文献情報
文献番号
201801011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療費適正化に向けた生活保護受給者の医薬品処方および生活習慣病の実態調査:大規模レセプト分析
課題番号
H29-政策-指定-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 由光(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 中山 健夫(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
- 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
- 加藤 源太(国立大学法人京都大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
8,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療扶助をはじめとする生活保護制度の適正化を目指し、健康管理支援の推進、後発医薬品の使用促進、受診・処方の適正化の観点より、受給者の健康状態および受診・処方や医療費の実態を明らかにすることを目的としている。健康日本21(第二次)でも、高血圧の改善、脂質異常症の減少、糖尿病合併症の減少・糖尿病有病者の増加抑制等が目標設定されている。生活保護受給者の健康管理支援等に関する検討会においても、健診結果からは糖尿病等の生活習慣病の該当者や予備群も被保険者より多いことが指摘されている。そこで、本研究では、特に、代表的な生活習慣病でもある糖尿病、高血圧症、脂質異常症の3疾患に着目をする。医療扶助実態調査およびレセプト情報・特定健診等情報(ナショナルデータベース、以下NDB)を活用し、3疾患(糖尿病、高血圧症、脂質異常症)の有病状況の把握、受給者の子どもの健康状態の把握、後発医薬品使用、重複処方の実態把握を行う。地域差や医療費の検討も行い、生活保護制度の適正化のための基礎となるデータを整備することを目指す。
研究方法
平成27年、28年、29年医療扶助実態調査に係る調査票情報として使用された同年6月審査分の医療扶助レセプトを、統計法第33条による調査票情報の提供について申出を行い取得した(平成27年、28年は、平成29年度事業の継続。平成29年は、平成29年度事業にて新規申出)。同年6月審査分のうち、5月診療分の入院分及び入院外分、調剤分のレセプトデータを用いて、経時的に二次データ分析を行った。傷病名、医薬品の分類を行い、有病割合、医療費、医薬品費、後発医薬品シェア(数量ベース)、重複処方の実態を明らかにした。NDBについては、サンプリングデータセット(平成27年4月分)より集計された公的保険医療加入者の3疾患の有病割合について、生活保護受給者の比較群として年齢別に検討を行った。
結果と考察
糖尿病:7.7%、7.9%、8.3%(平成27年、28年、29年)、高血圧症:20.2%、20.5%、21.4%、脂質異常症:11.2%、11.4%、11.9%、3疾患いずれか:25.1%、25.4%、26.5%、3疾患すべて:2.7%、2.8%、3.0%であった。県別有病割合(年齢調整)では、割合が高い県と低い県で約3倍の差があった。3疾患の有病割合は、平成27年医療扶助実態調査と平成27年4月分NDBサンプリングデータセットの解析結果を比較し、医療扶助受給者の若年・中年層において医療保険加入者に比べて高いことが示された。平成27年において、医療費の22.7~22.9%(246.2億円~256.4億円)を医薬品費が占めていた。糖尿病患者では医薬品費51.0~55.4億円のうち、糖尿病治療薬12.8~14.0億円(一人当たり平均7,535~7,938円/月)であった。高血圧症患者では、医薬品費104.0~112.3億円のうち高血圧症治療薬15.1~17.8億円(一人当たり平均3,386~4,061円/月)、脂質異常症患者では、医薬品費60.3~65.7億)のうち脂質異常症治療薬6.5~7.2億円(一人当たり平均2,682~2,984円/月)であった。3疾患の治療薬の後発医薬品シェア(数量ベース)は、糖尿病治療薬62.6%、61.5%、68.2%(平成27年、28年、29年)、高血圧症治療薬61.8%、69.8%、75.4%、脂質異常症治療薬64.0%、70.4%、74.2%であった。重複処方については、3年すべてにおいて、処方が多い医薬品ほど重複処方も多い傾向がみられた。一人の患者が利用している薬局数は、2施設以上が15.6%、15.5%、15.8%(平成27年、28年、29年)であった。
結論
健康管理支援の推進:平成27年から29年にかけて、3疾患の有病割合はいずれにおいても増加していた。公的医療保険加入者に比較し、40歳代から60歳代にかけ、有病割合が高い傾向がみられた。健康管理支援において、若年・中年層への3疾患の重症化予防、外来診療における適切な受診・対応が重要である。
後発医薬品の使用促進:後発医薬品の使用割合(数量シェア)は、糖尿病治療薬62.6%、61.5%、68.2%(平成27年、28年、29年)、高血圧症治療薬61.8%、69.8%、75.4%、脂質異常症治療薬64.0%、70.4%、74.2%であった。後発医薬品の使用が促進されている傾向がみられたが、生活保護法の改正による「生活保護における後発医薬品の使用原則化」をうけ、今後も推移を把握していくことが必要である。
受診・処方の適正化:処方が多い医薬品ほど重複処方も多い傾向がみられた。生活習慣病治療薬においても同様の傾向であり、生活習慣病において主治医への受診促進が必要であると考えられる。
後発医薬品の使用促進:後発医薬品の使用割合(数量シェア)は、糖尿病治療薬62.6%、61.5%、68.2%(平成27年、28年、29年)、高血圧症治療薬61.8%、69.8%、75.4%、脂質異常症治療薬64.0%、70.4%、74.2%であった。後発医薬品の使用が促進されている傾向がみられたが、生活保護法の改正による「生活保護における後発医薬品の使用原則化」をうけ、今後も推移を把握していくことが必要である。
受診・処方の適正化:処方が多い医薬品ほど重複処方も多い傾向がみられた。生活習慣病治療薬においても同様の傾向であり、生活習慣病において主治医への受診促進が必要であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2019-11-26
更新日
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