文献情報
文献番号
201811050A
報告書区分
総括
研究課題名
脊柱靭帯骨化症に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-難治等(難)-一般-040
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
大川 淳(国立大学法人東京医科歯科大学 整形外科学)
研究分担者(所属機関)
- 岩崎 幹季((独)労働者健康安全機構 大阪労災病院)
- 中嶋 秀明(国立大学法人福井大学 医学系部門地域高度医療推進講座)
- 川口 善治(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部(医学))
- 山崎 正志(国立大学法人筑波大学 医学医療系 整形外科)
- 中村 雅也(慶應義塾大学医学部)
- 松本 守雄(慶應義塾大学医学部)
- 竹下 克志(自治医科大学 整形外科)
- 今釜 史郎(国立大学法人名古屋大学 医学部附属病院 整形外科)
- 松山 幸弘(国立大学法人浜松医科大学 医学部)
- 芳賀 信彦(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
- 森 幹士(国立大学法人滋賀医科大学 医学部整形外科)
- 山田 宏(公立大学法人和歌山県立医科大学 整形外科学講座)
- 遠藤 直人(国立大学法人新潟大学 医歯学系)
- 谷口 昇(国立大学法人鹿児島大学 学術研究院医歯学域医学系)
- 高畑 雅彦(国立大学法人北海道大学大学院医学研究院)
- 小澤 浩司(東北医科薬科大学 医学部 整形外科学)
- 出村 諭(国立大学法人金沢大学附属病院脊椎脊髄外科)
- 種市 洋(獨協医科大学 医学部)
- 山本 謙吾(東京医科大学 医学部医学科)
- 渡辺 雅彦(東海大学 医学部外科学系)
- 藤林 俊介(国立大学法人京都大学医学研究科)
- 田中 雅人(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 今城 靖明(国立大学法人山口大学 大学院医学系研究科)
- 中島 康晴(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
- 鬼頭 浩史(国立大学法人名古屋大学大学院医学系研究科)
- 吉井 俊貴(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 波呂 浩孝(国立大学法人山梨大学 大学院総合研究部医学域整形外科学講座)
- 古矢 丈雄(国立大法人千葉大学医学部附属病院整形外科)
- 和田 簡一郎(国立大学法人弘前大学 医学部附属病院)
- 佐藤 公昭(久留米大学 医学部)
- 筑田 博隆(国立大学法人群馬大学 大学院医学系研究科)
- 海渡 貴司(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 石井 賢(学校法人国際医療福祉大学 医学部)
- 大島 寧(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
- 藤原 武男(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
14,748,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
村上英樹(平成30年4月1日-平成31年1月31日)→出村 諭(平成31年2月1日以降)
寒竹 司(平成30年4月1日-平成30年9月30日)→今城靖明(平成30年10月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
脊柱に靭帯骨化をおこす、後縦靱帯骨化症(OPLL)、黄色靭帯骨化症(OYL)、びまん性特発性骨増殖症(DISH)、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の診断基準、重症度分類の作成、診療ガイドライン(GL)の作成、改訂に資するエビデンス集積のため、研究班のスケールメリットを活かして、各疾患に対する多施設研究を行う。
研究方法
1)OPLLを含めたハイリスク脊椎手術における術中脊髄モニタリングのアラームの検証
2)CTを用いた全脊椎骨化巣評価
3)DISHにおける脊椎損傷
4)頚椎OPLL患者における転倒の影響
5)胸椎OPLLの前向き手術症例調査
6)FOP患者のQOL調査など、複数の多施設共同研究を遂行し、医学的根拠を蓄積していく
2)CTを用いた全脊椎骨化巣評価
3)DISHにおける脊椎損傷
4)頚椎OPLL患者における転倒の影響
5)胸椎OPLLの前向き手術症例調査
6)FOP患者のQOL調査など、複数の多施設共同研究を遂行し、医学的根拠を蓄積していく
結果と考察
1)ハイリスク脊椎手術症例(2867例)に対して行った術中モニタリングに関して調査し、頚椎OPLL 622例,胸椎OPLL 249例,髄外腫瘍 771例、髄内腫瘍216例と側弯症 1009例であった。モニタリングを施行した2867例中TPは126例、FPは234例、FNは9例であった。レスキュー症例は136例あった。特に頚椎OPLLは82.1%に回復が見られ、これらの症例の術中モニタリングの有用性が示された。
2)322例中181例(56.2%)に胸腰椎OPLLが存在していた。男女別では男性51.2%、女性71.5%と女性で有意に多かった。糖尿病併存率やBMIに男女差はなかった。また
全脊柱OP-index20以上の割合は男性で4.5%(11例)、女性で20%(16例)と女性にOPLLが多発することが分かった。この全脊柱OP-index20以上の骨化傾向の高い患者は、男性では頚胸移行部を中心とした上位胸椎で、女性は中位胸椎においてOPLLの存在頻度が高かった。
3)平成27年12月よりに参加施設で本損傷に対して治療を行った42例 (男性30例、女性12例)、受傷時平均年齢 72.8歳を対象とした。入院前、受傷1年後の住居、診断の遅れ(受傷後24時間以内)、治療方法、治療開始後の合併症、治療後の骨癒合について検討した。対象の98.0%は自宅で生活していた。2.0%が老人保健施設であったが、受傷1年後には、自宅は70.0%となり、病院20.0%、老人保健施設10.0%と自宅以外に滞在している例が30.0%に増加していた。診断の遅れは54.8%にみられ、本損傷を正確に診断ができた例は45.2%であった。診断の遅れとなった例の内、医療機関に受診したにも関わらず正確な診断に至らなかったdoctor’s delayが38.1%と最も多かった。
4)全国8カ所の協力施設にて、圧迫性脊髄症に対して手術予定の患者(初診時歩行不能例は除外)を対象とした。全158名(OPLL57例:38%)、平均69歳で、転倒手帳回収率は78%で、48%の患者で一度以上の転倒を認めた。中央値は2回であるが、ばらつきが大きく転倒する患者さんは何度も転倒する傾向にあった。今後、より詳細な分析を行う予定である。
5)胸椎OPLL手術115例が前向きに登録され、その手術成績を調査した。術後麻痺は37例 (32%)に認めた。麻痺出現有無の2群比較では、OPLL椎間数、OLF併存、術前JOAスコア低値、術前PST陽性、手術時間、出血量、術中エコーで脊髄浮上なし、術中脊髄モニタリング電位低下に有意差を認めた。多変量解析による術後麻痺リスク因子の検討では、術前PST陽性 (オッズ比 [OR] 31.6, p<0.05)、術前JOAスコア低値 (OR 2.8, p<0.05)が同定された。
6)研究班で収集したFOP患者49名の性別の内訳は男性28名、女性21名であった。49名中44名が遺伝子検査を受けており、うち41名は617G>A (R206H)のcommon mutationを示した。その他の3名はそれぞれ774G>T(2015に研究班が報告)、587T>C(2014に研究班が報告)、982G>A、であった。生年による診断時年齢の違いを調査すると、2007年までに出生した患者では、30名中26名が2歳以降に診断を受けていた(R206H以外の遺伝子変異の3名を含む)のに対し、2008年(研究班設置の翌年)以降に出生した患者では、8名中7名が1歳までに診断を受けていた。
2)322例中181例(56.2%)に胸腰椎OPLLが存在していた。男女別では男性51.2%、女性71.5%と女性で有意に多かった。糖尿病併存率やBMIに男女差はなかった。また
全脊柱OP-index20以上の割合は男性で4.5%(11例)、女性で20%(16例)と女性にOPLLが多発することが分かった。この全脊柱OP-index20以上の骨化傾向の高い患者は、男性では頚胸移行部を中心とした上位胸椎で、女性は中位胸椎においてOPLLの存在頻度が高かった。
3)平成27年12月よりに参加施設で本損傷に対して治療を行った42例 (男性30例、女性12例)、受傷時平均年齢 72.8歳を対象とした。入院前、受傷1年後の住居、診断の遅れ(受傷後24時間以内)、治療方法、治療開始後の合併症、治療後の骨癒合について検討した。対象の98.0%は自宅で生活していた。2.0%が老人保健施設であったが、受傷1年後には、自宅は70.0%となり、病院20.0%、老人保健施設10.0%と自宅以外に滞在している例が30.0%に増加していた。診断の遅れは54.8%にみられ、本損傷を正確に診断ができた例は45.2%であった。診断の遅れとなった例の内、医療機関に受診したにも関わらず正確な診断に至らなかったdoctor’s delayが38.1%と最も多かった。
4)全国8カ所の協力施設にて、圧迫性脊髄症に対して手術予定の患者(初診時歩行不能例は除外)を対象とした。全158名(OPLL57例:38%)、平均69歳で、転倒手帳回収率は78%で、48%の患者で一度以上の転倒を認めた。中央値は2回であるが、ばらつきが大きく転倒する患者さんは何度も転倒する傾向にあった。今後、より詳細な分析を行う予定である。
5)胸椎OPLL手術115例が前向きに登録され、その手術成績を調査した。術後麻痺は37例 (32%)に認めた。麻痺出現有無の2群比較では、OPLL椎間数、OLF併存、術前JOAスコア低値、術前PST陽性、手術時間、出血量、術中エコーで脊髄浮上なし、術中脊髄モニタリング電位低下に有意差を認めた。多変量解析による術後麻痺リスク因子の検討では、術前PST陽性 (オッズ比 [OR] 31.6, p<0.05)、術前JOAスコア低値 (OR 2.8, p<0.05)が同定された。
6)研究班で収集したFOP患者49名の性別の内訳は男性28名、女性21名であった。49名中44名が遺伝子検査を受けており、うち41名は617G>A (R206H)のcommon mutationを示した。その他の3名はそれぞれ774G>T(2015に研究班が報告)、587T>C(2014に研究班が報告)、982G>A、であった。生年による診断時年齢の違いを調査すると、2007年までに出生した患者では、30名中26名が2歳以降に診断を受けていた(R206H以外の遺伝子変異の3名を含む)のに対し、2008年(研究班設置の翌年)以降に出生した患者では、8名中7名が1歳までに診断を受けていた。
結論
靭帯骨化症調査研究班として2年経過し、多施設研究から多数の結果が出ており、これらを随時、国際誌に報告していく。また研究班で得られた成果を、診療ガイドラインに反映させていく。
公開日・更新日
公開日
2019-09-02
更新日
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