中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究

文献情報

文献番号
201726017A
報告書区分
総括
研究課題名
中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 元毅(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鍵 直樹(東京工業大学 )
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部)
  • 長谷川 兼一(秋田県立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 建築物衛生法が適用される特定建築物には、環境衛生管理規定の遵守、管理実態の報告、管理技術者の選任などが課されるが、該当しない中小規模建築物には衛生管理に努める努力義務しかなく、その管理実態は不明確である。近年の技術・社会・経済等の環境変化の中、十分な技術的支援を受けられない可能性も懸念されている中小建築を対象に、その環境管理実態とその影響を調査研究により明らかにし、適切な衛生管理方策の検討に資する。
研究方法
3年計画の初年度として、①建物規模・数等の統計資料収集と分析(平成25年・法人土地建物基本調査、国土交通省)、②空気環境等の衛生実態情報収集(空気環境詳細調査の試行、健康影響のアンケート調査、水質管理実態の検討等)、③既往調査資料の再評価等(面積要件の変遷と課題の検討、ペストコントロール実態調査資料の再評価) を行った。
結果と考察
①どの用途でも床面積2000㎡未満の割合が高く、全体の50~90%を占める。事務所では特定建築物の割合11.7%(12,352件)に対し、床面積2,000~3,000 ㎡未満は5.7%(6,054件)と特定建築物の約半数であった。特定建築物に該当する建物の用途別の割合は、事務所48%、店舗36%となった。
②試行調査では室内の温湿度、CO2濃度、PM2.5濃度、エンドトキシン濃度はほぼ適切だが、室内の浮遊細菌・浮遊真菌濃度に高い事例があった。パーティクル濃度等のS/O比などから、空調機内からの汚染発生が示唆される事例も見られた。気中の化学物質濃度も概ね問題なかったが、何れの物質も外気より室内濃度が高く、室内由来の発生が多いものと考えられる、環境要素と健康影響の関連を調べたアンケート調査では、温度・湿度、臭気に関する苦情頻度が高かった。水質管理に関しては小規模貯水槽水道の検査受検率から衛生認識の不足が指摘された。
③建築物衛生法の面積要件が、社会・経済的背景に配慮して慎重に定められてきた経緯を整理した。ペストコントロールに関しては既往調査の再評価から、中小建築物では、ねずみ・昆虫の防除が義務としてではなく必要性として強く認識されていること、食品取扱施設の存在、面積規模の小ささ、老朽化の程度などが衛生管理ニーズとその評価に係わっていることなどが明らかとなった。
結論
 建築物衛生法適用対象外である中小規模の建築物においては、監視や報告の義務がないことから衛生管理実態の不鮮明さが、適切な対処法検討の障害となっている。近年の地球環境保全・省エネに係る変化につれて、衛生性や健康性に関する意識が高まり、衛生管理を取り巻く環境変化が進行しているが、建築物衛生法が適用されないことから、衛生環境管理が十分な技術的支援を得られず、衛生管理が不十分な状況が懸念される中規模建築物の数が特定建築物のおよそ半数に及ぶことが明らかにされた。
 また、空調分野における新技術の普及や建物の外皮性能の多様化などから、温度・湿度・気流の他に在室者の温熱感に影響する要素を含めた衛生管理の必要性がうかがわれ、温熱総合指標などの活用も検討を要する。一方、室内浮遊粉じん濃度は低く保たれて、近年管理基準を逸脱する建物は少なくなったが、PM2.5やナノ粒子など新たに考慮する必要がある環境要素の登場も確認された。
 水質管理については、中規模建築における衛生管理意識・活動の不十分さが、ペストコントロールに関しては現状実態の傾向と課題が明らかにされ、次年度からの研究方針に関する示唆を得た。
 本研究では、現行の建築物衛生法が適用されない中規模建築物における室内環境及び空気衛生環境を中心に、給排水の管理、清掃、ねずみ等の防除など、建築物衛生法の環境衛生管理基準項目に係る要素の実態と建築物利用者の健康状況調査を継続し、特定建築物の適用範囲拡大も含めた適切な衛生管理方策の検討に必要な科学的根拠を明らかにしていく。

公開日・更新日

公開日
2018-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201726017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,400,000円
(2)補助金確定額
6,326,000円
差引額 [(1)-(2)]
74,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,385,630円
人件費・謝金 501,598円
旅費 1,844,325円
その他 594,545円
間接経費 0円
合計 6,326,098円

備考

備考
74,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-