神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証

文献情報

文献番号
201811053A
報告書区分
総括
研究課題名
神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証
課題番号
H29-難治等(難)-一般-043
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
松井 真(金沢医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野美恵子(国際医療福祉大学 医学部)
  • 和泉唯信(徳島大学 病院)
  • 河内 泉(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 神田 隆(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 吉良潤一(九州大学大学院 医学研究院)
  • 楠 進(近畿大学 医学部)
  • 栗山長門(京都府立医科大学 地域保健医療疫学)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 酒井康成(九州大学大学院 医学研究院)
  • 清水 潤(東京大学 医学部附属病院)
  • 清水優子(東京女子医科大学 医学部)
  • 園生雅弘(帝京大学 医学部)
  • 祖父江元(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 田原将行(宇多野病院 臨床研究部)
  • 中辻裕司(富山大学 附属病院)
  • 中原 仁(慶應義塾大学 医学部)
  • 中村幸志(北海道大学大学院 医学研究院)
  • 中村好一(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 新野正明(北海道医療センター 臨床研究部)
  • 野村恭一(埼玉医科大学 医学部)
  • 藤原一男(福島県立医科大学 医学部)
  • 松尾秀徳(長崎川棚医療センター 臨床研究部)
  • 村井弘之(国際医療福祉大学 医学部)
  • 本村政勝(長崎総合科学大学 工学部)
  • 山村 隆(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 横田隆徳(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 吉川弘明(金沢大学 保健管理センター)
  • 渡邊 修(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,305,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 梶 龍兒(平成30年4月1日~平成30年9月30日)→ 和泉唯信(平成30年10月1日~平成31年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
免疫性神経疾患に関する疫学や病態の変遷、治療による疾患アウトカムの変化などを評価するとともに、ガイドライン等の策定が患者QOLの改善に結びついているかを検証する。具体的には、各々約二万人の患者が存在する重症筋無力症(MG)と多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)について、従来の全国調査結果と比較検討できるような内容を盛り込んだ全国調査を行い、患者の予後、経済的負担およびQOLが、近年の医療情勢の中でどのように変化したのかを解析する。さらに、従来のガイドライン下での診療実態を明確にすることで、新規ガイドラインによるQOLのさらなる改善があるか、将来の調査結果と比較し得る材料を提供することも目的の一つである。一方、近年免疫介在性の病態を有することが判明した疾患である自己免疫性脳炎、スティッフパーソン症候群(SPS)、Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)の3疾患についても全国調査を行い、疾患概要情報を整えることを二番目の柱とした。予後不良患者が少なからず存在するギラン・バレー症候群についても研究対象とした。クロウ・深瀬症候群、アトピー性脊髄炎、アイザックス症候群、その他の指定難病については従来の臨床・疫学研究を継続発展させることを目指した。
研究方法
研究対象となる神経免疫疾患の領域別担当幹事を指名し、リーダーとしてグループ内で意見を調整しながら具体的かつ主体的に調査研究を進める方法を採用した。全国調査は大きな比重を占めるため、疫学グループを含めた7グループ(研究分担者・研究協力者の重複所属を妨げない)で研究を進めた。なお、倫理面への配慮については以下のように取り扱った。多施設間の疫学調査は、中心となる施設における倫理委員会の承認のみで十分と判断された施設の参加によって行われた。一方、施設単位での研究は、各研究分担者・研究協力者の所属する施設の倫理規定に従って行なわれた。
結果と考察
MGとLEMSに関する全国調査のための一次調査票を、抽出率30.4%で選定した7,547科へ送付し、2017年に受診した両疾患患者について調査を行ったところ、2,708科より回答を得た(回答率35.9%)。その結果、2017年中の推定受療MG患者数は29,210名、有病率は人口10万人あたり23.1人と判明した。LEMSの推定受療患者数は348名、有病率は人口10万人あたり0.3人であった。自己免疫性脳炎の二次調査が終了し、198施設より回答があった(回収率71.8%)。解析の結果、NMDAR脳炎が44%と最も多いこと、対照的に自己抗体が同定できていなくても免疫治療が奏功した症例が48%存在するという実態が明らかにされた。MRIの異常は40%に見られ、人工呼吸器を要した例は46%と高率であり、病極期のmodified Rankin Scaleは平均4.7と重症例が多かったが、退院時までに平均1.8まで回復しており、適切な免疫療法が十分に行われた場合の予後は比較的良好であることが確認された。クロウ・深瀬症候群について、7項目から成る新たな診断基準を策定し、既存の11項目による診断基準と比較検討したところ、感度・特異度は両者とも100%であり、簡便な新規診断基準の妥当性を証明し得た。同疾患の治療ガイドラインも新規に策定した。MS・NMO全国調査は、一次調査票を作成し、2017年を対象とした調査に着手した。平成30年末を一次調査の締め切りとして2,100施設(3,819施設科)へ送付し、未回収の施設へ督促状を出して回収率の向上に努めた。二次調査票は平成31年2月より順次発送を行った。臨床面ではMS・NMO患者での髄液リンパ球サブセットの不均衡が疾患活動性を反映する指標として使用できること、末梢血リンパ球サブセットはMS治療薬フィンゴリモドの効果を検証できることが明らかにされ、フローサイトメトリーという手法がバイオマーカーの確立に寄与することが示された。GBSの予後を予測し得る指標として、mEGOS・EGRIS・ΔIgGなどの有用性を確認した。抗体治療による医療費高額化が懸念され、今後のガイドライン策定には医療経済的な面での有用性も考慮すべきことが示された。
結論
平成31年1月17日から18日にかけて日本都市センターホテル(東京)において、他の神経免疫疾患関連実用化研究班8班とともに合同班会議を開催した。その結果、研究対象となる神経難病についてのAMED関連実用化研究班と、本政策研究班との相互参加による議論の積み重ねと意見交換が、各疾患に関する問題提起とその解決へ至るための着実な手段であることが再確認された。政策研究班と実用化研究班の合同班会議開催は、厚生労働行政における国民の健康増進という課題に効率的に取り組むための優れた方法の一つである。

公開日・更新日

公開日
2019-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811053Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,696,000円
(2)補助金確定額
14,691,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,066,673円
人件費・謝金 918,677円
旅費 2,783,844円
その他 3,531,700円
間接経費 3,391,000円
合計 14,691,894円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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