文献情報
文献番号
201726014A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模水供給システムの安定性及び安全性確保に関する統合的研究
課題番号
H29-健危-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院工学研究科)
- 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 小熊 久美子(東京大学先端科学技術研究センター)
- 増田 貴則(鳥取大学大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
全国数千の地域において、水道管路等で構成される水道(上水道、簡易水道)及び飲料水供給施設等(以下、水供給システム)を維持することが困難となりつつある。水供給維持困難地域を含む地域において衛生的な水を持続的に供給可能とするための具体的方策の検討を実施する。
研究方法
現地調査を実施し、現況、施設上の課題、管理上の課題、水質上の課題、水質検査上の課題、配水上の課題、財政上の課題、統計収集上の課題、制度上の課題等について検討を行った。また、管路の維持管理、種々の消毒剤の特性、消毒副生成物、小型紫外線装置による消毒、住民との連携による維持管理に関する基礎的検討を行った。
結果と考察
現況においては、法令等遵守状況、水源の状況、規模等、施設、管理、水質では、高濁対策、残塩注入、残塩保持、高濁、大腸菌の検出等、水質検査では、水質検査の費用、その他配水、財政、統計収集、制度上の課題があることがわかった。
数箇所の飲料水供給施設について原水・浄水・給水の水質調査を行うとともに、配水管路データ、各戸居住人数など解析に必要な情報を収集した。まず、3つの飲料水供給施設において、管網計算を行い配水管内流速分布を得た。ついで、別途実施している室内実験結果や、大阪地域・神戸地域での実地調査結果を活用して、配水管内に堆積する重量とその分布を推定した。この成果によって、第一段階 浄水処理、第二段階 配水管網の水理条件、第三段階 洗管の観点から、堆積量の重量分布の変化を検討することが可能となった。
塩素の注入、試薬の管理に課題があったことから、次亜塩素酸ナトリウム溶液の代替として、顆粒状の塩素化シアヌル酸系消毒剤の適用を想定し、水供給システムへの適用可能性について、大腸菌および耐塩素性従属栄養細菌の不活化能力ならびに残留特性等の面から評価したところ、消毒剤の残留濃度は、消毒対象となる細菌の種別により異なり、いずれも次亜と同程度以下の残塩保持濃度となる可能性が示された。従属栄養細菌は、直接の健康リスクとの関連性は明確でないものの、水の衛生状態を示す目安として水質管理目標値が設定されており、小規模水供給システムへの紫外線消毒適用において従属栄養細菌の制御が課題であると考えられた。
遊離残留塩素濃度の減少量が等しければトリハロメタンやハロ酢酸の生成量は各種消毒剤毎にほぼ同等であった。水電解次亜発生装置においては、トリハロメタンやハロ酢酸は生成していなかったが、電解を繰り返す場合の塩素酸濃度の上昇には注意が必要である。
紫外線消毒装置について、多種の微生物を対象に消毒性能を調べた。また、実施設への紫外線装置の導入可能性を探るため、施設見学と実務者ヒアリングを実施した。実験では、複数の微生物種を対象とし、波長の異なる紫外線光源を用いて紫外線量に対する不活化応答を調べた。その結果、菌種の違いによる紫外線の波長感受性が異なった。従属栄養細菌の紫外線感受性が低く、従属栄養細菌のうちでも特に紫外線耐性の高い種が選択的に残存しうることを示した。施設見学とヒアリングの結果から、現状では小規模施設に適した消毒方法は十分に検討されておらず、特に、消毒剤の補充や当番制での維持管理が住民の負担になっている実情が伺えた。消毒剤のにおいに対する抵抗感から消毒を実施しない小規模施設も多く、紫外線消毒であれば利用者の受容性が高まると期待された。
飲料水供給施設相当規模および戸別井戸相当規模の水供給システムを利用している集落を対象に、ヒアリングおよびアンケート調査を実施したところ、表流水を水源としているある集落では、濁水やろ過施設閉塞断水への対応が必要であり、頻繁な点検清掃を行っていることがわかった。
数箇所の飲料水供給施設について原水・浄水・給水の水質調査を行うとともに、配水管路データ、各戸居住人数など解析に必要な情報を収集した。まず、3つの飲料水供給施設において、管網計算を行い配水管内流速分布を得た。ついで、別途実施している室内実験結果や、大阪地域・神戸地域での実地調査結果を活用して、配水管内に堆積する重量とその分布を推定した。この成果によって、第一段階 浄水処理、第二段階 配水管網の水理条件、第三段階 洗管の観点から、堆積量の重量分布の変化を検討することが可能となった。
塩素の注入、試薬の管理に課題があったことから、次亜塩素酸ナトリウム溶液の代替として、顆粒状の塩素化シアヌル酸系消毒剤の適用を想定し、水供給システムへの適用可能性について、大腸菌および耐塩素性従属栄養細菌の不活化能力ならびに残留特性等の面から評価したところ、消毒剤の残留濃度は、消毒対象となる細菌の種別により異なり、いずれも次亜と同程度以下の残塩保持濃度となる可能性が示された。従属栄養細菌は、直接の健康リスクとの関連性は明確でないものの、水の衛生状態を示す目安として水質管理目標値が設定されており、小規模水供給システムへの紫外線消毒適用において従属栄養細菌の制御が課題であると考えられた。
遊離残留塩素濃度の減少量が等しければトリハロメタンやハロ酢酸の生成量は各種消毒剤毎にほぼ同等であった。水電解次亜発生装置においては、トリハロメタンやハロ酢酸は生成していなかったが、電解を繰り返す場合の塩素酸濃度の上昇には注意が必要である。
紫外線消毒装置について、多種の微生物を対象に消毒性能を調べた。また、実施設への紫外線装置の導入可能性を探るため、施設見学と実務者ヒアリングを実施した。実験では、複数の微生物種を対象とし、波長の異なる紫外線光源を用いて紫外線量に対する不活化応答を調べた。その結果、菌種の違いによる紫外線の波長感受性が異なった。従属栄養細菌の紫外線感受性が低く、従属栄養細菌のうちでも特に紫外線耐性の高い種が選択的に残存しうることを示した。施設見学とヒアリングの結果から、現状では小規模施設に適した消毒方法は十分に検討されておらず、特に、消毒剤の補充や当番制での維持管理が住民の負担になっている実情が伺えた。消毒剤のにおいに対する抵抗感から消毒を実施しない小規模施設も多く、紫外線消毒であれば利用者の受容性が高まると期待された。
飲料水供給施設相当規模および戸別井戸相当規模の水供給システムを利用している集落を対象に、ヒアリングおよびアンケート調査を実施したところ、表流水を水源としているある集落では、濁水やろ過施設閉塞断水への対応が必要であり、頻繁な点検清掃を行っていることがわかった。
結論
小規模水供給システムについては、位置づけ、施設、管理技術、水質、配水、財政上等の課題があることが分かった。実際の水供給システムへの適用に際しては、各消毒剤の不活化能力ならびに残留特性の相違、現場の特性に応じて保存性、徐溶性、速溶性、使用性等の観点から消毒剤の検討を行うことが重要である。小規模な紫外線照射装置は安全性の確保と現場の利用者の受容性に適合する可能性が高いと考えられた。水供給システムについては、多様な位置づけの施設があり、住民ニーズも過去の経緯、現在の状況や戸別井戸の利用可能性により様々であった。施設規模に見合った消毒技術やその持続可能な維持管理方式の検討が重要と考えられた。地域の実情に応じた検討が重要である。
公開日・更新日
公開日
2018-07-11
更新日
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