介護保険施設等の状況把握を平時と有事にシームレスに可能とするICTシステムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201815003A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険施設等の状況把握を平時と有事にシームレスに可能とするICTシステムの開発に関する研究
課題番号
H29-長寿-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
久保 達彦(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学)
研究分担者(所属機関)
  • 松田晋哉(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 近藤久禎(国立病院機構災害医療センター)
  • 藤本賢治(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤野善久(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,668,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平時と有事にシームレスに利活用可能な介護保険施設等の情報把握を行うための情報システムを開発し、その社会実装に向けた具体的な道筋を示すこと。
研究方法
研究は①平時情報、②有事情報、③ICTシステム開発、④実証実験の4要素に分けて推進された。前年度までの研究成果を受け、今年度は研究資源を③ICTシステム開発と④実証実験に集約した。③ICT開発研究では、取り組みが先行する災害医療分野における関係ICTシステムのレビュー結果に基づき実用性の高いICTシステムを効率的に開発整備するための指針を得たうえで、ICTシステムの試作品開発を実施した。④実証実験では、平成30年度内閣府主催大規模地震時医療活動訓練において試作されたICTシステムを稼働させ、システムの実用性と有効性を検証した。
結果と考察
【ICTシステム開発】取り組みが先行する災害医療分野のICTシステムをレビューし、本研究におけるICTシステム開発整備にむけて以下の指針を得た。
①【先行知見】災害医療分野の先行知見を積極的に取り込む。
②【情報整理】ICTシステム整備の前に全国レベルで運用可能な標準紙様式を開発する。
③【入力体制】紙様式報告と電子報告の両者に対応する。ID・パスワードによる認証がなくとも、報告はできる体制を整備する。紙様式報告に対応する仕組みとして、データ入力の人的な支援体制(介護保険施設等被災状況オフサイト見える化支援チーム)を確保する。
④【カバー率】施設のデータベースへの登録もれ(災害時の被災見落としにつながる)を最小化するため、平時関係データベースとの定期的な同期を行い、高い施設カバー率を得る。
⑤【標準仕様】標準電子様式とAPIを開発当初から検討し、技術革新等に対応しやすい整備環境を構築する。
⑥【機能拡張】機能拡張においては、被災状況報告施設(受援者)・関係支援組織(支援者)・行政機関(調整者)の3つの視点を常に踏まえる。
研究では、上記指針に則り「介護保険施設等被災状況見える化システム」(仮称)を試験開発した。

【実証実験】平成30年度内閣府主催大規模地震時医療活動訓練で、研究開発したICTシステム及び、紙様式報告に対応する仕組みとしてオフサイト見える化支援チームを稼働させ、その実用性を検証した。訓練では、紙様式報告(FAX報告)と電子報告(スマートフォンアプリ報告)の情報がともに「介護保険施設等被災状況見える化システム」のデータベースに登録され、全報告施設の被災状況が地図上に統合的に可視化された。また、オフサイト見える化支援チームは優先的な支援が必要な施設の同定に係るデータ解析を行い、その解析結果をもとに対策本部は救急救命措置が必要な入所者が報告された施設にDMATの派遣を調整することに成功した。
結論
-「介護保険施設等被災状況の全国共通報告様式」との併用を前提として開発されたICTシステム「介護保険施設等被災状況見える化システム」を利用することで、紙システムと電子システムの併存が実現される。
-ICTシステムに加えてデータ入力や解析に係る人的資源(「オフサイト見える化支援チーム」)を確保することで、より実効性の高いシステムを構築できる。
-今後、研究成果を円滑かつ効果的に社会実装していくためには、⓪今年度までの研究活動を通じて協力関係が構築された関係団体とのコンタクトを維持発展させつつ、①関係訓練での検証に基づくブラッシュアップの継続し(対応OSの拡大を含む)、②関係組織別標準業務手順書(SOP)の整備を進めること。また、③関係厚労省通知(「災害発生時における社会福祉施設等の被災状況の把握等について」(平成29年2月20日雇児発0220第2号 社援発0220第1号 障 発0220第1号 老 発0220第1号 )との整合性調整し、④オフサイト解析支援チームを含めた運用体制を強化していくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201815003B
報告書区分
総合
研究課題名
介護保険施設等の状況把握を平時と有事にシームレスに可能とするICTシステムの開発に関する研究
課題番号
H29-長寿-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
久保 達彦(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター)
  • 藤本 賢治(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平時と有事にシームレスに利活用可能な介護保険施設等の情報把握を行うための情報システムを開発し、その社会実装に向けた具体的な道筋を示すこと。
研究方法
研究は①平時情報、②有事情報、③ICTシステム開発、④実証実験の4要素に分けて推進された。①平時情報に関する研究としては、既存ICTシステムの活用可能性を検討するために整備状況を調査した。②有事情報に関する研究としては、災害時に介護保険施設などが優先的に報告すべき被災情報項目を同定するために、熊本地震の教訓ならびに災害医療分野の先行知見を調査した。③ICT開発研究では、取り組みが先行する災害医療分野における関係ICTシステムのレビューを行い、実用性の高いICTシステムを効率的に開発整備するための指針を得たうえで、ICTシステムの試作品開発を実施した。④実証実験では、平成30年度内閣府主催大規模地震時医療活動訓練において試作されたICTシステムを稼働させ、システムの実用性と有効性を検証した。
結果と考察
【平時情報】本課題で活用できる可能性のある平時システムとして、管理主体、、更新頻度、外部への情報提供可能性等の14評価項目に基づき調査し、本件有事機能を最も効率的かつ効果的に付加可能な平時利用向け既設システムは『地域包括ケア「見える化」システム』であると結論さした。

【有事情報】関係8組織にインタビュー調査を実施して、災害発生時に介護保健施設等が自ら優先的に発信すべき情報項目を選定し、同情報項目を収載したFAX報告様式「介護保険施設等被災状況の全国共通報告様式」を開発した。
1.厚生労働省老健局老人保健課
2.北九州市保健福祉局地域福祉部介護保険課  
3.熊本県社会福祉協議会
4.全国老人福祉施設協議会
5.全国老人保健施設協会
6.日本慢性期医療協会
7.DMAT事務局(本研究の研究分担者を対象とした意見収集)
8.DPAT事務局

【ICTシステム開発】取り組みが先行する災害医療分野のICTシステムをレビューし、本研究におけるICTシステム開発整備にむけて以下の指針を得た。
①【先行知見】災害医療分野の先行知見を積極的に取り込む。
②【情報整理】ICTシステム整備の前に全国レベルで運用可能な標準紙様式を開発する。
③【入力体制】紙様式報告と電子報告の両者に対応する。ID・パスワードによる認証がなくとも、報告はできる体制を整備する。紙様式報告に対応する仕組みとして、データ入力の人的な支援体制(介護保険施設等被災状況オフサイト見える化支援チーム)を確保する。
④【カバー率】施設のデータベースへの登録もれ(災害時の被災見落としにつながる)を最小化するため、平時関係データベースとの定期的な同期を行い、高い施設カバー率を得る。
⑤【標準仕様】標準電子様式とAPIを開発当初から検討し、技術革新等に対応しやすい整備環境を構築する。
⑥【機能拡張】機能拡張においては、被災状況報告施設(受援者)・関係支援組織(支援者)・行政機関(調整者)の3つの視点を常に踏まえる。
研究では、上記指針に則り「介護保険施設等被災状況見える化システム」(仮称)を試験開発した。

【実証実験】平成30年度内閣府主催大規模地震時医療活動訓練で、研究開発したICTシステム及び、紙様式報告に対応する仕組みとしてオフサイト見える化支援チームを稼働させ、その実用性を検証した。訓練では、紙様式報告(FAX報告)と電子報告(スマートフォンアプリ報告)の情報がともに「介護保険施設等被災状況見える化システム」のデータベースに登録され、全報告施設の被災状況が地図上に統合的に可視化された。また、オフサイト見える化支援チームは優先的な支援が必要な施設の同定に係るデータ解析を行い、その解析結果をもとに対策本部は救急救命措置が必要な入所者が報告された施設にDMATの派遣を調整することに成功した。
結論
-有事機能を効率的・効果的に付加可能な平時利用向け既設システムは『地域包括ケア「見える化」システム』である。
-関係8団体からの意見を取り込んで開発された「介護保険施設等被災状況の全国共通報告様式」を全国的に活用することで、施設被災情報を効率的かつ一元的に集約することが可能となり、関係団体の共同的な災害対応を促すことができる。
-「介護保険施設等被災状況の全国共通報告様式」との併用を前提として開発されたICTシステム「介護保険施設等被災状況見える化システム」を利用することで、紙システムと電子システムの併存が実現される。
-ICTシステムに加えてデータ入力や解析に係る人的資源(「オフサイト見える化支援チーム」)を確保することで、より実効性の高いシステムを構築できる。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201815003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
熊本地震(2016年)の際に関係対応にあたった熊本県社会福祉協議会や全国老人福祉施設協議会等の保健福祉関係団体及び、取り組みが先行する災害医療分野の専門家を対象として、インタビュー調査を実施して、自然災害発生時に介護保健施設等が自ら優先的に発信すべき情報項目を選定した。また、その情報項目を収載した「介護保険施設等被災状況の全国共通報告様式」を開発した。
臨床的観点からの成果
特記無し
ガイドライン等の開発
特記無し
その他行政的観点からの成果
近年、我が国の大災害に伴う防ぎえた死および災害関連死の多くは高齢障害者に局在している。この課題に対処するためには高齢障害者の支援ニーズをいち早く見える化し、適切な支援につなげていくことが必要である。一方、現状においては厚生労働省が運営する介護保険施設等の情報把握を目的として設置されているシステムは存在しない。今回、開発されたシステムが社会実装されれば、発生が予見されている南海トラフ・首都直下大地震等の対応において防ぎえた死および災害関連死を予防する主力システムとして対応に寄与すると期待される。
その他のインパクト
2018年5月にバンコクで開催されたASEAN10カ国を対象とした災害医療研修で研究成果(「介護保険施設等被災状況の全国共通報告様式」の開発手法)を紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201815003Z