危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究

文献情報

文献番号
201724019A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究
課題番号
H29-医薬-指定-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
井村 伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年夏以降店舗での販売拠点を失った危険ドラッグは販売手段がインターネット利用販売等に移り、化合物の出現、あるいは大麻の使用増加等の現象が認められている。従ってこれら物質に対する新たな対策が求められるのは当然である。特に大麻は我が国においては覚醒剤に次いで濫用されている薬物であり、犯罪検挙状況から若年層での濫用割合が多くなる傾向が見て取れる。そこで本研究事業においては28年度の特別研究の成果を引き継ぎ、大麻の薬理学的、臨床薬理学的知見及び大麻使用の規制状況の推移に関する国内外の最新の情報を収集し分析して、その結果に基づき国民に大麻の有害性に関する正確な知識を普及するための資料を提供する。
研究方法
大麻に関する規制の緩和が進行中の米国、カナダ、EU等の制度設計の状況や医療用大麻、産業用大麻の最新の使用状況を精査・分析するとともに、国内での普及・啓発をより効果的に行うための基礎となる「地域に根差した薬物濫用防止意識の醸成」を目指した一般市民対象の濫用防止教育手法の探索及び地域包括ケア単位を利用した薬物濫用防止活動の可能性について検討する。
結果と考察
 カンナビノイド含量は葉、花穂、苞葉で高く、葉は位置によって含量が異なり、上になるほどTHC含量が高いこと、THCとCBDは成熟した葉より若い葉の方に多く含まれていることが確かめられた。また、産業用大麻の市場の拡大は主に健康食品の需要と食品サプリメントとしての大麻成分の需要の増加によるものであり、このような状況に対応するためには多くの規制と法律が必要であると考えられた。北米大陸における大麻規制の現状について、カナダや米国における医療大麻、合成カンナビノイド、カンナビジオール(CBD)、嗜好大麻等の規制や取扱いを把握した。また、大麻を巡る税収などを考慮すると社会・経済的な事情が大麻合法化の流れを加速させている可能性も考えられた、自動車事故などの状況などの増加が社会問題になっていることなども把握できた。大麻関連成分の生理活性については、CBDがTHCの精神作用を抑制するように調整する可能性があること、欧米諸国で高濃度のTHCを含有する大麻の流通により、その使用で大麻の有害作用発現が増強されるおそれがあること、Sativexの多発性硬化症に対する臨床効果、CBDの医療上の効果について、総合的な検討、さらなる検討が必要であることも考えられた。また、定期的な大麻の乱用者においては、小脳や線条体容積が大きく、逆に海馬、前頭前皮質及び扁桃体容積が減少していた。海馬はCB1受容体の密度が最も高い領域の一つであり、THCが神経細胞に蓄積し、慢性使用により神経毒性を発現すると考えられた。また、THCは精神的・生理的有害作用を誘発し、CBDはそれらを抑制する効果や難治性てんかんの痙攣に対する有益な効果が期待されているが、医療用の効果を発揮するに足る十分量のCBDを含み、かつ、THCが臨床上有害な作用を示さない低用量であることの確認が難しいので、これが大麻の臨床利用を困難にしており、他の医薬品による通常の治療法に先んじて大麻を使用するには有効性・安全性についてのより質の高い証拠が依然として求められている。薬物濫用防止のより効果的な普及啓発については、現存の教育体制を支援するための「地域住民の意識変容による薬物濫用防止意識を“常識”に高める可能性を大学や自治体等が行う「地域で健やかに暮らす知恵」を研修主題とする集合研修を利用して実証を試みたが、行政単独では自己啓発や広報にとどまりやすいが、大学や関連団体あるいはコミュニティーの協力があれば不可能ではないことが期待されるなどの結果を得た。
結論
海外の大麻規制状況の調査結果から、大麻の医療目的の使用(「医療用大麻」の使用)及び「産業用大麻」の使用については規制の緩和・合法化の流れがあることは否めないもの、これまでの大麻の生理活性についての国外での臨床医学的検討結果は直ちに我が国で「医療用大麻」の規制を緩和するためのevidenceとしては十分とは考えにくく、更なるより規模の大きい精細な臨床疫学的研究が必要であることが海外調査や文献調査によっても指摘されている。欧米各国の国民医療費の節減、関連産業の収益増、国家・自治体の大幅な税収増加などの社会経済的状況が大麻規制緩和の要因になっているように見受けられる。このような視点からの調査、解析が今後求められると考えている。薬物濫用防止のより効果的な普及啓発にいては、薬物濫用防止の啓発・普及活動にあたっては地域の特性をきめ細かく分析・認識した上での企画・実施が必要であること、地域の保健衛生に主体的に寄与する意欲を持つ人材確保と合理的な業務体系構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-04-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201724019Z