脳波・脳磁図を用いたAI解析による認知症の診断・重症度評価に関する実証研究

文献情報

文献番号
201803021A
報告書区分
総括
研究課題名
脳波・脳磁図を用いたAI解析による認知症の診断・重症度評価に関する実証研究
課題番号
H29-ICT-一般-011
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
柳澤 琢史(大阪大学 高等共創研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 貴島 晴彦(大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経外科)
  • 原田 達也(東京大学 大学院情報理工学研究科)
  • 数井 裕光(高知大学教育研究部医療学系)
  • 吉山 顕次(大阪大学 大学院医学系研究科精神医学)
  • 吉村 匡史(関西医科大学 医学部精神神経科学)
  • 西田 圭一郎(関西医科大学 医学部精神神経科学)
  • 畑 真弘(大阪大学 大学院医学系研究科精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,840,000円
研究者交替、所属機関変更
なし

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症は世界的に増加傾向であり、特に少子高齢化が進む日本では社会的な負担となり重要な問題である。アルツハイマー型認知症は世界に5000万人の患者がおり、そのコストは米国だけでも1兆ドルにも達すると言われている。発症にはアミロイドの蓄積が関与すると考えられているが、蓄積の程度だけでは発症を予測できない。脳の活動状態など、病理学的変化以外の脳の機能的レジリエンスが影響していると考えられる。本研究では、認知症患者の脳波・脳磁図を用いて脳の機能的活動状態を高い時間・空間解像度で捉え、これを波形データに特化した新しいDeep Neural Network (DNN)により診断する人工知能の開発を目的とした。
研究方法
脳磁図ビッグデータを用いたDNNの学習と認知症を含む多疾患の識別
大阪大学脳神経外科で保有する多疾患の脳磁図データに対して、東京大学原田研究室で開発した脳波用のDNN(EnvNet)を適用し学習を行った。てんかん患者、パーキンソン病患者、脊髄損傷患者、認知症患者、健常者の計約320名の安静時脳磁図を入力として、各疾患を予測した。また、同じデータから、各周波数帯域のパワーを求め、それらを入力としてsupport vector machine (SVM)によって弁別を行った。
脳波によるDNNの学習と認知症の種類の識別
認知症及び健常高齢者の計約200名の安静時脳波を入力としてDNNによる識別を行った。
結果と考察
脳磁図ビッグデータを用いたDNNの学習と認知症を含む多疾患の識別
安静時脳磁図信号を高い精度で識別することに成功した。また、同じデータに対してパワーを求め、これを入力としてSVMで弁別した場合と比較して、DNNは有意に高い精度であった。これより、DNNを用いることで、これまでのパワーを中心とした特徴量では捉えられなかった疾患の特徴的脳信号を捉えていることが示唆された。
脳波によるDNNの学習と認知症の種類の識別
 脳磁図と同様のネットワークを用いて、認知症及び健常高齢者の安静時脳波を弁別したところ、非常に高い精度で識別可能であった。開発した脳波診断プログラムを、一般の病院環境で利用できるようなアプリを開発した。これに脳波を入力し、検討の対象を指定するだけで、認知症の可能性が予測される。今後、多施設共同で前向きに有効性を検証していく必要がある。

安静時の脳波・脳磁図信号に対して我々が提案するDNNを用いて弁別を行ったところ、高い精度で認知症を判定することができた。特に信号のパワーを用いてSVMで弁別を行った場合と比較して有意に高い精度を得られたことから、パワー以外の新しい特徴をDNNが捉えている可能性が示唆された。
結論
我々が作成した脳波・脳磁図用のDNNを用いて、認知症を含む多疾患の安静時脳信号を弁別できることが示された。特に安静時脳波を用いて高い精度で認知症を識別できることが示され、安価で精度の高い認知症診断に貢献することが示唆された。今後、さらに認知症コホートを充実させることで、精度の改善が見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201803021B
報告書区分
総合
研究課題名
脳波・脳磁図を用いたAI解析による認知症の診断・重症度評価に関する実証研究
課題番号
H29-ICT-一般-011
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
柳澤 琢史(大阪大学 高等共創研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 貴島 晴彦(大阪大学 大学院医学系研究科脳神経外科)
  • 原田 達也(東京大学 大学院情報理工学系研究科)
  • 数井 裕光(高知大学 教育研究部医療学系)
  • 吉山 顕次 (大阪大学 大学院医学系研究科精神医学)
  • 吉村 匡史(関西医科大学 医学部精神神経科学)
  • 西田 圭一郎(関西医科大学 医学部精神神経科学)
  • 畑 真弘(大阪大学 大学院医学系研究科精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関の変更について。 柳澤琢史 平成29年11月~平成30年3月 大阪大学 国際医工情報センター 臨床神経医工学 平成30年 4月~       大阪大学 高等共創研究院 数井裕光 平成29年11月~12月 大阪大学 大学院医学系研究科精神科 講師      平成30年 1月~ 3月 大阪大学 キャンパスライフ健康支援センター 講師      平成30年 4月~   高知大学 教育研究部医療学系 教授  

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症は世界的に増加傾向であり、特に少子高齢化が進む日本では社会的な負担となり重要な問題である。アルツハイマー型認知症は世界に5000万人の患者がおり、そのコストは米国だけでも1兆ドルにも達すると言われている。発症にはアミロイドの蓄積が関与すると考えられているが、蓄積の程度だけでは発症を予測できない。脳の活動状態など、病理学的変化以外の脳の機能的レジリエンスが影響していると考えられる。本研究では、認知症患者の脳波・脳磁図を用いて脳の機能的活動状態を高い時間・空間解像度で捉え、これを波形データに特化した新しいDeep Neural Network (DNN)により診断する人工知能の開発を目的とした。
研究方法
脳磁図ビッグデータを用いたDNNの学習と認知症を含む多疾患の識別
大阪大学脳神経外科で保有する多疾患の脳磁図データに対して、東京大学原田研究室で開発した脳波用のDNN(EnvNet)を適用し学習を行った。てんかん患者、パーキンソン病患者、脊髄損傷患者、認知症患者、健常者の計約320名の安静時脳磁図を入力として、各疾患を予測した。
また、同じデータから、各周波数帯域のパワーを求め、それらを入力としてsupport vector machine (SVM)によって弁別を行った。
脳波によるDNNの学習と認知症の種類の識別
認知症及び健常高齢者の計約200名の安静時脳波を入力としてDNNによる識別を行った。
結果と考察
脳磁図ビッグデータを用いたDNNの学習と認知症を含む多疾患の識別
安静時脳磁図信号を高い精度で識別できることを明らかにした。特に、同じデータに対してパワーを求め、これを入力としてSVMで弁別した場合と比較して、DNNは有意に高い精度であった。これより、DNNを用いることで、これまでのパワーを中心とした特徴量では捉えられなかった疾患の特徴的脳信号を捉えていることが示唆された。
脳波によるDNNの学習と認知症の種類の識別
 脳磁図と同様のネットワークを用いて、認知症及び健常高齢者の安静時脳波を識別したところ、非常に高い精度で識別が可能であった。また、開発した脳波診断プログラムを、一般の病院環境で利用できるようなアプリを開発した。これに脳波を入力し、検討の対象を指定するだけで、認知症の可能性が予測される。今後、多施設共同で前向きに有効性を検証していく必要がある。

安静時の脳波・脳磁図信号に対して我々が提案するDNNを用いて弁別を行ったところ、高い精度で認知症を判定することができた。特に信号のパワーを用いてSVMで弁別を行った場合と比較して有意に高い精度を得られたことから、パワー以外の新しい特徴をDNNが捉えている可能性が示唆された。
結論
我々が作成した脳波・脳磁図用のDNNを用いて、認知症を含む多疾患の安静時脳信号を弁別できることが示された。特に安静時脳波を用いて高い精度で認知症を識別できることが示され、安価で精度の高い認知症診断に貢献することが示唆された。今後、さらに認知症コホートを充実させることで、精度の改善が見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
2023-08-02

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201803021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、脳波・脳磁図を用いたAI解析により認知症の診断が可能であることを明らかにした。これまで、脳波・脳磁図による認知症の特徴づけを行う研究はあったが、これを診断に用いるためには精度が十分ではなかった。我々が開発したAI技術は高い精度で認知症の診断を可能にする点で特徴的である。また、脳波・脳磁図に認知症の特徴があることを示した点で、学術的に価値があると考えられる。
臨床的観点からの成果
認知症は世界的に増加傾向であるが、診断・治療技術はまだ確立していない。頻度が高い疾患であるために、より簡便で感度の高い診断技術が必要とされている。本研究で示された脳波・脳磁図による診断技術は、簡便で安価な診断技術として臨床的観点からも重要な成果である。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Jo Aoe, Ryohei Fukuma, Takufumi Yanagisawa
Automatic diagnosis of neurological diseases using MEG signals with a deep neural network
Scientific Reports , 9 (1) , 5057-  (2019)
DOI:10.1038/s41598-019-41500-x

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201803021Z