の退院後支援ガイドライン、支援ニーズアセスメントを完成させ、措置入院診療ガイドライン案を示した。これらのガイドライン普及のため全国研修会を実施し、年度末に普及状況を把握した。グレーゾーン事例については、デルファイ法による意見集約を行い、指定医アンケートにより課題整理を行った。措置入院者の実態調査については、前向きコホートを実施中である。全国調査により、矯正施設長通報の抱える課題についても整理した。隔離拘束に関する全国調査を行い、5年前との比較において、隔離拘束いずれの実施率も増加している状況を示した。また全国の精神医療審査会に対し、退院請求及び処遇改善請求の詳細に関する調査及び事例調査を実施し、精神医療審査会の今後のあり方について検討した。
結論
本研究により、地域精神医療福祉の総合的な実態把握と今後の方向性の検討を行うことができ、各種ガイドラインや実践ガイド作成等を通じて新たな政策理念である「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」構築のための具体的提言を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2019-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-12
更新日
2021-05-25

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201817040B
報告書区分
総合
研究課題名
精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究
課題番号
H28-精神-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 吉田 光爾(東洋大学ライフデザイン学部)
  • 五十嵐 良雄(医療法人雄仁会メディカルケア虎ノ門)
  • 佐藤 さやか(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 川副 泰成(総合病院国保旭中央病院)
  • 萱間 真美(聖路加国際大学)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 瀬戸 秀文(長崎県病院企業団長崎県精神医療センター)
  • 松田 ひろし(全国精神医療審査会連絡協議会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年の精神保健福祉法改正に伴い定められた「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」に示されている、精神障害者の社会復帰及び自立並びに社会経済活動への参加を促進するための保健医療福祉サービスを、地域でより効果的に展開するための具体的かつ実現可能な方法を提示することを目的とする。
研究方法
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に関連する、1.自治体による精神障害者支援のあり方、2.地域における精神科リハビリテーション、3.包括的支援マネジメントのあり方、4.地域における危機介入及び措置入院に関する課題、5.権利擁護のあり方に関する課題について、各分担班で課題の検討状況を共有しつつ、以下の分担班により調査研究を実施した。
自治体による効果的な地域精神保健医療福祉体制構築に関する研究(野口正行)
自治体で活用できる精神医療と福祉のデータベース構築に関する研究(吉田光爾)
デイケア等の機能と転帰に関する大規模調査(五十嵐良雄)
医療機関における就労支援に関する研究(佐藤さやか)
多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究(川副泰成)
訪問看護における多職種アウトリーチに関する研究(萱間真美)
措置入院患者の地域包括支援のあり方に関する研究(椎名明大)
措置入院の実態把握に関する研究(瀬戸秀文)
精神障害者の権利擁護に関する研究(松田ひろし)
結果と考察
自治体による精神障害者支援のあり方については、平成12年以降の法改正や政策の動向を踏まえて、関係諸団体の合意により精神保健福祉センター、保健所、市町村の各業務運営要領の改正案を示すことができた。また精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進のため、自治体が参照できるガイド案を作成した。地域の医療福祉資源や入院者の状況の「見える化」を試み、ウェブ上で誰でも参照できるデータベースを公開したことにより、自治体関係者が地域の実情を全国平均や他の地域と比較することが容易になった。地域における精神科リハビリテーションのあり方について、精神科デイケア及び障害福祉サービスの実態を詳細に検討した。精神科デイケアは、就労や復職といった社会復帰のための役割を担うとともに、重症者の地域生活機能維持においても必要不可欠である状況が確認できた。一方で、近年障害福祉サービスによる就労支援や生活支援が充実しつつある中、医療サービスである精神科デイケアの役割を再考する時期にあるとも考えられる。包括的支援マネジメント(ICM)に関しては、全国の訪問看護ステーションへの調査から精神科訪問看護の実施状況を把握し、訪問看護におけるケースマネジメントのあり方について質的分析を行った。今年度から新設された精神科在宅患者支援管理料については、同管理料を算定している医療機関の協力を得てサービス提供状況と転帰を調査した。先駆的にICMを実施している医療機関における調査で、ICMを必要とする患者の特徴を明らかにし、ICMの具体的なサービス提供内容を示しうえで、実行可能性調査を踏まえてICM実践ガイド・ツールを作成した。ICMは中重度の精神障害者を地域で支えるうえで必要な支援であるが、診療報酬上の評価はされていない。精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進のためには、個々の精神障害者のニーズに応じた包括的支援の提供がその核となる。今後診療報酬等で評価され、ICMが普及することにより地域全体の包括的支援が推進されることが望まれる。措置入院に関する診断書調査等を踏まえて、エキスパートコンセンサスにより措置入院の運用ガイドライン、精神障害者の退院後支援ガイドライン、支援ニーズアセスメントを完成させ、措置入院診療ガイドライン案を示した。これらのガイドライン普及のため全国研修会を実施し、年度末に普及状況を把握した。グレーゾーン事例については、デルファイ法による意見集約を行い、指定医アンケートにより課題整理を行った。措置入院者の実態調査については、前向きコホートを実施中である。全国調査により、矯正施設長通報の抱える課題についても整理した。隔離拘束に関する全国調査を行い、5年前との比較において、隔離拘束いずれの実施率も増加している状況を示した。また全国の精神医療審査会に対し、退院請求及び処遇改善請求の詳細に関する調査及び事例調査を実施し、精神医療審査会の今後のあり方について検討した。
結論
本研究により、地域精神医療福祉の総合的な実態把握と今後の方向性の検討を行うことができ、各種ガイドラインや実践ガイド作成等を通じて新たな政策理念である「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」構築のための具体的提言を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2019-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201817040C

収支報告書

文献番号
201817040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
60,000,000円
(2)補助金確定額
59,991,000円
差引額 [(1)-(2)]
9,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,219,184円
人件費・謝金 16,483,714円
旅費 7,954,065円
その他 16,748,935円
間接経費 13,586,000円
合計 59,991,898円

備考

備考
自己資金:898

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-