がん患者に対するアピアランスケアの均てん化と指導者教育プログラムの構築に向けた研究

文献情報

文献番号
201808026A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者に対するアピアランスケアの均てん化と指導者教育プログラムの構築に向けた研究
課題番号
H29-がん対策-一般-027
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
野澤 桂子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 飯野 京子(国立国際医療研究センター 国立看護大学校 成人看護学)
  • 藤間 勝子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター )
  • 清水 千佳子(国立国際医療研究センター病院・乳腺腫瘍内科)
  • 森 文子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 看護部)
  • 菊地 克子(東北大学病院 皮膚科)
  • 有川 真生(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 形成外科)
  • 全田 貞幹(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 放射線治療科)
  • 八巻 知香子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,634,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療者には,アピアランスケアについての正しい知識や公平な情報がなく,また,個々の患者支援のために必要な支援のあり方を学ぶ場もないため,患者指導に困難を感じている状況も明らかになっている。
そこで,本研究は,基礎的な情報や支援方法をeラーニング化して,希望する医療者が学べるようにすること(研究1.アピアランスケアに関するeラーニング用基礎教育資材の開発を目指した研究)で,アピアランスケアの標準化及び均てん化を図るとともに,より高度な対応を求められるケースに対処でき、他の医療者の教育もできる指導者の養成(研究2.アピアランスケアを行う指導者教育プログラムの構築に向けた研究)を目指すこととした。
研究方法
2018年度は,研究1研究2ともに,(1)2017年度に実施した基礎データ収集のための各種調査研究の継続分析及び学会発表,論文投稿,(2)データに基づく教育内容の検討及びコンテンツ案の作成を行った。
結果と考察
①医療者・がん患者・一般人を対象とした調査の継続分析行った結果、意識的にE-ラーニングや指導者研修に組み込むべき事項が明らかになった。
がん診療連携拠点病院の看護師を中心とした医療者736名(回収率36.3%)に対する調査票の分析を完了した。24.0%が既に院内にアピアランス支援の部門やケアチームがあると答え、専属チームが無い医療者でも多くの支援情報を患者に提供していた。その一方で、ケアの標準化がされておらず医療者により認識が異なることや、医療者による支援の必要性を認識しているものの自信がない重要な支援事項などが示され、アピアランスケアの研修およびeラーニング開発で特に強化すべき点が明らかになった。また,eラーニングによる基礎学習の希望(92.4%)が顕著に高かった。
がん患者1034名に対するデータ分析を完了した。外見変化を58.1%が体験し、体験頻度・苦痛度ともに高い症状,頻度は低いが苦痛度が高い症状、外見問題の対処に必要だったが十分得られなかった情報が明らかになった。これらのケアについても,eラーニングに組み込む必要性がある。また、外見変化への懸念が日常生活に与える影響を共分散構造分析により検討した結果,「かわいそうだと思われたくない」「外見の変化からがんとばれた」という意識が強いと,外出や対人交流,仕事や学業を減少させ,人間関係の不和を高めることもわかった。がん患者の外見変化の懸念は対処行動と日常生活への影響を与えるため,対処技術の教育だけでなく,がんと外見に対する意識変容のための教育も必要である。
一般人1030名に対するデータ分析を完了した。一般人の意識の理解は、突然がん告知を受けた患者の思考や行動予測に役立つ。55.9%は外見が変化した患者を実際に見たことがないにも関わらず,がん患者の外見と生活に関するネガティブなイメージを有していた。また,仕事や学校生活が阻害されると考える人も多く,罹患早期の適切な介入により,社会参加への不安を軽減させる必要が示唆された。若年女性と高齢男性の約3割が,外見が変わるならば抗がん剤をしたくないと答えており,外見変化は治療選択にも影響する可能性も示された。また、医療者を情報源として利用する希望が多い一方で,ネット情報にも信頼度が高く、患者に対する情報リテラシー教育をコンテンツに含む必要性がある。
②eラーニング教材試案の作成
上記研究結果をふまえて、基礎的なアピアランスケアの情報・手技・コミュニケーション方法について精査し,基本的な項目を作成した。eラーニングでは,最初にアピアランスケアの理念や考え方を徹底的に理解させた後(1章),患者対応を想定した実践モデル形式でケアを学習し(2・3章),最後に学術的な知識を得て確認する(4章)構成となっている。一般のeラーニング学習者が陥りがちな,知識のみを得ても実践でどのように行動を起こしてよいのかわからない,という状況を回避するため,総論知識(4章)と実践技術(2・3章)を逆にするなど,様々な工夫を凝らした構成とした。アピアランスケアにおいて,初めての体系的・実践的な医療者向け教材となっている。
③アピアランスケア指導者教育プログラム試案の作成
患者アセスメント,コミュニケーション,他職種へのコーディネートや医療者教育など,患者へのアピアランスケアの実践と共に,各地域において他の医療者の教育訓練を行うための実践的な内容となっている。3日間の集合研修プログラムである。
結論
医療者・患者・一般人を対象とした調査の継続分析に基づき、求められるアピアランスケアの教育内容を検証し、eラーニング教材と指導者研修プログラムの試案を作成することができた。国内外の学会で発表した。

公開日・更新日

公開日
2019-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,423,000円
(2)補助金確定額
3,421,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 509,697円
人件費・謝金 1,722,358円
旅費 201,198円
その他 198,753円
間接経費 789,000円
合計 3,421,006円

備考

備考
自己資金 6円

公開日・更新日

公開日
2020-03-12
更新日
-