宮城県における東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査

文献情報

文献番号
201726020A
報告書区分
総括
研究課題名
宮城県における東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査
課題番号
H25-健危-指定(復興)-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 松岡 洋夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 八重樫 伸生(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 永富 良一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 井樋 栄二(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災から7年余が経過し、被災者の生活環境も仮設住宅から恒久住宅へと変化する一方、被災生活の長期化による健康影響が重要な課題となっている。本研究の目的は以下の2点である。第1に、長期にわたり被災者の健康状態や生活環境の推移を把握し、被災者の健康管理のために必要な対応を図ること。第2に、被災者の生活環境や健康状態と予後を追跡して、震災後の生活環境などの変化が被災者の健康状態に及ぼす影響を検討すること。これにより、大規模災害が発生した際の被災者支援のあり方を検討する。
研究方法
石巻市沿岸部、仙台市若林区および七ヶ浜町で被災した者を対象に、被災者健康調査(アンケート調査)を実施した。18歳以上の者を対象に、健康状態、食事、睡眠、心理的苦痛、震災の記憶、職業・収入、周囲への信頼感などを調査した。18歳未満の者には、医療の状況、睡眠、保育・学校や友人に関する状況、こころと行動の変化、保護者のストレスなどを調査した。65歳以上には基本チェックリストと生活不活発病チェックリストを追加した。調査参加者の同意に基づいて、予後(生存死亡、医療受療状況と介護保険認定など)と特定健診成績に関する情報を入手した。これらのデータをもとに、心身の健康状態や医療費、健診成績、介護保険認定率の推移を検討するとともに、その関連要因を解析した。
 被災者健康調査の結果をもとに、保健医療上の支援として、被災者健康調査の結果説明や健康講話とともに栄養指導・運動指導を実施し、地域住民の健康づくりに向けた支援を実施した。こころや行動の変化に注意が必要な児童については、自治体に情報を提供し、支援につなげた。高齢者では、基本チェックリストに基づく要介護発生リスクを評価し、自治体に情報を提供した。
 本調査研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守しており、東北大学大学院医学系研究科倫理審査委員会の承認を受けている。
結果と考察
震災7年目の被災地域住民の健康状態や生活環境の推移などを把握した。これまでに、石巻市(雄勝・牡鹿・網地島)で4,154人、仙台市若林区(プレハブ仮設住宅に入居した者)で994人、七ヶ浜町で2,334人、合計7,482人の参加が得られた。調査結果の概要を述べる。第1に、睡眠障害が疑われる者、心理的苦痛が高い者、震災の記憶のある者の割合は、時間経過にともない、少しずつ改善している。しかし、前2者の頻度は、全国平均と比べてまだ高かった。地域や個人の復興の状況によって、メンタルヘルスの推移(改善)に違いがみられた。第2に、被災者における就業割合は、徐々に増加し、回復の傾向を示しているが、経済状況(暮らし向き)は、家計を担う働き盛り世代で「大変苦しい」、「苦しい」と答えた者の割合が高かった。第3に、地域のつながりについて、「みなし仮設」と「賃貸」の居住者で「地域のつながりが弱い」と答えた者の割合が高かった。また、「新居」、「復興公営住宅」、「防災集団移転団地」など、新しい環境へ移動した居住者でも「地域のつながりが弱い」割合が高かった。第4に、高齢者の介護保険(要支援・要介護)認定率は、時間の経過とともに増加した。「震災前と同じ」ところに居住している高齢者と比較して、「賃貸・みなし仮設」に転居した高齢者では、新規要介護認定リスクが有意に増加していた。第5に、被災地域住民の腰痛や膝痛の有訴者率は、一般集団と比べて高く、震災直後よりも増加した。また、睡眠障害を疑う者(アテネ不眠尺度;6点以上)で膝痛の新規発生が増加していた。第6に、自宅の被害状況は、被災後のBMI、収縮期血圧、γ-GTP、中性脂肪の平均値および特定保健指導の該当割合の推移と関連があった。第7に、被災後に被災地域を離れた者(地区外転居者)では、睡眠障害となるリスクが高いことが示され、メンタルヘルスへの影響が懸念される結果であった。第8に、震災から7年目の調査では、未成年の健康状態は概ね良好であった。保護者のストレスには地域差が見られ、震災後の地域および個人の復興状況が影響している可能性が考えられた。高校生のメンタルヘルスは、成人調査の結果と比較して良好であった。
結論
本年度も被災者健康調査(アンケート調査)により、生活環境などの変化による健康影響を調査した。震災から7年目にあたり、仮設住宅からの転居(新居・復興公営住宅・防災集団移転団地など)も進むなかで、新しい環境へ移動した居住者での地域のつながりの弱さが懸念される。被災後に被災地域を離れた者(地区外転居者)では、睡眠障害(アテネ不眠尺度が6点以上)となるリスクが高かった。

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201726020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
42,900,000円
(2)補助金確定額
42,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,879,334円
人件費・謝金 8,125,089円
旅費 598,770円
その他 16,396,807円
間接経費 9,900,000円
合計 42,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-10-10
更新日
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